毎年倍のペースで導入、加速するスマート工場化でネットワークに求められるもの工場IoT

工場のスマート化がいよいよ本格的に動き始めている。しかし、スマートファクトリー化の大前提となるネットワーク構築については従来と変わらず課題のままである製造業は多い。これらを解決するために何を使い、どういう考え方が必要になるのだろうか。ネットワークの専門企業であるシスコシステムズに話を聞いた。

» 2019年04月25日 10時00分 公開
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IoTのPoC段階はもう終わり、本格導入が加速へ

 製造業において、工場のスマート化が本格的に加速し始めている。既にPoC(概念実証)の段階は終え、実導入が大きく広がり始めているのだ。インダストリー4.0やスマートファクトリー化は、日本の製造業にとっても徐々に当たり前のものになりつつあり、生産ラインから工程間、工場全体、工場間、企業間などで、データを収集して活用していく取り組みが一気に進み始めている。

photo シスコシステムズ デジタルトランスフォーメーション事業部 インダストリー事業推進部の西村克治氏

 大きくフェーズが変わり始めているのだ。シスコシステムズ デジタルトランスフォーメーション事業部 インダストリー事業推進部の西村克治氏は「5年前に生産現場を訪問し始めた頃は、生産技術との考え方の大きな違いにより当時のIT技術では活用は難しいだろうというのが一般的な意見でした」と当時を振り返る。しかし「ここ数年、先行してデジタル化に取り組んできた工場で、その成果が明らかになってきました。これに続けと、様子見をしていた製造業の間でも、製造工程、工場、さらにはサプライチェーン全体を見据えたデジタルによる全体最適化への取り組みが加速しています」(西村氏)。

 オフィス内のPCや複合機でネットワーク対応が基本となっているのに対し、今後は工場内の設備も当たり前のようにネットワーク接続される時代がやってくるのは間違いないだろう。そして、それを基盤として集めたデータを活用し新たな価値を生み出す世界へと進んでいくのである。

全てのネットワークを可視化した一元管理を実現

 ただ、スマートファクトリー化に向けて、数年前と変わらず課題となっているのが、ネットワーク環境である。スマートファクトリーを実現するためにはネットワークを活用したデータの収集や活用が必須となっているが、従来の工場では、これらのデータを収集できるようなネットワーク基盤は存在しない場合がほとんどだ。また、存在したとしても、理想とするようなネットワーク環境になっていないのが実情である。

 もちろん、これまでの日本の製造現場でもネットワークと無縁だったわけではない。OT(運用技術)系の制御ネットワークをはじめ、保守や保全、生産指示などを担うネットワークなどは工場内の各所に導入されてきた。ただ、問題はこれらのネットワークが個別最適で構築され、用途で分断されて運用されてきたことだ。流れる情報もそれぞれのネットワークに個別化されたものとなっており、相互に活用できるものではない。

 「4K解像度の大容量映像データや、遅延が許されない制御データなどの要件を満たすためには、これまでの工場ネットワークとは異なる高信頼かつ大規模な運用に耐えられる、新しいネットワークインフラが必要となります」と西村氏は強調する。

 そうした中でシスコシステムズが提唱しているのが「標準イーサネット、コントローラー間ネットワーク、センサーデータ収集用ネットワークを1台の産業用ネットワークスイッチに集約する」というアプローチだ。

photo 工場ネットワークの導入構成例(クリックで拡大)出典:シスコシステムズ

 工場において各設備から出力されるデータは、通信プロトコルもデータ形式も異なる。製造現場からは「相互連携は難しい」という懐疑的な声も出ているが、これは誤解だ。物理的なネットワーク接続とデータのハンドリングは別次元の問題で、データ活用という観点だけで考えれば相互連携は可能なのである。

photo シスコシステムズ エンタープライズ事業 エンタープライズソリューションアーキテクト カストマーソリューションズアーキテクトの下山智且氏

 シスコシステムズ エンタープライズ事業 エンタープライズソリューションアーキテクト カストマーソリューションズアーキテクトの下山智且氏は「コントローラー間ネットワークやセンサーデータ収集用ネットワークの分野で一般的に用いられている産業用イーサネットであっても、イーサネット技術を熟知したシスコシステムズであれば標準イーサネットとの集約接続は比較的簡単に行うことができます。その上で装置(アプリケーション)ごとに異なる通信プロトコルのデータを相互に突き合わせて最適化する仕組みを提供し、データ連携を実現しています」と説明する。

 つまり、産業用イーサネットの方式を必ずしも統一する必要はなく、それぞれ異なる通信プロトコルのネットワーク環境でも産業用ネットワークスイッチで集約することでデータ収集と連携を容易に実現することが可能だということである。

