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» 2019年08月22日 15時00分 公開

医療技術ニュース:ピアニストの巧みな指さばきをかなえる生体機能の仕組みを発見

ソニーコンピュータサイエンス研究所が、ピアニストの巧みな指さばきをかなえる感覚運動統合機能の仕組みを発見した。脳神経系が巧緻運動に最適化されているかが、熟達者の個人差を生む要因となっていることが分かった。

[MONOist]

 科学技術振興機構は2019年7月26日、ソニーコンピュータサイエンス研究所の平野雅人氏らの研究グループが、ピアニストの巧みな指さばきをかなえる感覚運動統合機能の仕組みを発見したと発表した。素早く正確に手指を制御する能力と体性感覚機能の間に密接な関連があり、脳神経系が巧緻運動に最適化されているかが、熟達者の個人差を生む要因となっていると見いだされた。

 研究グループは、定電流刺激装置や外骨格ロボットハンドで手指に皮膚感覚と固有感覚を生じさせ、各情報の大脳皮質における処理過程を、脳波測定や脳への磁気刺激を用いて評価するシステムを開発。ピアニストと一般の人を対象に、手指の巧緻運動と体性感覚機能の関連を調べた。

 まず、人差し指の先に定電流刺激装置で微弱な電気刺激を与え、脳波計で脳神経活動を測定。その結果、皮膚感覚の入力によって大脳皮質一次体性感覚野周辺に反応(体性感覚誘発電位、SEP)が観察されたが、SEPの振幅はピアニストと一般人で同程度だった。

 さらに、SEPが生じるタイミングで、1次運動野において人差し指の筋肉を支配している領域を磁気刺激し、反応(運動誘発電位、MEP)を測定。1次運動野だけを磁気刺激した時よりもMEPが小さくなったため、皮膚感覚は1次運動野の活動に抑制をかけていると考察できた。

 次に、固有感覚に関して実験を行ったところ、SEPの最大振幅はピアニストと一般人で同程度だったものの、伸ばし始めから反応が生じるまでの時間がピアニストの方が短く、ピアニストはより効率的に固有感覚情報を処理していることが分かった。

 各反応が生じるタイミングで1次運動野を磁気刺激し、得られたMEPを観察したところ、固有感覚の入力による抑制現象がピアニストでは見られた。これにより、関節が硬くならないように、固有感覚が1次運動野を調整する機能がピアニストは発達していると考察できた。

 本研究結果により、熟達者の運動技能の個人差を生む機序解明が期待される。さらには、生体機能の個人差を考慮して運動技能を向上させるテイラーメイド練習法や、過剰な訓練で巧緻運動機能が低下する脳神経疾患の早期発見、リハビリテーション法の開発など、さまざまな分野への波及効果が見込めるという。

photo 体性感覚と運動出力の関係 出典:科学技術振興機構
photo 実験方法 出典:科学技術振興機構
photo 研究成果概要(クリックで拡大) 出典:科学技術振興機構

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