デジタルツインを実現するCAEの真価
連載
» 2019年06月28日 10時00分 公開

ママさん設計者が教える「設計者CAE超入門」(3):CAE普及のためには設計と現場の“両輪”で3D推進を急ぐべし! (1/3)

かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第3回は、設計も現場も1つになって、「総知総力」を挙げたモノづくりを実現するためのヒントを提示する。

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]

 前回までの内容で、2次元CAD信仰から脱し切れなかった筆者が「設計者CAE」に触れたことで、回り道をしながらも3次元化の“真のメリット”に気付くことができた経緯を紹介しました。

 筆者のように3次元化の利点を実感してみたいという方は、クラウドベースで手軽に利用できるオートデスクの3次元統合ソリューション「Fusion 360」のCAE機能を試してみるとよいでしょう。試しに、現在仕掛かり中の設計や過去の設計を題材にして、「なぜこうなるのか」「こう変えたらどうなるのか」を検討しつつ、いろいろと解析を反復しながら設計者CAEの感覚をつかんでみてください。

客観的データではなく、スゴ技職人に頼り切った現場……

 筆者は日頃、

もはや3D CADは設計者だけのものではありませんよ。現場でこそ使うべきなんです!

と啓蒙(けいもう)しています。その活動の中で感じるのが、3D CAD、CAM、CAEの受け入れられ方の差です。3D CADやCAMは、生産に直結するツールであることから比較的すんなりと受け入れてもらえるのですが、CAEに関しては現場にとってのメリットが分かりづらいためそうもいきません。

 実際、

メーカー側の設計者がCAEを使うメリットは分かった。でもうちは部品加工屋だから、出された図面の通りに作って納めることが仕事。そもそも設計の責任はメーカー側にある。万一、指示通りに作って合格した部品に、実は何らかの設計上の瑕疵(かし)があって、それが元でトラブルが発生しても、その損害をうちが直接補償することはないだろうからね。だからCAEは使い道ないよ

という声も聞こえてきます。この意見はある意味、正論です。

 本来、部品加工に関わるということは、その“製品製造の一部を担っている”ということです。ですが、支給される図面や仕様書は「聖域」とでもいいますか、下請け側の判断だけでその内容を変えて加工することはできません。

 時として、

  • これはアンダー形状だらけでどう転んでも金属積層造形以外の方法では無理!
  • これじゃあ、ホルダーが干渉して機械加工できない
  • こんなに細くて長い止まり穴の加工をどうしろと……

などの“加工屋泣かせ”のCADデータや図面が来ようとも、何とか知恵を絞って工夫し、指示通りの部品を作ってしまう「スゴ技職人」も多くいます。

 これは別に「根性」や「腕前」を見せたくてそうしているわけではなく、“現場”という所では何よりも「指示に忠実にモノを作ること」が優先されるからです。ですから、加工検討段階でこうした問題が見えているのであれば、その解決と指示の順守を両立させようと試行錯誤するのです。

 ですが、このとき問題として認識すべきは、客観的データではなく、特定の技能者(スゴ技職人)の経験や勘、技術に頼っているという点です。「さすが○○さん!! すげー!」ではなく、問題の根本的な解決策を現場の誰もが見いだせる仕組みを作っておかないと、その技能者がいなくなった途端に業務が回らなくなってしまいます。

 実は、こうした現場は少なくありません。何となく心当たりのある方も多いのではないでしょうか。以降、この辺りの課題感を含めつつお話を進めていきます。

“加工屋泣かせ”の図面はなぜ生まれるのか?

 まず“加工屋泣かせ”の図面ができてしまう主な理由について整理すると、

  1. 当該部品の周辺スペースの問題から、どうしても無理のある形状になってしまう
  2. 加工方法を考慮せず、CADとの対面だけで部品形状を描いてしまう

が挙げられます。

 1.については、ある程度やむを得ないとしても、2.の場合は、設計者が机上だけでなく、実際の現場を通してさまざまな加工知識を吸収していくことで改善できるはずです。しかし、実際のところ多くの設計者が「絵を渡せば後は現場が全部やってくれる」と信じているため、小まめに現場に足を運ぶことはしません。

 では、どうしたらよいのでしょうか。その助けとなるのが、3D CADと設計者CAEの活用です。これらを現場でも使用するのです。そうすることで、例えば「形状を変更した方が耐久性の向上が図れるぞ」といった現場からの提案を、データを使って(客観的なデータに基づいて)視覚的に設計へフィードバックできるのです。

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