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» 2019年06月13日 09時30分 公開

IoTのイノベーションは問題解決から(11):IoTによる問題解決、求められるのは想像する力【前編】

今回は、前回IoT活用の可否を検討した「個別の状況に合わせた天気予報にするには」のソリューションについて、近未来についての想像力を働かせながら再度検討を行います。

[馬場秀樹(株式会社VSN),MONOist]

⇒連載「IoTのイノベーションは問題解決から」バックナンバー

 前回は、「個別の状況に合わせた天気予報にするには(細かなエリアでの天気予測をするには)」に対して考案された全てのソリューションに対し、IoT(モノのインターネット)で実現させることができるか検証してみました。そして、技術は加速的に進化しており、今ある技術だけで新しいサービスや製品を考えて開発していると、それらが完成するころには陳腐化してしまっていることがあり得るともお伝えしました。

 例えば10年のうちに、記憶媒体においてはハードのサイズが同じでも蓄積可能なデータ量は1000倍以上になり、手動操作だった市販のドローンも自動操縦が珍しくなくなりました。こういった技術進化を踏まえて考えると、IoTでは実現できないと判断していたソリューションも、実現できていた可能性があったのではないでしょうか。

 ここで大切なことは近未来に対する想像力です。なんだか難しそうだと思った方も、「この5年、10年で進化してきたものは、これから数年後にはどこまで進化しているだろう」という問いかけからイメージを膨らましてみましょう。

 進化とはつまり、より便利になると考えても差し支えないので、「ナノ技術でさらなる小型化」「コンピュータの高性能化」「ドローンは用途に合わせたサイズ変更が可能」になったら便利そうだ、といったあたりでもいいのです。さらにそれらを組み合わせると面白いですよ。私は「ドローンはナノ技術で超小型化できる」「ドローンのコンピュータが高性能化すればAIによる自律行動ができる」といったアイデアを生むことができました。

 では一緒に、前回のソリューションについて、再度、想像力を働かせながら考えてみましょう。

「個別の状況に合わせた天気予報にするには?」についての前回の検討結果 「個別の状況に合わせた天気予報にするには?」についての前回の検討結果(クリックで拡大)

天気予報の情報を取得する間隔を短く、また、取得エリアも細分化できるようにする

「各地における現在の天気情報を取得し、近隣エリアに対して、直前の天気を予測できるようにする」をIoTで実現するには?

 前回考えた結果、IoTでの実現は×でした。理由は、口コミ情報サイトを作れば解決できそうだから。

 しかし、口コミサイトは任意の書き込みとなるため情報にムラが発生してしまうので、もし各地の天気を瞬時に判別し、正しい情報をあっ信うるためのセンサーとソフトウェアが開発されればIoTで効果的なソリューションが実現できそうです。よって今回は〇。

(天気の変化の前触れ情報から各地の天気を予測する)
「湿度の変化から各地の天気を予測する」をIoTで実現するには?
「気圧の変化から直前の天気を予測する」をIoTで実現するには?

 前回考えた結果、IoTでの実現は△でした。理由は、さまざまな場所に温度や気圧のセンサーを設置するにはコストがかかるからです。

 しかし、いずれさまざまなIoTソリューションが普及すると、必然的にクルマや住宅などにセンサーが取り付けられてくるでしょう。そしてそのセンサーも単体ではなく、音や温度、匂いや明るさなど、多機能になってくるのではないでしょうか。実際、今のスマートフォンには、ジャイロスコープ、GPS、気圧計、周囲光センサーなど、多くのセンサーが搭載されています。そのセンサー網が広がれば、わざわざ天気予報専用にセンサーを設置する必要もなくなります。

 そうなればコストの問題は解消されるので、IoTでの実現は可能になりますね。なので今回は○。

「雨雲の変化から各地の天気を予測する」をIoTで実現するには?

 前回考えた結果、IoTでの実現は〇でした。理由は魚眼カメラの設置で実現できそうだから。

 例えばドローンが頻繁に配達などで飛び回るような世の中になれば、それだけでデータを得られるようになりそうです。既にドローンに搭載されている各種センサーに加えて、より安全面を考慮した多様なセンサーが加わると思われます。空がドローンで埋め尽くされている景色はちょっと怖いですが、雨雲の変化をより正確に捉えることができそうですね。今回は◎にしましょう。

「予測したいエリアの上空で天気が変化した瞬間に、地上の天気を予測する」をIoTで実現するには?

 前回考えた結果、IoTでの実現は〇でした。理由は魚眼カメラを用いて画像認識でできそうだから。

 技術進化で画像認識の精度は上がるでしょうし、前回は断念した「一定エリアごとの上空に湿度や雨量を測る各種センサーを滞在させる」ことも、現在開発中の無人空中基地局や超小型ドローンなどで実現できるかもしれませんね。今回は◎。

「天気予報の情報を取得する間隔を短く、また、取得エリアも細分化できるようにする」の新たな検討結果 「天気予報の情報を取得する間隔を短く、また、取得エリアも細分化できるようにする」の新たな検討結果(クリックで拡大)

気象予報のコンピュータを高性能化し、より細かな予測ができるようにする

「気象庁のスーパーコンピュータを高性能のものにする」をIoTで実現するには?
「現在よりも、さらに優秀な、他で使っているコンピュータを使用する」をIoTで実現するには?
「グリッド・コンピューティングを活用し、多くの民間コンピュータに協力させる」をIoTで実現するには?

 前回考えた結果、IoTでの実現は×でした。理由はコンピュータの高性能化というソリューション自体がIoTではないから。

 コンピュータ強化のソリューションはIoTとは別のお話なので、今回も×ですね。

「気象予報のコンピュータを高性能化し、より細かな予測ができるようにする」の新たな検討結果 「気象予報のコンピュータを高性能化し、より細かな予測ができるようにする」の新たな検討結果(クリックで拡大)

 いかがでしょうか。今ある技術が少し進化した時にはさまざまなことが可能になることが分かりますね。しかも、昨今の技術進化は加速度的に進んでいるのでわれわれが思っている以上に早く実現できるかもしれません。

 今回はここまでにして、残りは次回に。皆さんも想像力をフル稼働させて最後の項目である「天気予報の材料となる情報の品質を向上する」について考えてみてください。

天気予報の材料となる情報の品質を向上する
①天気予報に使用する情報源の数を圧倒的に増やす」をIoTで実現するには?
②現在のセンサーの品質を上げて情報の精度を向上する」をIoTで実現するには?
③天気予報に使用する情報の種類を広げる」をIoTで実現するには?

筆者プロフィール

株式会社VSN 馬場 秀樹

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2000年にVSNに入社。インフラエンジニアとしていくつものプロジェクトに参画。VSNの“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」の構想メンバーであり、一流コンサルタントより問題解決手法の教示を受け、多くの問題解決事案に携わる。派遣会社でありながら、担当した事案には、数億円規模の売り上げ向上につながった例も。

現在は、同社「経営イノベーション本部」にて今後の事業の根幹を担うVIをさらに加速させるべく、事業計画の立案や浸透・推進を行う。

株式会社VSN https://www.vsn.co.jp/


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