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» 2019年03月19日 10時00分 公開

製造業AR活用:製造業のAR活用は新ステージへ、3Dデータ自動変換サービスが生み出す可能性

製造業では3D CADによって生まれた3Dデータが設計にしか生かされていないのが現状だ。AR(拡張現実)・MR(複合現実)デバイスを使ったデザインレビューなど新しい用途は提案されているものの、設計データをAR・MRデバイス向けに変換する作業が負担となっていた。この課題を解決する可視化ソリューション「mixpace(ミクスペース)」について、SB C&Sとホロラボに話を聞いた。

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 建築・建設業でのBIM(Building Information Modeling)の活用と同様に、製造業の分野でも3D CADによる設計が浸透している。3Dデータを使った設計は、実際の製造工程に入る前に設計したものの形状を直感的に把握できるのが強みだ。ただ、現在の製造業ではこれらが作り出す3Dデータは製品の設計のためにしか使われていなかった。AR(拡張現実)・MR(複合現実)デバイスの登場によって、レイアウトの検討やデザインレビュー、性能の評価、生産技術、品質管理などでも3Dデータを活用する可能性が見えてきた。

 今までは2Dのディスプレイの画面でしか見られなかった3Dデータだが、AR・MRデバイスを使うと設計したものが目の前にあるかのように見ることができる。また、ディスプレイの画面に収まらないような自動車や航空機など大きな製品や、工場の生産ライン、住宅などの実物のサイズも感じることができる。もちろん、3Dデータを回転したり拡大したりすることなども可能だ。

 3DデータがMRデバイスで利用できれば、CADやBIMを扱うエンジニア以外の人でも設計の内容をリアルにイメージできる。これは、設計者がクライアントに説明を行う際はもちろん、技術レベルに幅のあるエンジニアや関係者が集うミーティングの場でも役立つだろう。

3DデータをMRデバイスで見ることができれば、誰もが設計の内容をリアルに把握できる

 そんな中、2019年2月25日、SB C&Sホロラボは東京都内で会見を行い、3D CADやBIMのデータを手軽な操作でAR・MRデバイスで利用可能にする可視化ソリューション「mixpace(ミクスペース)」を発表した。3Dデータを変換してマイクロソフトのMRデバイス「HoloLens(ホロレンズ)」などで利用可能にするものだ。3D CADやBIMを扱うエンジニア以外の人も3Dデータの内容を容易にイメージできるようになる。

 mixpaceの登場により、製造業はどのようなことが可能になるのだろうか。mixspaceの販売を担当するSB C&S ICT事業本部 MD本部 技術統括部 テクニカルマーケティングセンター 新規ビジネス推進課 AR/VR/MRソリューション担当 プロジェクトマネージャーの遠藤文昭氏と、同ソリューションを開発したホロラボ 代表取締役 CEOの中村薫氏に話を聞いた。

そういえばホロレンズ買ったけど……という人に

 3D CADのデータを3DCG向けに変換するツールはさまざまなものが市場に出ているが、開発作業が伴い、手間とスキルが要求される。AR・MRデバイスの開発ツールと3DCGソフトウェアを連携させる作業も必要で、必要な情報を欠損させずに表示させるのは“職人技”の域になる。製造業の現場には3DCGソフトウェアを扱えるエンジニアは少ない。こうした手間とコストを、クラウド側で引き受けるのが、mixpaceの特徴だといえる。

 Autodeskの「VRED」をはじめ3D設計データをAR・MRデバイスで扱えるよう3DCGに変換するソフトウェアは幾つかあるが、それらの中でもmixpaceの最大の特徴は手軽さにあるという。VREDは高性能なグラフィックスボードを搭載したPCで使用するため、ソフトウェア以外も含めて一定の投資が必要になる。これに対しmixpaceは、データ変換のコストや手間をかけずに3Dデータを見られる。そのため、「ホロレンズを買ってはみたものの……と思っていた人に、AR・MR活用の入門として活用してもらいたい」(中村氏)という狙いで展開する。

