設立5周年を迎えたVAIO、顧客のロボット開発を支援する新ハードを発表ロボット開発ニュース

VAIOは2019年7月9日、東京都内で「設立5周年記念新製品発表会」を開催し、ノートPCの新製品を披露するとともに、EMS(電子機器受託生産サービス)事業の強化に向けて「ロボット汎用プラットフォーム」のラインアップを拡充することを明らかにした。

» 2019年07月10日 07時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 VAIOは2019年7月9日、東京都内で「設立5周年記念新製品発表会」を開催し、EMS(電子機器受託生産サービス)事業の強化に向けて「ロボット汎用プラットフォーム」のラインアップを拡充することを明らかにした。同プラットフォームを用いて、VAIOブランドで初となるコミュニケーションロボット「おはなしコウペンちゃん(仮称)」を製品化する。

設立5周年記念新製品発表会に出席したVAIO社長の吉田秀俊氏(左)とDomani専属モデルの望月芹名さん。手にはノートPC新製品の「VAIO SX12」を持つ

事業形態の転換に成功したVAIO、2018年度は40%の増益を果たす

 VAIOは2014年7月1日にSONYから独立、2019年7月で設立5周年を迎えた。同イベントの代表あいさつに登壇したVAIO社長の吉田秀俊氏は、独立当初に「不安と葛藤、そして1つの期待」があったと当時を振り返る。この思いを込めた設立当初のブランドメッセージが「自由だ。変えよう。VAIO」だった。

 設立から5年間の間、同社が事業を継続できたのはひとえに「あらゆるステークホルダーがVAIOを信じてくれた結果だ」と吉田氏は述べ、ブランドメッセージを新たに「信じてくれる人と、VAIO」へと刷新した。この5年間でVAIOの事業構造も大きく変化しており、主力のPC事業では設立当初B2C向けが出荷数量の90%以上を占めていたのに対し、現在では法人向けが70%を超える。また、B2C領域においてもCore i7や4Kディスプレイ搭載モデルなど高付加価値な製品が売れており、グローバル市場への再参入も進めていることを示した。

 同社の業績も順調に推移しており、決算確定前の数値ではあるが2018年度では前期比約6%の増収と約40%の増益を果たした。働き方改革を追い風とした法人向けPCの拡販が進んだことや、新製品投入による商品単価上昇、生産性改善と調達費用削減による原価改善などが貢献した。吉田氏は「われわれのスタートはこれからである。次の5年へ向けて新たな成長のフェーズに押し上げていきたい」と決意を示した。

VAIOの業績推移(クリックで拡大) 出典:VAIO

ロボット汎用プラットフォームが進化、自社ブランド初のロボットも

 同イベントでは、ノートPCの新製品に加えて、同社EMS事業の中核を担う「ロボット汎用プラットフォーム」の新ハードウェアを発表した。

 ロボット汎用プラットフォームはコミュニケーションロボットの効率的な開発を支援する一気通貫型のサービス。ロボットの筐体開発から組み込みボードの回路設計といったハードウェア面からスマートフォンアプリの開発、音声認識や課金、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)といったクラウドサービスの構築、ユーザーサポートの運営などをまとめて受託できることがメリットだ。同サービスは、音声認識や音声合成などの領域に長けた企業から成る「VAIOテクニカルパートナー」とのアライアンスによって実現している。

ロボット専用プラットフォームの概要(クリックで拡大) 出典:VAIO

 ロボット汎用プラットフォームでは、これまでコミュニケーションロボット開発に必要な機能を搭載した組み込みボード「Middle」を提供している。今回、新たに「Simple」「Mini」の2タイプのハードウェアが発表され、ロボット汎用プラットフォームのハードウェアラインアップは3製品がそろうこととなった。MiddleはCPUに「Cortex-A53」を用いており、高度な機能やカスタマイズにも対応するが、筐体設計などある程度の開発期間やコストを必要としていた。

 今回発表したSimpleはCPUに「Cortex-A7」を採用し、Wi-FiやBluetoothといった無線機能、DSP、マイク、スピーカーをバッテリーと1パッケージの筐体で提供する。これにより、Middleと比較してハードウェアの設計工数をさらに削減することが可能だ。同社ではSimpleの想定ユースケースを対話型のコミュニケーションロボットとしており、同ハードウェア内でディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた音声合成エンジンを実行することで自然な発話を可能としている。バッテリーの最大稼働時間は「現時点では4〜5時間程度と想定している」(VAIO担当者)。

ロボット汎用プラットフォームのハードウェア「Mini」(左)と「Simple」(クリックで拡大)

 Miniは簡易な発話に対応するロボットの開発に向け、博報堂の協力を得て提供する製品となる。Simpleよりも提供機能を抑え、ハードウェアサイズと開発コストの最小化を狙った。CPUは非公開となるが、A2DPプロファイルのBluetooth接続に対応するため「スマートフォンと連動させてスマートフォン上で音声認識機能を実行すれば、一定の対話にも対応できる」(同氏)とする。これらのハードウェアの制御で必要なROS(Robot Operating System)についても、VAIOが独自に開発した専用フレームワークを提供する。

ロボット専用プラットフォームのハードウェア機能比較(クリックで拡大) 出典:VAIO
VAIOの児嶋信二氏

 VAIOは自社ブランド初のコミュニケーションロボット「おはなしコウペンちゃん(仮称)」を、ロボット汎用プラットフォームのSimpleを活用して、2019年内に製品化する。コウペンちゃんは“あらゆること”を肯定してくれる人気急上昇中のキャラクター。おはなしコウペンちゃん(仮称)では、あいさつや「いっぱいほめて」などの呼びかけに応える機能を持つ予定だ。

 EMS事業を担当する同社NB事業部NB設計部部長の児嶋信二氏は、「顧客が簡単に効率よくIoT(モノのインターネット)、ロボット製品の開発が実現できるよう、これからもEMS事業の拡大を目指す」と述べた。

おはなしコウペンちゃん(仮称)のデモ。製品版では全長20cm程度の大きさとなり、若干の小型化が予想される(クリックで拡大)

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