 これにより製造現場で運用しているネットワーク全体をシンプル化し、運用管理コストの削減、障害やセキュリティに対する堅牢性向上、全体を可視化した一元管理などを実現することができる。「まずは既存の設備と技術を活用し、カメラ映像をリモートから監視できるようにしたり、各装置を回って紙の台帳に実績値を記録する日報業務を削減したり、身近な業務を効率化します。その効果を検証しながら、次世代のIoTインフラやプラットフォームを目指していけるのです」と西村氏は語る。

photo 産業用スイッチを中心にネットワークを集約(クリックで拡大)出典:シスコシステムズ

マネージドスイッチとアンマネージドスイッチの利点を融合

 こうした工場ネットワークのシンプルな統合を支える「Cisco Factory IoT Network」用のスイッチとしてシスコシステムズが提供しているのが「Cisco Catalyst Industrial Ethernet シリーズ(以下、IEスイッチ)」である。

 産業用ネットワークスイッチは、大きく「マネージドスイッチ」と「アンマネージドスイッチ」に分けられる。前者はループ検知やガードやセキュリティ、複数のスイッチに対する統合管理、可視化管理ツールの利用、ネットワーク分割(VLAN)、通信優先制御(QoS)、故障診断など、高度な管理機能を搭載したスイッチである。後者はマネージドスイッチのような機能は備えないものの、安価で簡易に設定できるのがメリットだ。

photo マネージドスイッチとアンマネージドスイッチの違い(クリックで拡大)出典:シスコシステムズ

 「IEスイッチ」はセキュリティ面も対応する。例えば「機器の認証、アクセス制御(802.1X認証、MAC認証、ACL)」は、各ポートに正しい機器が接続されているかどうか判別し、正しく認証されない場合は通信を遮断する。また、使用していないポートを無効化することで、不正接続によるマルウェア感染や盗聴を防ぐことができる。さらに「ネットワークの論理的分離(VLAN、セグメンテーション)」により、同じネットワークにつながっている機器同士でも通信できないように設定することも可能である。マルウェアが侵入した場合の拡散防止に効果を発揮する。

 その他IEスイッチで特筆しておきたいのが「製造現場のフラストレーションを解消したいと考えた」という、より身近で便利な機能の数々だ。「ケーブル抜脱検知」がその代表例だ。IEスイッチからケーブルを抜いた時点でアラートを出し、スイッチや機器への不正な接続を通知する。「製造現場では悪気はなくても、点検や清掃の際についうっかり機器からケーブルを抜いてしまうことが意外にあるものです。そんなケアレスミスにすぐに対処できます」と下山氏は語る。

 また、「ポートミラーリング」は、任意のポートの送受信トラフィックを、物理接続の変更を行うことなく別のポートにコピーする機能だ。「製造装置に何らかの異常が起こってメーカーに問い合わせたとき、『通信状況を解析してみないと原因が分からないので、パケットデータをキャプチャーしてこちらに送ってください』と指示される場合があります。結局、装置を止められるタイミングでしかデータを取得できず、原因追求や対処はどんどん遅れてしまいます。ポートミラーリングを使えば装置を止めずに、すなわち生産活動に影響を与えることなく、任意のポートからデータを取得できます」と下山氏は、この機能を有効利用するメリットを説く。

 そもそもコントローラー間ネットワーク、センサーデータ収集用ネットワーク、標準イーサネットといった、ばらばらに運用されてきたネットワークのデータを集約可能とすること自体に大きなメリットがある。「工場内の各種ネットワークが統合されていく流れはシスコのIEスイッチに既に実装されているTSN技術などにより加速していくことが予想されます。この技術を実装した統合ネットワークは、全ての装置のタイムスタンプを同期し、正確にシンクロさせた制御を行うことが可能となります。また、同じタイミングで各装置から取得したデータを複合的に分析し、その結果を反映することで製造工程全体を最適化するなど、工場のスマート化に向けた取り組みを一気に進めることができます」と西村氏は訴求する。

photo シスコシステムズのCatalyst IEスイッチのポートフォリオ(クリックで拡大)出典:シスコシステムズ

 また、IEスイッチの中でもIE1000は、マネージドスイッチの管理性とアンマネージドスイッチの簡単さを“いいところ取り”し、過酷な環境での使用を想定して設計されたコンパクトなネットワークスイッチである。製造現場の運用者がITに精通していないことを前提としているのも大きな特徴で、電源を入れればすぐに使え、かつ、セキュリティが必要な場合は直感的なGUI(Graphical User Interface)ベースで設定を行える他、接続された機器の異常を積層信号灯に通知する仕組みも搭載している。

photo コンパクトスイッチ「IE1000」の特徴(クリックで拡大)出典:シスコシステムズ

実導入が倍のペースで増加

 IEスイッチは10年以上前に販売開始され、既に国内で数千台導入実績があり好調な伸びを見せているという。「出荷台数は毎年倍に近いペースで拡大を続けています。日本市場の成長はグローバルでも突出しています」と西村氏は手応えについて語る。

 そして、このどちらにも共通しているのが、実プロジェクトでの導入が大半を占めていることである。もちろん、全ての製造現場がスマートファクトリーの実現をゴールに見据えているわけではなく、製造工程の改善による作業者の働き方改革や人手不足の解消など、目指すレベルはさまざまだ。それでも工場ネットワークの集約、統合こそが課題解決の鍵を握るという点で、同じアプローチを見定めているのが興味深い。そうした中でIEスイッチは、ますます注目されていくことになりそうだ。

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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年5月16日