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» 2019年06月25日 10時00分 公開

“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法(2):3次元のメリットを最大限に引き出すために必要なこと (1/2)

“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。今回は「3次元のメリットを最大限に引き出すために必要なこと」について取り上げます。

[小原照記/いわてデジタルエンジニア育成センター,MONOist]

 前回は、脱2次元できない、3次元化が進まない現場から聞こえる“3つの「ない」”について取り上げました。3つの「ない」とは、

  1. 人がいない
  2. お金がない
  3. 分からない

でしたね。今回は「3.分からない」の部分にフォーカスし、3次元のメリットを最大限に引き出すために必要なことについて解説します。

3D CADでモデリングするメリット

 筆者は日々さまざまな企業を訪問しているのですが、脱2次元できない現場の多くの人が、3D CADのメリットをきちんと理解できていないように感じます。単純に「3D CADは、立体図を作成するためのソフトウェア」とだけ認識している人が意外にも多いのです。

 そこで今回は、「設計」「加工」「生産」「検査」の4つの工程それぞれにおける“3次元のメリット”を説明していきます。

「設計」における3次元のメリット

 まず、設計における3次元のメリットですが、設計者が作りたい製品を3次元で表すことにより、誰でも簡単にその形状を把握できる点が挙げられます。2次元図面では、さまざまな線が重なり、正面から見た形状、横から見た形状、上から見た形状などを照らし合わせて、自分の頭の中で製品イメージを想像する必要があります。

画像はイメージです 画像はイメージです

 3次元でモデリングすることで、2次元の情報から形状をイメージする必要がなくなり、皆が同じ形状を認識して設計作業を進められます。作成した3Dデータは、ボタン1つで体積や表面積を表示できます。また、材料を指定することで質量や重心を求めることも可能です。質量が分かると軽量化の検討に役立ちますし、重心が分かると機構設計や治具設計に役立ちます。さらに、3次元でモデリングした部品を組み付けることで、干渉や機構の確認が行え、組み立てや分解のシミュレーションも行えます。

 作成した3DデータをCAEソフトに持っていき、強度の検証や熱、磁場、流体などのさまざまな解析を行うことで、不具合を事前に検証することも可能です。最近は、3D CADソフトの中にCAE機能が搭載されているものも多く、データ変換することなく、シームレスにCAEとCADの環境を行き来できます。

 このように、CADやCAEを用いることで多くの検証が行えるわけですが、実際に持った感触やスケール感など、実物で確認したいという場合には、3Dプリンタを使うことで3Dデータをそのままの形状で造形できます。3Dプリンタの材料は樹脂から金属まで、多くの種類が存在します。

 また、製品の3Dデータを活用して金型設計、治具設計も行えますし、生産設備や工場のレイアウトなどを3次元で検討することも可能です。

 設計を3次元で行うことにより、その製品の理解が深まり、関係者同士のコミュニケーションが促進され、品質の向上へとつながります。

「加工」における3次元のメリット

画像はイメージです 画像はイメージです

 次に、加工における3次元のメリットです。3D CADで3Dデータを作成しデザイン、干渉、質量などの確認をして、CAEで強度などの検証を行い、3Dプリンタでの試作を終え、いよいよ加工となったら、3Dデータをそのまま利用して、CAMに取り込み、加工プログラム(NCデータ)を作成できます。

 工具や回転数、送り速度などの加工条件を入力することで、3Dデータの形状を認識し、自動でツールパス(加工経路)を作成してくれます。加工用に図面が必要な場合も、3D CADで簡単にモデルを投影し寸法を付加したり、断面を作成したりできます。また、加工するための治具を3Dプリンタで製作したり、加工治具の設計検討のために一度、製品を3Dプリントしたりといった活用も考えられます。

「生産」における3次元のメリット

 3つ目の工程、生産における3次元のメリットですが、必要な治具の設計も3Dデータを活用することで検討しやすくなります。また、組み立てのシミュレーションを3次元で行うことで、ドライバーが入らない、治具が入らないといった不具合を未然に防ぐことができ、作業性の優れた設計を検討できます。

 最近は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を用いて、よりリアルにシミュレーションを行うことが可能となっています。現場で組み立てる作業者への指示も3次元で行うことで、間違いなくスムーズに伝達できます。他にも、生産するための治具を3Dプリントするといった活用も考えられます。

「検査」における3次元のメリット

 そして、検査における3次元のメリットです。実は、部品や製品などが完成した後の検査工程でも3次元の威力は発揮されます。出来上がったものを3Dスキャンして、設計した3Dデータと重ね合わせて、カラーマップで形状の確認が行えます。へこんでいる箇所、プラスにできている箇所を色で確認できるのです。

 また、検査作業者に対しての説明資料としても3Dデータが役立ち、形状把握や検査ポイントの理解の助けとなります。その他、検査治具などを3Dプリントするという活用も考えられます。

 設計〜検査における3次元のメリットを紹介しましたが、これ以外のシーンでも利点があります。例えば、リバースエンジニアリングです。図面が存在しない製品の現物を3Dスキャンして3Dデータを起こしたり、スペアパーツや金型のデータベース化などに役立てられたりしています。他にも、営業担当が3Dデータや3Dプリント品などをうまく活用することで、顧客とのスムーズなコミュニケーションが促進され、受注拡大につなげることも可能です。

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