DMS2019 特集
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» 2019年03月04日 13時00分 公開

DMS2019:すごいでっしゃろ感はなくなった3Dプリンタ、久々に来たから感じた空気の変化 (2/3)

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

液状シリコーンゴムは使ってみたいんだけどなぁ……

 ダウ・東レ(旧社名:東レ・ダウコーニング)のブースは、遠目にはシューズやシューズのソールのようなものを展示しているのが見取れ、最初はアディダスのような3Dプリント製のソールで靴作りましたという事例が3Dプリンタの材料と共に展示されているのかなぁくらいの印象だったのだが、ブースを訪れてみると少々違い、3Dプリンタ用の液状シリコーンゴムが展示のメインテーマだった。

「SILASTIC 3D 3335」で造形した靴のミッドソール

 素材そのものも興味をひかれたが、シューズブランドのECCOによる、この素材を使ったサービス「QUANT-U」が興味深い。これは店舗で購入希望者の足を形を3Dスキャンし、さらには動的な歩行パターンを計測し、計測データを元にその人に最適なミッドソールを店舗に設置した3Dプリンタで出力し、シューズと共に提供するというサービスだ。そのミッドソールに使われる素材が、3Dプリンタ用の液状シリコーンゴムというわけだ。店頭での3Dプリントに掛かる時間は1時間ほどとのこと。人間の身体に近い製品ほど、カスタマイゼーション幅が広がることは歓迎されやすいので、店頭で1時間ほどで自分専用の靴に仕上がるというのはサービスとしての訴求力がありそうだ。

 ECCOとしてもビジネスとしては、まだ実験的な面が強い様で、QUANT-Uの本国サイトを見てみると、世界各国を巡回ポップアップストアの様な形でサービス提供している様だ。この原稿を書いている時点では、QUANT-Uを使ってシューズを購入できるのは、伊勢丹新宿店でのポップアップストアのみの様だ。

 デザイナーとしては、3Dプリントできる液状シリコーンゴムも試作などのときに使ってみたいと思うので、この材料での出力サービスを行っているところはあるのかとブースの説明員の方に尋ねてみたのだが、「現段階ではまだない」とのこと。材料販売を進めていく上では、今後はそういった方面の開拓も必要だと認識はしているという話も出たので、今しばらくは様子見か。残念。

いまや名物プレゼンか? 3Dプリンタと従来加工法とのコラボが織りなすもの

 ストラタシスのブースでは、ここ数年来の名物出しもののようでもある、スワニーによる「デジタルモールド」のプレゼンは今回も多くの人の足を止めていた。このデジタルモールドのプレゼンでは、ブースに射出成型機を持ち込み、3Dプリンタで出力した型を使って成型してみせる様子は、なかなかに目をひく。

「デジタルモールド」の展示

 何年か前に初めてデジタルモールドのプレゼンを見たときは、3Dプリント製の型で成型する使い方自体がプレゼンの主体の印象であった記憶だった。次に見たときには、3Dプリント製の型をプレスや鋳造にも範囲を広げた事例など用途拡大に焦点を当てたものへと進化させていた。そして今回、久しぶりに見たプレゼンでは、量産品質とできるだけ同じものを試作するための手段としての提案だった。試作段階で『作ってみる』の部分を早くすることに加えて、材料や物性も同じものが作れれば、試作品でできる試験や評価もより早く手を付けることができるから、開発の効率化がより進むという狙いだ。

 そのために、3Dプリントされた樹脂型を、マシニング加工でさっと表面をひと削りして、射出成型の金型にセットするとか、型の片面はアルミ金型と組み合わせて成型するとか、いくつかの選択肢を示しながらのプレゼンだった。

スワニーの橋爪良博氏のプレゼン

 今回はストラタシスの3Dプリンタと汎用の射出成型機を並べ、3Dプリンタで成形した樹脂型を隣の成型機にセットし、インテグラルヒンジを持つPPの成型品を目の前で成型してみせるデモンストレーションを行っていた。成型に使用する樹脂や充填密度などを量産レベルと同等にできるので、成型品は外観確認だけでなくヒンジ部の機能性なども併せて検討できる、という話しの流れを分かりやすくしていた、いいデモンストレーションだったのではないだろうか。

 ストラタシスという造形機メーカーのブースで「何でも3Dプリンタでやればいいってもんじゃないよ」というメッセージのプレゼンが行われるというのは、機器を提供する側、使う側共に、環境の成熟が進んできているということだろう。

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