サプライチェーンに明かりをともすJDA、AIとIoTで管理の自律化を推進製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

製造業はサプライチェーンの効率化と強じん化に力を注いでいる現在、SCMシステムとIoT、AIの組み合わせに期待が集まっている。SCM大手のJDAソフトウェアでAPAC社長を務めるAmit Bagga氏に、製造業のサプライチェーンにおける現在地と次世代SCMがもたらす効果を聞いた。

» 2019年03月06日 11時00分 公開
[松本貴志MONOist]

 原料調達から生産工程、そして顧客への製品流通まで長い旅路をたどる製造業のサプライチェーン。マスカスタマイゼーションの進展による多品種少量生産や短納期を求める社会ニーズを受けて、製造業はサプライチェーンの効率化をより一層進めている。

 一方で健全なサプライチェーンの維持にもリスクが潜む。2018年に国内で頻発した豪雨や台風、地震などの自然災害が物流網の寸断や生産設備にダメージを与え、生産や輸出入計画に大きな影響を及ぼしたことも記憶に新しい。平常時の効率化だけでなく、災害にも耐えうる強じんなサプライチェーンの構築も課題だ。

 そのような状況で、最適なサプライチェーン構築を支援するSCM(サプライチェーンマネジメント)システムとIoT(モノのインターネット)、機械学習の組み合わせに期待が集まっている。SCM大手のJDAソフトウェア(JDA Software、以下JDA)でAPAC(アジア太平洋地域)社長を務めるAmit Bagga氏も「SCMは変革の時代が来た。IoTの進展によりSCMにはサプライチェーンに関わるあらゆる情報が集まる。需要予測を含めてエンドツーエンドに俯瞰(ふかん)したサプライチェーンの計画を立てることができる」と語る。

 製造業のサプライチェーンにおける現在地と次世代SCMがもたらす効果をBagga氏に聞いた。

JDAソフトウェアのAmit Bagga氏

サプライチェーンが抱える課題、変化する顧客ニーズ

MONOist 製造業サプライチェーンのあるべき姿と、それを支えるSCMの役割を教えてください。

Bagga氏 サプライチェーンがデジタル技術により変わりつつある。IoTによって大量のデータが収集され、機械学習に代表されるAI(人工知能)によってサプライチェーンの効率化や将来予測の役に立つインサイトが得られるようになった。例えば顧客への納期予定の通知や、工場における在庫高試算、部品補充の正確な時期予測といったことがサプライチェーン全体のデジタル化によって迅速に提供できる。

 SCMはサプライチェーンに発生した問題を可視化する仕組みだ。問題の発生を監視し、発生した場合にはそれを認識し適した対応を行う。一方で、これまでのSCMはルールベースかつ周期的な問題認識能力に限られていたため、マニュアルに沿った問題対応しかできず、サプライチェーンに関わるリアルタイムな環境変化に後れを取ることがあった。しかし、市場環境がダイナミックに変化する現在はSCMもアジャイルに対応しなければならない。

 市場環境の変化で最も大切なことの1つは、個々の顧客をより注視しなければならなくなったことだ。顧客一人ひとりの属性やニーズに合った商品を提供するマスカスタマイゼーションが求められている。企業の宣伝活動の移り変わりを例に挙げると、あるドイツの自動車メーカーはデモグラフィック(人口統計学的に顧客属性を分析したデータ)を重視してマーケティング戦略を立てているが、別のドイツ自動車メーカーではより細かな粒度を重視しそれぞれの顧客に寄り添った広告戦略を打ち出している。

 この自動車メーカーのように、顧客一人ひとりに絞った広告、製品戦略を採る場合には、それに見合ったサプライチェーンの構築が求められる。ここで必要とされるのがカスタマージャーニーを一緒にたどることができるSCMだ。しかし、需要予測などサプライチェーン計画に必須なインサイトを、消費者の購買意識から天気や時間帯といった購買様態に関わる情報にまで踏み込んで分析、可視化、問題対応を行うことはこれまで難しかった。

現代のサプライチェーンが抱える課題(クリックで拡大) 出典:JDAソフトウェア

 これからのSCMでは、サプライチェーン状況の可視化や予測分析だけではなく、予測された問題に対して処方的な解決策を提案すること、さらにはサプライチェーン自身が自律的に常時稼働を行うような自己修正、自己学習機能を持つことが求められる。

サプライチェーンの成熟段階とできることのロードマップ(クリックで拡大) 出典:JDAソフトウェア
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