中小製造業に求められる自己変革――デジタル化とグローバル化による生産性向上2019年版中小企業白書を読み解く(2)(2/7 ページ)

» 2019年07月17日 11時00分 公開
[長島清香MONOist]

人口密度と労働生産性の関係

 次に、人口密度と労働生産性の関係を企業規模別(大企業、中小企業)、業種別(製造業、非製造業)に見ていきたい(図4、図5)。これを見ると、製造業、非製造業ともに中小企業の事業所では人口密度が高い地域ほど労働生産性が高く、逆に人口密度の低い地域における労働生産性が最も低い結果となっている。一方、大企業の事業所では人口密度の高さと労働生産性の高さには関係がないことが見て取れる。

photo 図4:可住地面積人口密度ランク別に見た、労働生産性の比較(製造業)(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019
photo 図5:可住地面積人口密度ランク別に見た、労働生産性の比較(非製造業)(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 これらを踏まえると、中小企業の事業所の労働生産性は、立地地域の人口密度との関係性が強いということが分かる。第1回で、人口減少が顕著な地域において中小企業の事業所数および中小企業の事業所に勤める従業者数の割合が高いことに触れたが、労働生産性という面からみても、厳しい状況にあることが確認できる。

日本企業の労働生産性はOECD加盟国の中でも低順位

 ここで、日本の労働生産性と労働生産性上昇率について、OECD諸国と比較してその水準を確認したい。労働生産性については、前年と変わらずOECD加盟諸国36か国中21位であり、首位となっているアイルランドのおよそ半分程度の水準である(図6)。また、労働生産性上昇率については36か国中29位と低い水準となっている。

photo 図6:OECD加盟諸国の労働生産性(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 ここまでを見ると、避け難い人手不足の状況下にあるにもかかわらず、中小企業の労働生産性は伸び悩んでおり、企業全体で見てもOECD加盟諸国の中で低い水準に位置している実態が分かる。全企業数の99.7%を占める中小企業の労働生産性を上げることは喫緊の課題といえるだろう。

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