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» 2019年03月08日 06時00分 公開

和田憲一郎の電動化新時代!(32):EV向けワイヤレス給電、実用化の最終段階へ! (2/3)

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

ワイヤレス給電、両社の違いは

 さて、ここでワイヤレス給電に関する方法を少し整理したい。ワイヤレス給電は、過去より電磁誘導方式やマイクロ波送電方式などがあったが、磁界共鳴方式が他と圧倒的に異なるのは、送電距離と効率の違いである。EVは、車両下端とグラウンド側は最低地上高を確保するため、おおむね20〜30cm程度の空間を要している。この距離で送電を行い、なおかつ効率の高さを追求するとなると磁界共鳴方式が強みを発揮する。これまで多様な方式が検討されたが、EV向けとしては磁界共鳴方式が優勢となっている。WiTricityおよびQualcomm Halo もコイルの形状や共振器の位置に違いはあるものの、磁界共鳴方式の1つと言えよう。

 これまで激しい国際標準化争いを続けてきた2社だが、2019年にきて、WiTricityがQualcommの持つ技術やライセンス権、約1500件に及ぶパテントも含めて全て譲り受けることとなった。コイルの巻く方式もQualcomm Halo はダブルディー(DD)方式という独自形状を推奨してきたが、WiTricityが推奨するサーキュラー(円盤状)タイプに一本化し、Haloの技術を統合する動きとなる。

 なお、ワイヤレス給電と急速充電は別物である。現在の国際標準化で目指しているワイヤレス給電は、伝送電力が家庭用グリッドを前提にした3k〜22kWレベル、つまり普通充電および中速充電である。一方、大電力グリッドを前提とした急速充電50k〜400kW、もしくは日中共同開発の超急速充電は最大900kWもあり、これとは全く異なる。

 これまでは日独中などの自動車メーカー、部品メーカーなどが2陣営に分かれて開発を進めてきた。しかし、今回の買収でWiTricityがリーダーシップを持つことにより技術一元化され、国際標準化とコイル設計の標準化が促進されると思われる。以下にワイヤレス給電を検討している企業(乗用車カテゴリー)を示す。

図表2:ワイヤレス給電を検討している企業(乗用車カテゴリー)(クリックして拡大) 出典:日本電動化研究所

実用化への課題は何か

 このように国際標準化が推進することは望ましいことである。しかし、これで全てが解決するのだろうか。多くの関係者は課題に取り組んでいると思われるが、筆者が考える実用化への課題は大きく分類して以下8つと思われる。その中で、特に留意すべきアイテムとして3つを挙げたい。

1:車体レイアウト

 自動車メーカーにとっては、これがとても悩ましい。ワイヤレス給電装置は、当初あるモデルの全車両に装着ではなく、メーカーオプションとして一部に装着されるだろう。その後はニーズの高まりにより標準装着になる可能性がある。しかし、一部のみ装着の場合は、車両下側にレゾネータと呼ばれるワイヤレス受電装置が装着されると、車体の最低地上高が変わることとなり、標準車とワイヤレス給電車をどう設計的に区分するか悩みどころとなる。また車体下側は走行中も石はねなどが多く、防御構造をどうするかも課題だ。重量増が衝突安全性に影響することは言うまでもない。

2:相互互換性

 インターオペラビリティと呼ばれているもので、車両とグラウンド側の送電装置間に互換性があることは必須だ。どのような車両が来ても、全てのグラウンド側装置と問題なくワイヤレス給電を行うことが必要である。しかし、現実的にはかなり難しい。

 急速充電の例で言えば、日本のCHAdeMO協議会が中心となり、運用の互換性を担保する認証制度を設けている。つまり急速充電器メーカーは、同協議会が指定する認証機関で認証試験を実施し、その後、同協議会は認証機関からの書面内容を審査し、認証を発行して、相互互換性を担保している。ワイヤレス給電においても、何らかの認証制度が必要ではないだろうか。

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