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» 2019年09月03日 06時00分 公開

メイドインジャパンの現場力(29):ソニーから譲り受けた村田のリチウムイオン電池、「燃えない」を武器に黒字化急ぐ (2/3)

[齊藤由希,MONOist]

黒字化の遅れは「増産投資」のため、海外拠点と分担して開発加速

 村田製作所では、円筒形のフォルテリオンの他にもラミネート型のリチウムイオン電池やボタン電池を扱う。リチウムイオン電池は、ソニー時代のビデオカメラから始まり、携帯電話機やPC、スマートフォンで採用されてきた。モバイル用途で大きな伸びが見込めなくなって以降、電動工具やコードレス掃除機、電動アシスト付き自転車などに用途を広げている。フォルテリオンを使った蓄電システムも新しい用途の1つで、家庭用では国内で早期に年間販売台数1万台を目指すという。

村田製作所のリチウムイオン電池のラインアップ(クリックして拡大)

 ボタン電池には酸化銀電池とリチウム電池があり、腕時計やTPMS(タイヤ空気圧モニタリングシステム)で採用実績を持つ。2005年には酸化銀電池の無水銀化を実現し、医療用でのシェアも伸ばしているという。今後は時計やTPMSの他、IoT(モノのインターネット)機器用の二次電池やワイヤレスのイヤフォン、ヘッドフォンで伸びている需要に対応していく。IoT機器やワイヤレスオーディオでは超小型のボタン電池が求められているため、製造技術の強みが生きるという。

 電池事業は、ソニーから譲り受けた時点で収益性が良好とはいえなかった。村田製作所に移管された後も2019年に黒字化する目標を先送りした。現在は2021年度に利益に貢献することを目標とする。損益改善が遅れている主な理由は、需要拡大に対応するための増産投資の積み増しだという。

 今後の収益性改善においてもモバイル向けは市場が飽和状態で厳しい。高野氏は「競合他社と比べてちょっといいモノを作ることはできても、他社よりすごくいいモノを作るのは難しい。技術的に工夫の余地が少ない」と説明。円筒形やコイン電池はモバイル向けほど損益が厳しくなく、特に円筒形の用途では新しい市場が立ち上がっているという。シンガポールの拠点は設備投資を実施して拡張し大規模な量産を担当し、郡山事業所で試作や初期量産を担う形で分担し、開発スピードを上げる。

電動車の駆動用バッテリーはやらない

 円筒形リチウムイオン電池の用途に四輪車の駆動用バッテリーは含まれていない。「中国勢の積極的な投資を見て、追従すべきではないと判断した。コモディティ化が進み、投資競争になるので採算が難しい。駆動用バッテリーは積極的に取り組む姿勢ではない」(村田製作所 モジュール事業本部 本部長 代表取締役専務執行役員の中島規巨氏)というのが背景だ。

 ただ、補機バッテリーは前向きに取り組んでいく方針だ。オリビン型リチウムイオン電池は、緊急通報システム向けで採用実績がある。「普段は使わないが、いざというときに使えるという信頼性が評価され、そこから補機バッテリーの話をいただいている。今後、電源の冗長化や始動用などで補機バッテリーは1台に3〜4個使われていくだろう」(村田製作所 エナジーデバイス事業部 事業部長の阿河圭吾氏)。二輪車に関しては、ホンダ「PCX HYBRID」で採用されたようなモーターアシスト用の電源だけでなく、EVバイクの駆動用バッテリーも含めて可能性を広く検討するという。

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