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» 2019年03月27日 10時00分 公開

製造業IoT:直動案内部品に予防保全を、THKが取り組むIoTソリューションがもたらす価値

大手機械要素部品メーカーであり、産業用機械の中核を担う直動部品で高いシェアを持つTHK。そのTHKが新たにIoTを活用した予兆検知サービスに参入することを発表した。機械要素部品メーカーがなぜ新たなITサービスに乗り出すのか。新たな取り組みについて、THK 取締役専務執行役員の寺町崇史氏に話を聞いた。

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 大手機械要素部品メーカーであるTHKは、NTTドコモ、シスコシステムズと共同で、製造業向け予兆検知アプリケーションである「OMNI edge(オムニエッジ)」を構築し、2019年秋の商用化を目指している。直動案内部品で世界でも大きなシェアを握るTHKがなぜ、IoTサービスに取り組み始めたのか。THKの新たな取り組みを追う。

photo 新事業を担当するTHK 取締役専務執行役員の寺町崇史氏と「OMNI edge(オムニエッジ)」

直線運動部のころがり化を世界で初めて実現

 THKは1971年に東邦精工として社業をスタートさせている。「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」との経営理念のもと、独創的な発想と独自の技術により、新しい機械構造や部品を提案し続けている。1984年に社名をTHKに変更。名前の由来はタフネス「Toughness」、ハイクオリティー「High Quality」、ノウハウ「Know-how」の頭文字を取ったもので、その3つの理念を企業姿勢や製品開発に生かしているという。

photo THKのLMガイド(クリックで拡大)出典:THK

 現在の主な事業は、LM(Linear Motion)ガイド、ボールスプライン、ボールねじ、LMガイドアクチュエータなど機械要素部品の開発、製造、販売である。さらに、精密XYステージやリニアモータアクチュエータをはじめとするメカトロニクス関連製品、リンクボールやロッドエンドなどの自動車部品、戸建住宅から高層ビルまで対応可能なTHK免震システムなど、幅広い製品展開をしている。

 特に同社の名前を世に知らしめたのが、世界に先駆けて開発したのがLMガイドである。従来は困難とされてきた機械の直線運動部の「ころがり化」を独自の技術により実現したもので、1972年に「直線運動案内」(LMガイド)として初めて製品化した。

 この直線運動部のころがり化は、メカトロニクス機器の高精度化、高速化、省力化など、機械性能を飛躍的に向上させた。THKのLMガイドを取り付けることで、工作機械や産業用ロボットは、超精密な作業が可能となり、半導体製造装置も、サブミクロン単位の精度を実現できるようになった。最近では、液晶製造ライン、鉄道車両、福祉車両、医療用機器、高層ビルや住宅、アミューズメント機器などにも使用されるなどその用途は大きく広がり、さまざまな領域で「動き」を支える存在となっている。

LMガイドの予防保全を実現する「OMNI edge」

 幅広い分野で使われるTHK製品だが、その中でも多くの製品が使われているのが、製造業の工場領域だといえるだろう。各種産業機械や搬送装置、その他設備などモノづくりでは多くの「モノが動く」。それらを支えているのがTHK製品だからだ。

 一方で製造現場には現在さまざまな課題が存在している。人口減少などにより労働力不足が進んでおり、さらに熟練技術者の引退問題などもある。現場の人手不足が進んだことで、現場の機器の保全なども十分に行えず、結果として不良率の上昇や、予期しない機器の停止などが起こる状況なども増えている。

 こうした状況を解決するためにTHKが2018年10月に新たなサービスとして打ち出したのが予兆検知アプリケーション「OMNI edge」である。「OMNI edge」は、NTTドコモ、シスコシステムズとの協業により実現したもので、シスコシステムズのIoTゲートウェイやエッジサーバ、NTTドコモのIoT向けSIMなどを活用している。

 「OMNI edge」のもともとの土台になったのは「THK SENSING SYSTEM」である。同システムは、現場の装置に後付けが可能な専用センサーにより、LMガイドなどの損傷状態をデータとして取得し、可視化できる技術である。

 LMガイドなど直動部品の故障要因として大きなものは2つある。1つは、金属疲労で金属面のクラックなどで精度が落ちるという問題だ。もう1つが潤滑不良である。金属同士が擦れ合うために金属片が発生し、その金属片が付着することで円滑な動作ができなくなり、故障につながるというものだ。「THK SENSING SYSTEM」ではさまざまなセンシングを行い、これらに関連する振動や圧力などの情報を絞り込んで可視化できるようにした。製造装置全体ではなく、故障要因となる主要部品の状況を直接、計測および診断することで、損傷部分を特定できる点が、機械全体の情報を使った故障予知と異なる点である。

photo 「THK SENSING SYSTEM」でデータを取得する様子。赤丸部分に振動センサーを設置しセンシングを行っている(クリックで拡大)

