製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

Closed-Loop Qualityの導入でどのような品質改善が可能になるのかCLQ基礎解説(後編)(2/2 ページ)

» 2019年09月05日 10時00分 公開
[志田穣MONOist]
前のページへ 1|2       

Liebherrの取り組み

 Liebherrグループは、60年以上前に初めて移動可能で組み立てが容易な回転式タワークレーンを開発した企業です。同グループの部品部門であるLiebherr-Components Biberach(以下、Liebherr)では、大口径のベアリング、ギアボックス、ロープウインチ、さらに電動機械やスイッチギアといった、技術的に高度かつ高性能の駆動コンポーネントを製造しています。これらの部品は、土工機械、風力タービン、鉱山機械、海洋アプリケーション、車両、工作機械、輸送システムなどに使用されています。

 Liebherrは2003年まで、品質データの取得と評価を手作業で行っていました。顧客の要求に応えるため、プレゼンテーションの前にデータを手作業で照合していましたが、既存の生産と品質保証の工程が透明性に欠けていました。そこで同社は、プロセスと問題解決能力を改善する必要があると考え、プロセスの透明性を高められるCLQに基づく品質管理体制の構築と製造実行システム(MES)の導入を決定しました。

 これによって生産工程を通じて各部品を継続的に監視できるので、Liebherrはプロセスの早い段階で傾向を把握することができます。必要に応じて、許容限界に達する前に生産と検査の工程を再編成できます。また、欠陥の回避に加えて、製品や手順の継続的改善プロセスにも重点が置いています。顧客の要求に応じて、Liebherrは処理結果を実証する個々の証明書を生成することもできます。

 バッチ処理と、それらの連番、文書化、割り当てにより、部品生産プロセス全体を通して個々の工程を識別し、会社内全て追跡できます。欠陥の原因を特定し、再発を回避するための予防措置も迅速に実施できます。

 社内各部署からの品質フィードバックは、CLQに基づく品質管理ソリューションにより管理され、Liebherrは、欠陥部品の修正処理を優先させることができます。また、再作業、透明性の向上、課題の特定と迅速な解決などの文書化と対応コストの計算も可能になりました。



 最後に、MibaグループとLiebherrが導入した、CLQに基づく品質管理ソリューションの全体像を提示します(図2)。PLMやERP、仕入先とのプロセスにも密接に連携するため、全社規模の取り組みが必要であることが、これらの事例からもお分かりいただけたかと思います。

図2 図2 CLQに基づく品質管理ソリューションの全体像(クリックで拡大) 出典:シーメンス
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.