オープンソースのプロセッサIP「SweRV Core」、性能や開発環境が拡充組み込み開発ニュース

Western Digital(ウエスタンデジタル/WD)は2019年6月18日(現地時間)、同社が開発を主導するオープンソースプロセッサIP(Intellectual Property)「SweRV Core」について性能強化や開発環境の拡充などを発表した。

» 2019年06月24日 07時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 Western Digital(ウエスタンデジタル/WD)は2019年6月18日(現地時間)、同社が開発を主導するオープンソースプロセッサIP(Intellectual Property)「SweRV Core」について性能強化や開発環境の拡充などを発表した。同IPのRTL(Register Transfer Level)はGitHubのリポジトリからダウンロードできる。

 同プロセッサはISA(命令セットアーキテクチャ)にオープンソースの「RISC-V(リスクファイブ)」を採用する。WDはRISC-Vを活用したプロセッサ開発を進めており、ストレージコントローラーや機械学習など特定用途向けプロセッサへの応用を目指している。

SweRV Coreの概要(クリックで拡大) 出典:Western Digital

性能向上、デバッグ強化を図ったSweRV Core 1.1

 SweRV Coreは9ステージのパイプラインを持つインオーダー実行型スーパースカラプロセッサ。32ビットの「RV32IMC」をサポートし、WDの予測性能では28nmプロセスのCMOSロジック上で最大1.8GHzでの動作を可能としている。組み込み向けベンチマークテストの作成を手掛ける業界団体であるEEMBC(Embedded Microprocessor Benchmark Consortium)が開発するCPUコアベンチマーク「CoreMark」のスコアでは、最大5.0CoreMarks/MHzに達するという。

 今回のアップデートでSweRV Coreはバージョン1.1となった。機能強化のポイントは以下の通りとなる。

  1. RISC-V互換性の向上
    • シングルステップのデバッグ時、複数命令が実行されないようにした
  2. パフォーマンスの改善
    • 命令フェッチユニットのメモリアクセス性能を向上
    • 除算命令のパフォーマンス改善
    • I/Oタイミング制御を改善
  3. メモリ保護機能(memory protection windows)の追加
  4. その他
    • 誤り訂正の改善

 また、WDは同社が開発するオープンネットワークプロトコル「OmniXtend」が、Barefoot NetworkのP4プログラマブルイーサネットスイッチASIC「Tofino」に対応したと発表した。OmniXtendはマルチソケットRISC-Vシステムやヘテロジニアスアーキテクチャシステムでキャッシュコヒーレンシを解決する技術。コヒーレンシメッセージをイーサネットで交換することが特徴だ。

 今回の対応により、「CPUやGPU、機械学習アクセラレータ、FPGAといった異なるアーキテクチャ間でも、イーサネットスイッチを介して単一のメモリプールを共有できる」(WD)としている。

OmniXtendのアーキテクチャ(クリックで拡大) 出典:Western Digital

SiFiveとの提携でPlatformIO Plusが無償で利用可能に

 さらに、WDはRISC-Vチップを手掛けるファブレス半導体メーカーのSiFiveと提携し、IoT(モノのインターネット)デバイスやマイコンの統合開発環境を提供するPlatformIO Labsと戦略的パートナーシップを結んだと発表した。

 このパートナーシップ締結により、RISC-Vやその他のアーキテクチャの開発に携わるプログラマーに対して、これまで有償だった「PIO Plus Unified Debugger」や「PIO Uniting Testing Engine」などを無償で提供する。今回の提携により、PlatformIOは「RISC-Vエコシステムなどエンドツーエンドの組み込みテクノロジー設計に向けた完全にオープンソースの支援環境となる」(WD)としている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.