インタビュー
» 2019年08月19日 06時30分 公開

イノベーションのレシピ:ミリ単位で足を採寸できる「ZOZOMAT」、技術と目指すビジネスを聞く (1/2)

「ZOZOTOWN」を運営するZOZOが、スマートフォンで簡単に足のサイズを無償で高精度採寸できるサービス「ZOZOMAT」を開発した。同サービスではZOZOグループが独自開発した新技術を活用しているという。事業を担当する同社 MSP事業推進本部で本部長を務める常井康寛氏に、サービス開発の経緯や技術の概要などを聞いた。

[松本貴志,MONOist]

 ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOが、スマートフォンで簡単に足のサイズを無償で高精度採寸できるサービス「ZOZOMAT(ゾゾマット)」を開発した。2019年の秋冬からサービス開始を予定している。

 ZOZOMATの利用法は至ってシンプルだ。ドットマーカーが印刷されたマットの上に足を乗せ、足の周囲を専用アプリがインストールされたスマートフォンで撮影する。撮影完了後には処理が自動で行われ、スマートフォン上に自分の足の3Dモデルが寸法とともに表示される。開発中の専用アプリでは、足長や足幅、足囲などの他、かかと幅、足甲高さ、ショートヒールガース、ふまず長さといった7項目について足のサイズが測定できた。

記者が足のサイズを計測した結果。フットメジャーで計測した足長も27.0cmであるので、ミリメートル単位で正確にサイズが算出されている(クリックで拡大)

 同サービスではZOZOグループが独自に開発した新技術を活用しているという。事業を担当する同社 MSP事業推進本部で本部長を務める常井康寛氏に、サービス開発の経緯や技術の概要などを聞いた。

ZOZOの常井康寛氏

足の3Dモデルはアプリ内で作成、技術的には任意の部位を採寸可能

 常井氏は「消費者にとって、服よりも靴の方がEコマースで購入する際(サイズ違いや履き心地の面で)不安が大きいのではないか。足は長さの他に幅や高さなども人によって全く違うが、自分の足のサイズを詳しく知っている人は少ない」と、靴をEコマースで販売する難しさを語る。「消費者に靴を安心して買ってもらえるようにするとともに、靴はEコマースで販売することが難しいと考えているブランドにも出店してもらえるようにする」ことが、ZOZOMAT開発の目的だった。

 ZOZOMATのデザインで目を引くのはカラフルな配色で描かれた円だろう。この円の内部には多数のドットマーカーが印刷されている。それぞれのドットマーカーは異なる形状の点群を持っており、マットに乗せた足とマーカーの位置関係を画像解析することで足のサイズが測定される。スマートフォンアプリに表示される足の3Dモデルは、撮影した画像データに基づいてアプリ内で逐次モデリングしている。実際の足の形状でモデルを作成、採寸しているため、技術的には任意の部位でミリメートル単位の採寸が可能だという。

 この計測手法は、体型を採寸できるボディースーツ「ZOZOSUIT」と同様のように見えるが、常井氏は「ZOZOSUITと共通技術はあるものの、異なるアルゴリズムの活用も行っている」と述べる。ZOZOSUITと並行してZOZOMATの開発も進められたが、ZOZOSUITよりも長い、2〜3年程度の開発期間を要した。「靴専門店では店舗に3Dスキャナーを設置する所も増えてきた。しかし3Dスキャナーは1台当たり数百万円する。それと同じくらいの精度を自宅でできないかということをテーマに開発してきた」(常井氏)という。

 ZOZOMATの開発でこだわった点は、マットに足を乗せスマートフォンで数枚写真を撮るだけで足の採寸が完了するところだ。「この方式に落ち着くまでに、いろいろ検討した。ZOZOSUITのように靴下にする案なども考えたが、そうするとユーザーに煩わしさを生じさせてしまう。また、ZOZOSUITでは性別や体型別に8種類のサイズを用意していたが、靴下案では足のサイズに合わせて複数サイズを展開しなければならない点も課題だった。マットにすることで採寸にかかる面倒も少なく、複数サイズを用意する必要もない」(常井氏)。

 採寸に用いるマットは、ドットマーカーを含む基本レイアウトが用紙に印刷された簡易な仕様となっている。「今後配布予定のマット画像データを使って、ユーザーがA3用紙2枚にマットを印刷できる方法を検討する等、さまざまな手段で多くのユーザーに気軽に体験してもらうすることでも採寸できる」(常井氏)。サービス提供の自由度の高さもメリットだ。

A3用紙2枚分程度の大きさのZOZOMAT。データ配布の他、新聞や雑誌の広告として配布することも検討しているという(クリックで拡大)

 採寸精度の確保については、「ユーザーは(撮影位置やスマートフォンカメラの性能、照明など)さまざまな状況で撮影すると想定している。計測精度を損なうような撮影状況の場合は再撮影を促すが、多少の撮影状況の変化には対応できる技術の開発を行った」(常井氏)としている。

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