ホロラボの中村薫氏

 mixpaceの利用は非常に簡単だ。CADやBIMなどで作成したデータをそのまま、Webブラウザ上にドラッグ&ドロップするだけで良い。mixpaceはクラウド型のサービスなので、アップロードに際して何らかのソフトウェアをPCにインストールする必要もない。データをmixpaceにアップロードすると、その後はmixpace側で自動的に変換処理を行い、ホロレンズなどの利用するAR・MRデバイスに応じて、データ量やポリゴン数などを最適にチューニングしてくれる。変換に必要な時間はアップロードするデータのサイズと内容によって異なるが、「数MB程度の軽いデータだと10分程度。形状にさほど凝っていないものであれば数分というレベル」(遠藤氏)だという。

 mixpaceは多彩なファイル形式に対応している。mixpaceはAutodeskのWebAPIである「Forge」を利用しており、対応する多くのファイル形式のデータがそのままMRデータ化できる。またクラウドは、マイクロソフトの「Azure」を用いており、その高いセキュリティも特徴の1つになっている。

オートデスク以外にも対応

 ホロレンズの限界性能もあり、クルマ1台分のデザインについて内外装を同時に見る……といった用途をmixpaceでカバーするのは難しい。「製造業が扱う3D CADは、設計しているモノが小さいのでデータの密度が高い。そのため、ホロレンズが表示に対応しきれない部分がある。AR・MRデバイスで3Dデータを見て何をするかによっては、低コストで変換したそれなりの見え方でいい場合もあれば、費用をかけて見た目のよい3DCGを作り込む必要がある場面もある。用途や見たいものに合わせて見え方を作り込むオプションも用意している」(中村氏)。

 mixpaceには、「mixpace standard」と「mixpace standard + R」というプランが用意されている。“standard”と“standard + R”の違いは、Autodesk Revitのネイティブデータがそのままアップロードできるか否かだ。ちなみに、お試し価格で利用可能な「mixpace trial」では「mixpace standard + R」と同等のファイル形式に対応する。

 ファイル形式だけ見ると「mixpace standard + R」が上位のサービスとなる。しかし、Revitをあまり利用していないであろう製造業の場合、Revitのネイティブファイル対応に拘る意味はないだろう。ちなみにmixpaceでは、3D CADツール上でいったんSTEPなどの中間ファイルに変換することによって、SOLIDWORKSやCATIAといったAutodesk以外の3D CADデータもMRデータに変換できる。

 面白いのは、mixpaceを使うと異なるフォーマットの複数のファイルからそれぞれMRデータを作り、それを同じ空間に置くことができる点だ。異なるフォーマットのデータを同一の空間で扱いたい場合、従来の方法ではCADソフト上でファイルのフォーマットを統一する必要がある。しかし、mixpaceではそのような手順は不要だ。データごとにファイルをアップロードすれば、同一のMR空間に同居させることができる。

セキュリティを考慮、クラウド上に元ファイルを保持しない

 3Dデータを使った設計が浸透する建設・建築業と製造業だが、ホロラボの中村氏は両者には設計データの扱い、特にクラウド経由での活用に大きな姿勢の違いがあるという。建設・建築業では「大手のゼネコンから職人まで同じ現場でたくさんの人が業務にあたる。データを自社だけで持っているということが、そもそもできない環境がある」(中村氏)。このため、建設・建築業ではクラウドの利用に対してポジティブな傾向があるという。

 一方、製造業はデータの扱いに敏感で、特にクラウドサービスの利用はネガティブだ。中村氏は「製造業のCADデータは製品になる前の情報なので機密性への意識が高い。それが漏れると別の会社にコピーされる恐れがある。このため、情報は社内に保持して機密保持を最優先する姿勢が強い」と語る。

 mixpaceはこうした製造業の懸念も踏まえて、サービスにログインする段階からマイクロソフトが管理するID、パスワードを使用することで堅牢性を高めている。中村氏は「弊社の中でセキュリティを保持するより、マイクロソフトのような大手のセキュリティを利用することで安心して利用してもらえるようにした」とAzure利用の理由を説明する。

