「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

トヨタが考える東京五輪のラストワンマイルモビリティ、最高速度は時速19km電気自動車(1/2 ページ)

トヨタ自動車は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」をサポートするために開発した専用モビリティ「APM」を発表。高齢者や障害者、妊娠中の女性や幼児などの来場者が、競技会場のセキュリティゲートから観客席入り口までといった“ラストワンマイル”の移動を快適に行えるようにする車両として開発された。

» 2019年07月19日 07時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 トヨタ自動車は2019年7月19日、東京都内で会見を開き、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」をサポートするために開発した専用モビリティ「APM(Accessible People Mover)」を披露した。高齢者や障害者、妊娠中の女性や幼児などの来場者が、競技会場のセキュリティゲートから観客席入り口までといった“ラストワンマイル”の移動を快適に行えるようにする車両として開発された。大会期間中に約200台を投入して、競技会場、選手村などの大会施設内で来場者や大会関係者の移動をサポートすることを想定している。

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」専用モビリティ「APM」の外観 「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」専用モビリティ「APM」の外観(クリックで拡大)
「APM」のサイドビュー「APM」のリアビュー 「APM」のサイドビュー(左)とリアビュー(右)。フロントガラスを除き窓や扉はないオープン仕様になっている(クリックで拡大)

 APMの外形寸法は全長3940×全幅1620×全高2000mm。会場敷地内での短距離輸送に適した、低速型EV(電気自動車)だ。基本モデルは、3列シート構成で、1列目が運転席、2列目が3人掛け、3列目が2人掛けで定員は計6人。運転席は、シートポジションを高くするとともにセンターに配置しており、運転手が乗客を見渡して、乗り降りをサポートしやすい安全性に配慮した設計になっている。

 一般的な乗用車のような扉や窓はなく、車両の両サイドから乗客席に乗り込みやすい構造になっており、乗り降り用の補助バーも設置した。車載リチウムイオン電池を床下に搭載しつつ、乗降が容易なように低床のフラットフロアを実現。乗客席の開口高は1470mm、室内高は1620mmあり、十分な室内スペースを確保している。

「APM」の運転席「APM」の乗客席 「APM」の運転席(左)と乗客席(右)。運転席のシートポジションは高く、センターに配置されている。乗客席は低床のフラットフロアになっている(クリックで拡大)

 基本モデルは、車いすの乗降に対応するための仕組みも備えている。2列目シートは折り畳みが可能で、電池も組み込まれている床下には乗降用スロープを搭載している。広いフラットフロアにより車いすを切り返すことなく乗車でき、車いす固定用のベルトも装備している。車いす乗車する場合には、3列目シートに2人が乗車できる。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では約150台の基本モデルのAPMを用意する計画だ。

「APM」に車いすで乗車する様子。2列目シートを折り畳み、乗降用スロープを引き出して乗り込む。乗り込んだ後にベルトで固定している(クリックで再生)
「APM」に車いすで乗車した状態 「APM」に車いすで乗車した状態(クリックで拡大)

 APMは基本モデルの他に救護仕様も用意した。基本モデルをベースに、2列目、3列目の半面を空けて、車両後方からバスケットストレッチャーをそのまま搭載し、固定できる仕様にした。残り半面のシートに救護スタッフが2人乗ることができる。基本モデルは扉や窓がないこともありクーラーは装備していないが、救護仕様については熱中症対応などを想定して、要救護者の上半身を冷やせるスポットクーラーを設定している。救護仕様のAPMについては約50台を用意する計画である。

 APMは扉や窓がないため、雨天時にそのままの状態だと乗客の体がぬれてしまう可能性がある。その対策として、ピラー内に格納した雨天用カーテンを車両の両側に、車両後方はロールカーテンを展開できるようになっている。

雨天用カーテンとロールカーテンを展開した状態雨天用カーテンとロールカーテンを展開した状態 「APM」の雨天用カーテンとロールカーテンを展開した状態(クリックで拡大)
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