クルマ丸ごと1台分の3DモデルをiPadで軽快操作、アフターサービス業務を革新メカ設計ニュース

ラティス・テクノロジーは、3DモデルのWeb配信ソリューション「XVL Web3D Manager」の最新版(Ver.3.2)を2019年5月7日から提供開始すると発表した。

» 2019年04月22日 10時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

大容量3Dモデルに対応した「XVL Web3D Manager」の最新版

 ラティス・テクノロジーは2019年4月22日、3DモデルのWeb配信ソリューション「XVL Web3D Manager」の最新版、Ver.3.2を同年5月7日から提供開始すると発表した。

 新バージョンでは、これまで取り扱いが難しかった大容量3Dモデルに対応した。同社独自のスマートローディング技術(ビュワーの正面に表示されている形状データのみを読み込んで、画面上見えていない部分の形状は取り込まない。一度表示された形状が裏側に回った場合はメモリから解放される)により、従来比約8倍もの大規模3Dモデルを「iPad」などのタブレット端末上で軽快に表示、操作することが可能となった。

新バージョンでは大規模3Dモデルでもタブレット端末で軽快に扱えるようになった 新バージョンでは大規模3Dモデルでもタブレット端末で軽快に扱えるようになった ※出典:ラティス・テクノロジー

 「前バージョンでは、約30MBのXVLデータの読み込みが限界だったが、新バージョンではXVLデータで約250MB、変換前の3D CADデータの状態でいうと約20GBクラスまで対応可能となり、自動車丸ごと1台分のフル3Dモデルもタブレット端末で軽快に扱える」(同社)という。

 XVL Web3D Managerの主な用途は、アフターサービス、保守サポート業務などにおける3Dのサービスカタログおよびサービスマニュアルとしての利用を想定。設計段階で作成した3Dデータ資産を有効活用することで、保守部品の迅速な検索、複雑化する保守作業手順の支援、バリエーションの増加に伴うサービスカタログおよびマニュアル作成の負荷軽減を実現する。

一気通貫で3Dデータ資産を有効活用! 従来課題をすっきり解消

 従来の紙ベースのサービスカタログでは、外出先での閲覧が不向きであり、部品特定に時間がかかっていた。また、サービスカタログの作成においても、品番や図面などさまざまな情報を基にS-BOMを作成し、手作業で分解図を作成するなど負担が大きかった。さらに、紙ベース(かつ2D)のマニュアルだと保守作業手順の理解に時間がかかり、作業内容の習熟に多大な時間と手間を要していた。XVL Web3D Managerは、こうした従来課題を解消するもので、部品検索にかかる時間の削減、S-BOM編集と分解図作成工数の削減、保守作業習熟時間の短縮といった効果が得られるという。

従来の作業と「XVL Web3D Manager」を用いた3D中心の作業の比較 従来の作業と「XVL Web3D Manager」を用いた3D中心の作業の比較 ※出典:ラティス・テクノロジー

 今回の新バージョンで大容量3Dモデル対応を果たしたXVL Web3D Managerだが、その他、3つの特長を備える。1つ目はインストールレスだ。HTML5対応のWebブラウザ上で動作するため、現場のサービスマンが使用するタブレット端末に専用ソフトウェアをインストールすることなく利用できる。マルチデバイス、マルチブラウザ対応のため、現場での展開も容易に行える。

 2つ目はオープンであることだ。例えば、企業内で運用している業務システム(保守部品受発注システムなど)と連携させたり、独自のカスタム機能を組み込んだりすることが可能である。

 そして、3つ目の特長はセキュリティである。SAML(Security Assertion Markup Language)によるユーザー認証機能、権限管理機能、ログ監視機能を備える。また、ビュワーに読み込んだ3Dモデルをキャッシュに保存しない方式を採用しており、3Dデータの流出を防止。また、形状のランダム拡縮機能を組み込むことが可能で、3Dモデルのコピーや模倣も防止する。

利用イメージ 現場での利用イメージ ※出典:ラティス・テクノロジー

 なお、同製品の提供価格は1200万円からで、初期コンサルティング料金を含むソリューションとして提供される(XVL Web3D Managerの単体価格は600万円)。「現在、正式リリースに向けて計測や断面を切るための機能も開発を進めているところだ。XVL Web3D Managerは、ラティス・テクノロジーの製品ソリューションの中でも高額なものに分類されるが、間違いなく効果が期待できる領域(サービスビジネス領域)に対してピンポイントでソリューション提案していきたい」(同社)。

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