特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年04月24日 10時00分 公開

IoTと製造業の深イイ関係(6):プライベートLTEからローカル5Gへ、ドイツの製造業は進化を止めず (1/3)

脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、ドイツの製造業が期待を寄せる「プライベートLTE」と「ローカル5G」にスポットを当てる。

[吉岡佐和子(情報通信総合研究所),MONOist]

 2019年4月10日、日本でも5G向け周波数の割当が完了し、2020年春にはサービス提供が開始される見込みだ。スマートフォン利用を前提とした一般ユーザー向けの公衆ネットワークの商用化にはもう少し時間がかかるが、企業や法人で活用されている自営無線の領域にまでその視野を広げると5Gのユースケースには全く違った世界が見えてくる。

 総務省は、地域広帯域移動無線アクセス(地域BWA:Broadband Wireless Access)用に割り当てられている2.5GHz帯20MHz幅の帯域を、LTEを用いた自営無線でも利用できるようにする「自営BWA」の検討を進めており、2019年8月までに制度整備を終える予定となっている。

総務省が推進する地域BWAのイメージ 総務省が推進する地域BWAのイメージ。地域BWAの枠組みの中で「自営BWA」の検討も進められている(クリックで拡大) 出典:総務省電波利用ホームページ

 また同時に、情報通信審議会「ローカル5G検討作業班」においても、「5Gシステムを用い、ローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築」する「ローカル5G」についても検討を進めている。海外では、こうした自営領域ではいち早く「プライベートLTE」が展開されており、製造業の工場を中心に既に導入が進んでいる。さらに、プライベートLTEをローカル5Gに発展させ、より高度な工場の運営を目指す取り組みも積極的に行われている。特にドイツでは、2018年4月にドイツの電機電子工業連盟(ZVEI)が「5G Alliance for Connected Industries and Automation(5G-ACIA)」を発足させ、通信業界とともに5Gの製造業への導入を促進させる取組みを開始している。

 米国調査会社のHarbor Researchは、ローカル5Gにより、IoT(モノのインターネット)市場は2028年には3560億米ドル(約39兆8000億円)になると予測している。本稿では、同領域において先行するドイツの事例を中心に紹介し、プライベートLTEやローカル5Gの導入意義について解説したい。

プライベートLTEとは何か

 既に周知の通り、LTE(Long Term Evolution)とは、高速携帯通信規格の1つで、第4世代携帯通信規格「4G」とほぼ同義の言葉として使われている。理論上の最高通信速度がダウンロードで100Mbps、アップロードで50Mbpsと高速であることに加え、伝送における遅延も小さいため、動画などの大容量データを瞬時に送信できる点で重宝されている。

 一般的にLTEは、免許周波数を活用して公共サービスとして提供されており、ネットワークを敷設できるのは免許を所有する通信事業者(いわゆる通信キャリア)に限られる。しかし、先述したプライベートLTEは、限定されたエリア内という制限はあるものの、免許を持たない事業者であっても敷設することができる。つまり、土地の所有者や利用者が基地局の設置場所を自由に決めることができる他、ネットワーク構築に必要となる通信設備やSIMもメーカーなどから調達することが可能だ。プライベートLTEとはいわば、「LTEを用いたWi-Fiネットワーク」のようなものだと考えると分かりやすい。しかし、当然のことならが両者には大きな違いがある。

 Wi-Fiは、もとより構内での無線利用を目的としているため、電波の届く範囲が数十mと狭いものの、大容量データを送受信しても通信料金が発生しないことから、さまざまな場所で活用されている。しかし、LTEと比べるとセキュリティ面に課題があったり、あるいは、通信状況が不安定になる場合もあったりするため、ミッションクリティカルなユースケースにおいては、Wi-Fiの全面的な利用には不安を伴う。

 これに対してプライベートLTEは、そのようなWi-Fiの「通信料が発生しない」というメリットを包含しつつ、認証にSIMを用いることで高セキュリティを、さらに公衆ネットワークを経由せず専用で利用できることから高速、高信頼、低遅延を担保できる。また、国や地域によっては、通信事業者が免許帯域をリースして、プライベートLTE設備を運用しているケースもある。つまり、Wi-FiとLTE、両方のメリットを享受できるネットワークといえる。

 プライベートLTEは当初、通信インフラが整備されていないエリアでの活用が中心であったため、鉱業やエネルギーなどの分野に集中していた。しかし、自動運転車やロボット、ドローンなどでも通信を活用したいという要望が業界からも上がっていることから、プライベートLTEの導入が加速している。

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