AIによりユーザーが使いたいコマンドを95%の確率で予測する「NX」最新版CADニュース

Siemens Digital Industries Softwareは、年次ユーザーカンファレンス「Realize LIVE Japan 2019」を開催。同イベントに伴って記者会見を開き、ハイエンド3D設計システムの最新版「NX2019」の機能強化ポイントについて説明した。

» 2019年07月22日 06時30分 公開
[小林由美MONOist]

 Siemens Digital Industries Software(以下、シーメンス)は、東京都内で年次ユーザーカンファレンス「Realize LIVE Japan 2019」(2019年7月10〜11日)を開催。同イベントに伴って記者会見を開き、シーメンス 製品エンジニアリング・ソフトウェア担当 シニア・バイスプレジデントのボブ・ハブロック氏がハイエンド3D設計システムの最新版「NX2019」の機能強化ポイントについて説明を行った。

コンティニュアス・リリースへの移行は良好

Siemens Digital Industries Software 製品エンジニアリング・ソフトウェア担当 シニア・バイスプレジデントのボブ・ハブロック氏 Siemens Digital Industries Software 製品エンジニアリング・ソフトウェア担当 シニア・バイスプレジデントのボブ・ハブロック氏

 NXは、2019年1月から従来の年次アップデートではなく、新機能や不具合修正を随時リリースしていく「コンティニュアス・リリース(継続的リリース)」の提供を開始している。新機能追加を中心とするメジャーアップグレードは半年ごとで、不具合修正などのマイナーアップグレードは毎月の実施となる。コンティニュアス・リリース対応後の製品名称は「NX2019」の通り年表記が採用され、「NX12」(2018年11月時点での最新版)のようなバージョン番号でのカウントは廃止された。

 コンティニュアス・リリースでは、新機能がすぐに使えるようになることと併せて、アップグレードコストの大幅な削減ができるとしている。2019年1月の対応以降、既に2万5000シートを達成したという。コンティニュアス・リリースについては、これまでも顧客からは前向きなフィードバックが多く、かつ同イベント会場においても良好な反応を得ているということだった。「当社の顧客であるDaimler(ダイムラー)のMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)においても、コンティニュアス・リリースに移行している」とハブロック氏は述べる。

自動的に必要な操作コマンドを提示してくれる「アダプティブUI」

 最新版のNX2019は、AI(人工知能)による機械学習を活用した新機能を実装していることが特長だ。その1つである「アダプティブUI」は、ユーザーの使用状況に応じて、自動的に必要な操作コマンドを提示する機能だ。「1週間程度、ユーザーの使用状況のデータを収集して学習させることで、約95%の精度でユーザーの使いたい機能を予測できるようになる」(ハブロック氏)。

 アダプティブUIはNXに限らず、全てのシーメンス製品に実装する計画。自動的にコマンド提示することで、おびただしい数の中から必要なコマンドを探し出す手間を省き、視線の無駄な動きを減らし、クリック回数も削減できることで、作業効率の大幅改善が見込めるとしている。

機械学習を利用した3D形状の自動生成機能

 さらに、NXの「ジェネレーティブエンジニアリング(Generative Engineering)」も機械学習を利用した機能の1つである。ジェネレーティブエンジニアリングは、設計者が任意で設定したパラメータに基づいて3D形状を自動生成する機能の一種である。従来の形状自動生成機能であるトポロジー最適化やジェネレーティブデザインよりも、さらに幅広いパラメータを包括し、電気/電子設計とも連携した自動設計が実現できるという。

ジェネレーティブエンジニアリングについて ジェネレーティブエンジニアリングについて

 「NXは、ファセットとソリッドが1つの環境で扱えて、CAE(解析)や製造に関するソフトウェアも備えていることから、独特で優位性のある形状自動生成機能の提供が可能だ」(ハブロック氏)。

 ジェネレーティブエンジニアリング関連として、コンバージェントモデル(ファセットデータとB-Repが混在したモデル)やファセットデータを扱いやすくするモーフメッシュの機能を実装した。また、2Dグラフィックスやテクスチャのデータをコンバージェントモデルのジオメトリとして活用できるようにした。

エレメカ協調設計を強化、相互運用性がさらに向上

 NX2019は、電気/電子設計とメカ設計との相互運用性を高めている。「Teamcenter」を介して、NX側の「Mechanic routing」や「Flexible PCB」といった基板設計系ツールと、シーメンス傘下のメンター・グラフィックスによるワイヤハーネス設計ツール「Mentor Capital」や「Mentor Xpedition」との連携が可能だ。Teamcenter以外のIDXワークフローに関する通知機能や、RF(無線周波数)設計サポートも強化した。自動盤における熱解析においては、PCBとESC(Electronic Speed Controller)のデータを連携できる。

エレメカ協調設計を強化 エレメカ協調設計を強化

 「今日の製品には機械だけではなく、電気やソフトの要素も多く含んでおり、将来の製品においてはそれらの要素がうまく組み合わさることが優位性となる。当社は多くの大学と協力し、工学部のカリキュラムにエレ、メカ、ソフトの連携設計の教育が組み込めるように取り組んでいる」(ハブロック氏)。

 その他、NXの注力分野の1つであるモデルベース定義(MBD:Model Based Definition)においては、設計、製造において、伝統的な2次元図面の依存を排除するとしている。これに関連し、技術データパッケージソリューションをNXに完全統合した。技術データパッケージのパブリッシングを容易にし、3D PDFやJT plus PDFなど複数のフォーマットでの出力、企業固有のテンプレートに対応する。

モデルベース定義に関する強化ポイント モデルベース定義に関する強化ポイント

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