特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

自動車部品製造業が「見える化」システムを開発しITベンダーになるまでMONOist IoT Forum 大阪2019(後編)(1/3 ページ)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年1月22日、大阪市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。後編ではi Smart Technologies CEOの木村哲也氏の講演「1時間で始まるスマートファクトリー」とその他のセッションの内容をお伝えする。

» 2019年05月30日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年1月22日、大阪市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。

 これまで前編ではパナソニック 専務執行役員 CTOの宮部義幸氏の基調講演、中編ではOKIデータ 技術開発本部要素技術センター チームリーダーの谷川兼一氏および同社生産統括本部 LED統括工場 生産技術部 第2チームチームリーダーの新井保明氏の特別講演をお伝えしてきたが、後編ではi Smart Technologies CEOの木村哲也氏の講演「1時間で始まるスマートファクトリー」とその他のセッションの内容をお伝えする。

≫MONOist IoT Forumの過去の記事

「大手ベンダーのスマートファクトリー製品は高過ぎる」

 中小、中堅企業向けのスマートファクトリー関連製品を展開するi Smart Technologiesだが、母体は愛知県で自動車部品を製造する中堅製造業である。もともとは旭鉄工として自社内の工場の改善を行うのに、IoT(モノのインターネット)を活用したシステムを自社開発し、それで大きな成果を得られたことから「自社以外にも役立てられるのではないか」(木村氏)と考え、スマートファクトリーソリューションを展開する独自会社として、i Smart Technologiesを設立した。

photo i Smart Technologies CEOの木村哲也氏

 木村氏は「自動車部品の製造で考えると非常に多くのライバルが存在する。これらに対し、競争で勝つためには早く変化していくことが必要で、より早いサイクルで改善を進めていかなければならない。一方で、根本的な考え方として機械にできるようなことは機械に任せ、人にはより付加価値の高い仕事をやってもらいたいという思いがある。これらの考えでIoTにも取り組んだのだが、実際に使おうとすると市場に既にあった製品はほとんどが中堅製造業にとっては使いにくいものばかりだった」と語る。

 スマートファクトリーなど工場でのIoT活用を進める製品やソリューションは、当時からさまざまなものが存在したが「既に存在していたITベンダーなどが展開するソリューションは大掛かりで高いものばかりだった。さらに工場内で数多く存在するネットワーク接続も難しい既設の古い設備などを考慮されたものがなく、展示会などで華やかに見えても実際にはデータが取得できないなど、われわれが求めるものではなかった」と木村氏は当時の状況を振り返る。

 そこで自社で独自で作ることを考えたという。「改善活動は現状把握、検討、改善という順番で進めるが、この現状把握が非常に大変だった。従来は生産個数や停止時間、サイクルタイムなどもほとんどが人手で計測していた。これらの計測をまずは自動化できないかと考えた」と木村氏は述べる。

 そこでまず秋葉原の電気街で光センサーとリードスイッチを購入し、光センサーを機械の積層信号灯に両面テープで貼り付ける。そして積層信号灯の点灯状況から機械の稼働状況を把握する仕組みを開発した。これと送信機を組み合わせ、送信機から工場内の受信機にまず情報を集められるようにした。さらにこの受信機がIoTゲートウェイのような役割を果たし、クラウドに情報を上げてスマートフォン端末などさまざまなモバイルデバイスで設備の稼働情報を確認できるようにした。

 「これらの仕組みを考えた場合、普通はPLCなどを購入するケースが多いが、高かったのでやめた。何とか安くできないかと思い、秋葉原で38種類のセンサーを買っていろいろ試したが最終的に光センサーとリードスイッチだけで何とかなることが分かった。この仕組みによって、現状把握に無駄な労力を割く必要がなくなり、すぐに改善内容の検討や対策に充てられるようになった。従来比2倍以上のスピードで改善サイクルが回せるようになった」と木村氏は効果について語る。

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