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» 2019年03月13日 10時00分 公開

製造業IoT:古くて新しいアドホックネットワーク、普及を担う最新研究を知る (1/2)

デバイスを無線通信で相互接続し、デバイス同士の直接通信を数珠つなぎする「モバイルアドホックネットワーク(MANET)」。立命館大学は2019年3月12日、東京都内でアドホックネットワークをテーマとしたプレスセミナーを開催し、同学 情報理工学部 准教授の野口拓氏がMANETの最新研究動向を概説した。

[松本貴志,MONOist]

 デバイスを無線通信で相互接続し、デバイス同士の直接通信を数珠つなぎする「モバイルアドホックネットワーク(MANET)」。セルラー移動通信で必要な基地局などの固定インフラに依存せず、近距離以上のネットワークを構築できるメリットがある。

 MANETは1990年代から研究が進められており、特別目新しい技術というわけではない。一方、ユースケースとして災害時の代替ネットワークやV2X(Vehicle to X)通信を含めたIoT(モノのインターネット)活用が提案されており、現在では注目を再び集める通信技術となった。

立命館大学の野口拓氏

 立命館大学は2019年3月12日、東京都内でアドホックネットワークをテーマとしたプレスセミナーを開催し、同学 情報理工学部 准教授の野口拓氏がMANETの最新研究動向を概説した。

 アドホックネットワーク開発の歴史は長い。第1世代のアドホックネットワーク「Packet Radio Networks(PRNET)」は1972年に米国の国防高等研究計画局(DARPA)によって開発された。PRNETは軍事利用を目的に研究が進められたが実用化には至らなかった。第2世代となる「Near-term Digital Radio(NTDR)」も米軍により軍事目的で研究が行われ、1980年頃から実用化されている。

 MANETを含む現在のアドホックネットワーク技術は第3世代となる。IEEE802.11(Wi-Fi)やBluetoothによって生まれた通信技術を活用し、民生利用できるアドホックネットワークが2000年頃から誕生した。同技術は黎明(れいめい)期から災害時用ネットワークとしての活用に期待が高まっており、日本政府では2003年に策定した「防災情報システム整備の基本方針」でアドホックネットワークの活用を見込んでいたとする。

常に変わる通信環境、経路決定とパケット氾濫をどう対策するか

 しかし、MANETなどのアドホックネットワークは現在のところ「実用化されているかというと半分イエスで半分ノー。大規模な普及には至っていない」(野口氏)状況だ。

 普及への最大の課題は、同技術が第三者に依存する通信形態であるため第三者の状況により通信の経路が変化することだ。このため、経路変化に対応した高信頼かつ安定した経路確立手法が求められる。同様に第三者へデータを中継させることで発生するセキュリティへの懸念を解消する技術や、通信中継デバイスに対する低消費電力技術、中継行為に対するインセンティブ付与の手法なども検討課題だという。

アドホックネットワーク普及への課題(クリックで拡大)

 野口氏が指導教官を務める立命館大学 情報理工学部 ネットワークシステム研究室では、上記課題を解決する経路制御やネットワーク符号化を活用した多地点配信、ブラックホール攻撃防御などを研究対象としている。

 経路制御に関する研究では、経路確立時の制御パケット氾濫問題の解決を目的としている。アドホックネットワークでは経路を確立するために少なくとも1回は制御パケットをネットワーク全体に氾濫させる必要がある。このときに「ネットワークに混雑をもたらすため、ネットワーク全体の伝送性能が低下してしまう」(野口氏)ことが課題となる。

 この問題を解決するため同研究室では、宛先端末の位置情報を基とした論理的手法、指向性アンテナを活用した物理的手法を組み合わせたパケット氾濫範囲を制限する技術を提案している。

制御パケット氾濫問題の解決する経路確立手法の概要(クリックで拡大)
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