「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

個人間カーシェアの貸し出しユーザーを増やしたい、DeNAと保険会社が新会社モビリティサービス

ディー・エヌ・エー(DeNA)とSOMPOホールディングスは2019年2月28日、東京都内で会見を開き、個人間カーシェアリングとマイカーリースに関する新会社を設立すると発表した。

» 2019年03月01日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
写真左からDeNAの中島宏氏、DeNA 代表取締役会長の南場智子氏、SOMPOホールディングス 国内損害保険事業オーナー 取締役で損害保険ジャパン日本興亜代表取締役社長の西澤敬二氏、損害保険ジャパン日本コア 執行役員の中村愼一氏(クリックして拡大)

 ディー・エヌ・エー(DeNA)とSOMPOホールディングスは2019年2月28日、東京都内で会見を開き、個人間カーシェアリングとマイカーリースに関する新会社を設立すると発表した。社名は、個人間カーシェアリングの新会社が「DeNA SOMPO Mobility」、マイカーリースの新会社が「DeNA SOMPO Carlife」となり、2社とも社長はDeNA 執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏が務める。

 新会社は個人間カーシェアリングへの登録を前提としたマイカーリース商品を展開する。これにより、個人間カーシェアリングでクルマを貸し出す側のユーザーを増やす。ユーザーは、支払いが定額のリースと、個人間カーシェアリングでクルマを貸し出すことによる利用料の収入の組み合わせにより、少ない費用負担でマイカーを保有できる。

 また、個人間カーシェアリングは車両盗難などが懸念されるが、SOMPOホールディングスがサービスに関与することによりユーザーの不安を軽減し、クルマを貸し出すユーザーを増やす。カギの受け渡しを無人で行えるようにするデバイスも展開し、利便性を向上させていく。

 DeNAは同社の個人間カーシェアリング「Anyca(エニカ)」を吸収分割して、DeNA SOMPO Mobilityに承継させる。DeNA SOMPO Mobilityは、当初はDeNAの完全子会社だが、2019年4月にSOMPOホールディングスに対する第三者割当増資を実施し、出資比率はDeNAが51%、SOMPOホールディングスが49%となる予定だ。マイカーリースの新会社は出資比率などを開示していない。

0円でマイカー?

新会社の社長を務めるDeNAの中島氏(クリックして拡大)

 DeNA SOMPO Mobilityでは、個人間カーシェアリングをより一般化することに取り組む。具体的には、ユーザーが新会社とともにカーシェアリングの共同運営者となる「0円マイカー」モデルを展開する。

 新会社は共同運営者のユーザーに個人間カーシェアリング用のクルマを貸し出すとともに、維持費相当の費用を支払う。共同運営者のユーザーは駐車スペースを確保し、個人間カーシェアリングでのクルマの貸し出しに関する役務を担うことで、限りなく少ない費用負担でマイカーを持つことができるという。新会社から共同運営者となるユーザーに支払う費用の算定ロジックは今後具体的に詰める。車種は、新会社で決めた中から選ぶ形になりそうだ。

 これまで、DeNAが展開してきたエニカでは、クルマを貸し出す利用料の9割をクルマのオーナーが、1割をDeNA側で獲得してきた。DeNAの中島氏は「現在、エニカは赤字だ。クルマを貸し出すユーザーと借りる利用者が増えれば収益は改善できる。これまでエニカを運営してきて、クルマを貸し出すユーザーを増やすのは難しいが、借りる利用者はハードルがないと見えてきた。今後は、クルマを貸し出すユーザーを増やす施策を中心にやっていく」と説明した。0円マイカーでは、貸し出しによる利用料のほとんどを新会社が手に入れる。これにより、収益性を高める。

 SOMPOホールディングスも、個人間カーシェアリングでクルマを貸し出すユーザーの拡大に取り組む。これまでのDeNAのエニカ利用状況のデータを基に、クルマを保有するオーナーに人気の高い地域や車種を絞り込んで、個人間カーシェアリングで得られる利用料を提示する。

 0円マイカーでは、新会社からは自動車の使用権とクルマを借りるユーザーを集めるマーケティング、クルマの貸し出しの利便性を高めるシステムやデバイスを提供する。共同運営者となるユーザーは、駐車場の確保とクルマの貸し出しに関わる役務を担い、一定回数以内は無料で使うこともできる。貸し出し向けのスマートデバイスは2019年度に導入する。

個人間カーシェアでクルマを貸し出すユーザーを拡大したいDeNA。スマートフォンの画面は「エニカ」を表示している(クリックして拡大)

 個人間カーシェアリングの新会社では、専用の保険の提供も検討する。これまで、個人間カーシェアリングではクルマを借りるユーザーは1日限定の自動車保険に加入する必要があった。他車運転特約の利用や、シェアリングで貸し出し中にオーナーの自動車保険を割り引くなど合理的な保険設計を進める。

 マイカーリースの新会社は、2019年6月から個人間カーシェアリングへの登録が前提のマイカーリースを展開する。例えば、毎月5万8000円程度発生するリース料のうち、個人間カーシェアリングで3万9000円の貸し出し料を受け取ることで、実質的なリース料を1万9000円に下げる。このマイカーリース商品では、SOMPOホールディングスの保険代理店が事故、故障、メンテナンスなどをサポートする。日本のマイカーリースの市場規模は2017年度末に25万6000台で、2015年度末から1.6倍に成長した。2022年度には93万6000台まで拡大する見通し。

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