特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

ローカル5Gは世界に比べて日本が先行? 2019年11月には免許交付へモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

「第2回5G/IoT通信展」の基調講演に総務省 総合通信基盤局 局長の谷脇康彦氏が登壇。「データ主導社会の実現に向けて〜電気通信事業分野における競争ルールなどの包括的検証〜」と題して、電気通信事業分野における競争政策や5Gなど次世代通信サービスについて説明した。

» 2019年08月06日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 「第2回5G/IoT通信展」(2019年7月17〜19日、東京ビッグサイト青海会場)の基調講演に総務省 総合通信基盤局 局長の谷脇康彦氏が登壇。「データ主導社会の実現に向けて〜電気通信事業分野における競争ルールなどの包括的検証〜」と題して、電気通信事業分野における競争政策や5Gなど次世代通信サービスについて説明した。

データ構造の共通化とインタフェースのオープン化がIoTのカギ

 IoT(モノのインターネット)などに広がりにより、通信の重要性はかつてないほど高まっている。

photo 総務省 総合通信基盤局 局長の谷脇康彦氏

 「データ主導社会、データ駆動社会という言葉が最近よく使われるが、これはデータがこれからの経済成長を支える重要な要素になっているという意味である。また、現実世界と、サイバー空間の一体化により社会的課題を解決していくという方向性を示す」と谷脇氏は語る。

 現実世界のさまざまなモノや機械、人が通信ネットワークでつながり(IoT)、多様なデータが吸い上げられるようになった。現実世界のデータはサイバー空間に集められて(ビッグデータ)、その解析をAI(人工知能)技術や各種分析技術が行い、何らかの知見を生み出す。目的はデータの解析ではなく、その結果を現実空間へフィードバックし、労働力不足、介護負担拡大、医療費増大などの社会課題を解決するために役立てられる(ソーシャルイノベーション)。データが、リアルとサイバーの間を回り続けることで、ソリューションが適切なものかを検証しさらに良いものへと改善することが可能となる。「データ駆動社会として描かれているのはこうした世界だ」と谷脇氏は強調する。

 IoTもIT(情報技術)の一部ではあるが、従来の「IT」が示していたものは、人を結ぶということに特化しており、ある意味で閉じた領域での情報化だった。IoTは従来取れなかったデータが取得できたり、つなげなかったネットワークをつなげるようにできたりすることが特徴である。異なる領域、組織のデータをつなぎ合わせて新しい価値を見つけられるというのが従来と異なる点だ。そのため、データ構造の共通化、異なるシステムをつなぐインタフェースのオープン化などがIoTを進めていく上でカギを握ることになる。

データ駆動社会のカギを握る5G

 これらのIoTやデータ駆動社会のカギを握る技術として注目されているのが5Gである。5Gは、最大10Gbpsの高速通信、1ms以下の低遅延、1km2当たり100万台の多数同時接続など、従来の4Gにない特徴を備えている。

 この3つの特徴を組み合わせて、ユースケースや利用シナリオなどに応じて、さまざまなサービスが展開できる。例えば、超高速を生かすものとしては映像配信、3D配信などがある。さらにその他の特徴を生かすものとしては、自動運転、遠隔制御などがある。

 一般論として電波は、周波数が高くなればなるほど伝送できる情報量が増え、高速伝送が可能となる。しかし、直進性が高まるため、遮蔽(しゃへい)物などを避ける(回り込む)ことが難しくなり、長距離通信が難しくなる。高周波数を用いる5Gも稠密(ちゅうみつ)な基地局整備の必要性が生じる。また、5Gによる超高速サービスを可能とするためには、基地局まで光ファイバーを敷設すること(広範囲のブロードバンド整備)が不可欠だ。日本では、4Gの現状においても光ファイバーの占拠率98%を超えており、エリアカバー率は高いものがある。そのため「他の国より速いスピードで5G化を進められる環境が整っている」(谷脇氏)といえる。

 2019年4月10日には日本でも5Gサービスにおける周波数割り当てが実施された。各事業者は、2019年秋にはプレサービスを行い、2020年春ごろに商用サービスを開始する計画である。

 「今回、周波数を割り当てる際に注意した点は5Gと地域の活性化をどう結び付けていくかだ」と谷脇氏は語る。最も大きな違いが「カバー率」についての考え方である。

 「4Gまでの周波数割り当てについては人口カバー率という考え方を使っていた。そのため、大都市から優先的にサービスが行われる形となった。5Gでは利用者は必ずしも人ではない。そのため、例えば、工場におけるスマートファクトリーや、農作地帯での農業IoTにも使えるように、全国を10km四方のメッシュに区切り(全国に4500程度)、都市部や地方を問わずに、事業可能性のあるエリアを広域にカバーすることとした」と谷脇氏は考えを述べる。

 そして、全国および各地域ブロック別に5年以内に50%以上のメッシュで5G基地局を整備する予定を示す。さらに、2年以内に全都道府県でサービスを開始するという条件を付けているという。

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