デジタルツインで3Dプリンタの性能改善、そしてパーツ製造の完全自動化も実現Siemens Media and Analyst Conference 2019(1/2 ページ)

Siemens Digital Industries Softwareが開催したプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Media and Analyst Conference 2019」では、HPとの協業で進めてきた3Dプリンティングに関する取り組みが紹介された。

» 2019年09月09日 07時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 Siemens Digital Industries Softwareは、米国ニューヨークでプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Media and Analyst Conference 2019」(2019年9月3〜6日、現地時間)を開催。同イベントの中で、企業の競争優位性を実現する要素の1つである「Comprehensive Digital Twin」に関し、パートナー企業とともに実際に効率化を果たした事例として、HPの取り組みを紹介した(関連記事:シーメンスの産業用ソフトとMendixを統合し、企業のデジタル変革を加速する「Xcelerator」)。

プリントヘッドの冷却効率の改善をデジタルツインで実現

 HPは、同社のハイエンド3Dプリンタ「HP Jet Fusionシリーズ」の開発において、自らの3Dプリンティング技術を活用し、HP Jet Fusionシリーズの性能改善を図っているという。ご存じかもしれないが、HPでは同社の3Dプリンタ(HP Jet Fusionシリーズ)で造形したパーツを製品に活用する取り組み(HP on HP)を積極的に勧めている(関連記事:後発でも勝負できる! HPの3Dプリンティング事業が目指すもの)。

 具体的には、設計、シミュレーション、3Dプリンティング、パフォーマンス分析などにおいてデジタルツインを構築し、各プロセスにおいて生み出されるデータを、デジタルスレッド全体で活用することで、大きな効果が得られたとする。

プリントヘッドの冷却効率の改善に向けた取り組み プリントヘッドの冷却効率の改善に向けた取り組み 出典:Siemens Digital Industries Software(クリックで拡大)

 これにより、同社はHP Jet Fusionシリーズのプリントヘッドの冷却機構(ダクト部品)の開発において、もともと6点で構成されていたものを3Dプリントで一体造形することでパーツコストを34%以上削減し、開発スピードを75%向上させた。さらに、流体解析(CFD)の結果を設計にフィードバックすることで形状の最適化(トポロジー最適化)を図り、プリントヘッドの冷却効率が22%以上向上、それに伴い造形スピードも約15%改善したという。

流体解析の結果を設計にフィードバックしてトポロジー最適化で新たなダクト形状を導き出した 流体解析の結果を設計にフィードバックしてトポロジー最適化で新たなダクト形状を導き出した 出典:Siemens Digital Industries Software(クリックで拡大)

 この取り組みを支えているのが、SiemensとHPのパートナーシップにより実現した、アディティブマニュファクチャリング領域におけるエンドツーエンドの枠組みである。

SiemensとHPによるアディティブマニュファクチャリング領域における取り組みについて SiemensとHPによるアディティブマニュファクチャリング領域における取り組みについて 出典:Siemens Digital Industries Software(クリックで拡大)
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