 「OMNI edge」は、この「THK SENSING SYSTEM」で取得したデータをドコモのモバイル回線を介して、シスコシステムズのエッジコンピューティングルーター、もしくはスマートフォンで蓄積し、THKのデータセンターで監視するパッケージ型のサービスだ。LMガイドの状態診断や、装置の予兆保全を可能とする。

 寺町氏は「THKのLMガイドは機械の中心的な役割を担う部品となります。こうした部品は基本的には壊れるものではありません。よく壊れるものであれば、交換を前提とした設計となっていますが、そうではないものは壊れると工場の稼働において大きなマイナスが出ることになります。工場のそうした課題を解決するために新たなサービスを展開します」と「OMNI edge」の位置付けについて語る。

 最大の特徴はIoT化に必要なデータ収集、蓄積、分析といった作業を自動化することで、THK SENSING SYSTEMとシステム全体をシームレスに接続し、IT担当者不在の製造現場でも簡単かつ短期間での導入を可能とする点である。保守運用に関してもトータルサポートを実施し、導入ユーザーは大きな負担なく状態監視や予兆保全が行える。

 寺町氏は「とにかく簡単に後付けで導入できることを意識しました。さらにIT部門に頼ることなく、製造現場の判断だけで導入できるということに徹底して取り組みました」と述べている。

 さらに通信端末からデータ収集基盤までの間は閉域ネットワークを構築するためにデータを安全に収集できるというのがポイントだ。また、グローバル対応を進めていることも特徴だ。NTTドコモの「グローバルIoTソリューション」により、グローバル回線提供やオペレーション、コンサルティングをワンストップで提供できるために、海外拠点でも簡単にサービス導入が可能である。

photo 「OMNI edge」の仕組み(クリックで拡大)出典:THK

トライアルには100社以上が問い合わせ

 新サービスへ参入した理由について、THK 取締役専務執行役員の寺町崇史氏は「THKのLMガイドは高品質を特徴としていますが、それを数値で証明することは難しいものでした。しかし、IoTなどのデジタル技術が発展したことで、データとして証明できるようになりました。そこで2015年頃にTHK SENSING SYSTEMを開発し、さらにその情報をさまざまなところで活用でき、ビジネス変革につなげられるように、新たなサービス展開を決めました」と述べている。

 サービス発表後にはトライアル導入の募集を開始。「当初は50社を目標としていましたが、問い合わせは100社以上いただいています。その内、現在30社程度とは契約の取り交わしから設置の作業まで進んできています」(寺町氏)。

 ターゲットユーザーについては、機械メーカーではなく、工場などのエンドユーザーを想定し、中堅企業などをメインと位置付けていたが、トライアルに募集してきた企業については自動車部品、食品加工、産業機器メーカーなどエンドユーザーも機械メーカーもそれぞれ含まれているという。

 また「われわれの当初の考えでは、工場内にネットワークを配置する不便さを取り除くことで、中小製造業がIoTサービスを活用するハードルを下げるという意図がありました。しかし、実際には、大手製造業からの問い合わせも多く、当初の見込みとは異なる手応えも感じています」と寺町氏は語る。

 今後はまずはシステムの設置作業を進めながら、モニタリングを行い、さらに実用的なサービスへと仕上げていく方針である。「有料サービスとして、対価を支払っていただくレベルがどこにあるのかを見極めることもトライアルのテーマです。得られる価値ついてもトライアルの参加企業と一緒に分析しながら、さらなる改善を進めていきます」(寺町氏)。

 他のプラットフォームとの連携についても検討しており「エンドユーザーに価値を生み出す形を実現することを目指してます。連携が必要な状況であれば、連携を進めていきます。その当たりもトライアルを通じて明らかにしていきます」(寺町氏)としている。

THKが目指すデジタル変革の全体像

 実は、THKが目指すものはこの「OMNI Edge」で描くサービスだけにとどまるものではない。THKは現在デジタルトランスフォーメーションに取り組んでおり、「Omni THK」をキーワードにIoTやAIを活用した新しい顧客体験価値の創出と提供を目指したビジネス変革に取り組んでいる。

 例えば、「短納期品が欲しい」というユーザー向けに標準品やセミオーダー品の短納期対応を行う「Fast Delivery」や、特殊図面管理や新規製作検討依頼のデジタル化に対応する「Your Catalog」、顧客の需要予測とTHKの製造予定の照合による予実管理機能などの取り組みを進める「Forecast」などを2018年から順次開始。2019年もさらにサービスを拡充していく方針である。

photo THKのデジタル変革に向けた取り組み(クリックで拡大)出典:THK

 新たに開始する「OMNI Edge」はTHKが目指すデジタルトランスフォーメーションの一翼を担う取り組みであるのだ。寺町氏は「THK全体でデジタル技術を生かしたビジネスモデル変革に取り組んでいます。その中で『OMNI Edge』は製造業におけるサービスビジネス化への大きな挑戦となる取り組みです。当面はトライアルの中での実証を進め、2019年秋には本格サービスを開始します。デジタルの力を活用して新たな価値を訴えていきたいと考えています」と今後の取り組みについて述べている。

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提供:THK株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年4月26日

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