 また、遠藤氏は、そもそもmixpaceがCADやBIMの元データをクラウド上に保存しない設計であることを説明する。「CADのデータファイルをアップロードするが、アップロード後にクラウド上では元データを削除する。mixpace上では、AR・MRデバイスへの表示に対応するビュワーフォーマットだけを保持する」(遠藤氏)。さらに、変換後のビュワーフォーマットも扱いは厳重だ。「ビュワーのフォーマット自体も、例えば自分のPCにダウンロードし直すようなことは認めていない。専用で接続するホロレンズアプリを介してしか見られないようにしている。このような形でセキュリティを担保しようというのが今のわれわれの考え方だ」(遠藤氏)。

 製造業では、設計者が新しいサービスを試したくても、情報システム部門がセキュリティの担保を理由にそれを認めないケースが多い。しかし、mixpaceのこの仕様は、情報システム部門を説得する有効な材料となりそうだ。

3Dデータを使った打ち合わせが実現

SB C&Sの遠藤文昭氏

 遠藤氏は、製造業でのmixpaceの利用シーンとして、とあるメーカーから受けた相談を紹介してくれた。相談者は化学繊維メーカーで、自動車部品メーカーをクライアントに持つ。部品のサンプルを用いてミーティングを行う場面でmixpaceの利用を考えているようだった。

 このようなシーンでは、事前にmixpaceにCADデータをアップロードしておき、ミーティングにはホロレンズを持参すれば3Dデータを見ながら打ち合わせすることができる。CADソフトをインストールしたPCも、ビジュアライゼーションのツールをインストールした高性能PCも不要だ。先に紹介したように、mixpaceでは元データを保持しない。クラウドにアクセスしたPCにもmixpaceにも元のデータが残らないのは、機密を重視する部品メーカーにとっては大きな安心材料となる。さらに、mixpace上に生成されたビュワーフォーマットのデータは、打ち合わせの後でmixpace上から削除すれば、一切の情報がどこにも残らないことになる。中村氏は、この他にも既にBIMのデータを扱える人がRevitのデータをMR化してデバイス上で確認する例は増えていると語る。

 mixpaceはWebブラウザから利用するサービスだ。このため、中村氏はmixpaceの利用に際しては必ずしもPCが必要ではないという。「極端な話スマートフォンからでもmixpaceにファイルをアップロードできる。データが更新された時にスマートフォンでそのままクラウドに上げれば、現場にいる人がホロレンズで見ることが可能だ」(中村氏)。

ホロレンズ2にも対応予定

 クラウド上のサービスであるmixpaceは、新しい技術の登場やデバイスの性能アップなどに応じて柔軟な機能強化ができる。中村氏は、アップデートのサイクルを作り、定期的にmixpaceの機能強化をしていく考えを示した。

 今後の展開としては、マイクロソフトが2019年2月25日に発表したMRデバイスの新モデル「ホロレンズ2」の他、「Windows MR(VR)」やiOSデバイスなどへの対応が予定されている。また、mixpaceの機能として素材や寸法などCADデータが持つ属性情報をMR画面でも利用可能にする機能の他、さまざまな機能の追加が予定されている。

 この中で多くのユーザーが注目するのは、やはりホロレンズ2への対応だろう。従来のホロレンズに比べて大幅に機能が強化されたホロレンズ2は、mixpaceの3Dデータ活用分野を一層広げてくれそうだ。新しいホロレンズ2は、視野角が2倍になり、SoC(System on Chip)も処理能力の高いものが搭載される。また、カーボン素材の採用による軽量化や全体の重量バランスの見直しが行われた。さらに、ヘルメットと一体化するなど、利用現場に合わせたカスタマイズができるとの情報もある。これにより、MRデータの利用がよりリアルかつ快適になることは間違いない。中村氏は、ホロレンズ2の販売スケジュールに合わせmixpaceを対応させるべく作業中であることを示した。

 この他、遠藤氏からは東京都内のSB C&Sセミナールームで2019年3月中に毎週開催される“体験会”についての案内もあった。遠藤氏は、CADデータの3Dビューイングがどのようなものなのかを多くの人に体験してもらいたいと語った。

3Dデータを使って何ができるか、まずは体験を

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提供:SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年4月18日

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