「現場」「完璧」「集団」主義が示す日本のモノづくり力モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

インターモールド2019(2019年4月17日〜20日、東京ビッグサイト青海展示棟)の基調講演に、住友電気工業 副社長 生産技術本部長で自動車事業本部長の西田光男氏が登壇。「日本のモノづくり 〜世界に誇る強い現場づくり〜」をテーマに同社のワイヤハーネスでの生産革新の事例などを含めて説明した。

» 2019年05月24日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 インターモールド2019(2019年4月17日〜20日、東京ビッグサイト青海展示棟)の基調講演に、住友電気工業 副社長 生産技術本部長で自動車事業本部長の西田光男氏が登壇。「日本のモノづくり 〜世界に誇る強い現場づくり〜」をテーマに同社のワイヤハーネスでの生産革新の事例などを含めて説明した。

現場主義、完璧主義、集団主義の強み

photo 住友電気工業 副社長の西田光男氏

 西田氏によるとワイヤハーネス(自動車用組み電線)事業のグローバル展開において、強い現場をベースとした「日本のモノづくり」力が大きな役割を果しているという。「日本のモノづくりの特徴は、大きく分けて、現地・現物に代表される『現場主義』、いかなる状況でも手を抜かない『完璧主義』、チームプレーを大事にする『集団主義』である。また、これらの主義に基づく具体的な手段として『自働化(トヨタ生産方式の主要コンセプト)』『TQC』『改善』などがある」と西田氏は語る。

 住友電気工業の主力製品であるワイヤハーネスは、自動車の車内配線などに用いられる製品だ。小型車1台当たりでも自動車の中には約1000回路が存在しこれらを結ぶ必要がある。電動化や情報化などが進む中で、これらの配線は増える一方である。これらの配線の種類としては、情報系と電源系が約半分を占めている。

 自動車内で使われる数が増えているにもかかわらず、ワイヤハーネスの製造は自動化が進んでいない。ケーブルの引き回しなどはロボットなどでもまだまだ難しく、人手に頼らざるを得ない状況がある。そのため、まだ労働集約型の製造方法を取っている。住友電気工業の生産拠点は世界32カ国で100社、120工場があり、30万人が製造に携わっているという。

 製造現場で「モノをつくる」ということは「日本人にとっての世界に誇るものだ」と西田氏は語る。そのベースには「現場主義」「完璧主義」「集団主義」がある。

 西田氏は「現場主義は事実を体験するものであり、強い現場の原点となる」とし、「強い現場」を「主体性をもって『確かなる実行』ができる現場」と定義した。自発的にルールを順守し、維持と改善を行い、それらをクイックレスポンス(速く動く)により実現していくことが重要だとする。強い現場が必要な理由は「ユーザーに支持されることがメーカーとしての原点でありその信頼を勝ち取れること」「強い現場でないと人材が育たないこと」などを挙げている。

 完璧主義については「手を抜かない文化」(西田氏)と定義する。「合理的な考えである『QC(品質管理)』よりも手を抜かずに品質第一を目指す『ZD(Zero Defects)運動』を重要視する日本独特の文化だ」と西田氏は語る。

 集団主義は「最も日本的なチームプレーを重視する考えだ」(西田氏)。「『乏しきを憂えず、等しからずを憂う』という言葉に表されるように、社員も大事なステークホルダーと見ることが大切で、日常的にさまざまなことを他の社員に『教える』という活動も、集団主義の根源となる」と西田氏は考えを述べている。

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