製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集
連載
» 2019年09月24日 11時00分 公開

事例で学ぶ品質不正の課題と処方箋(5):品質不正発生に備えた「危機管理」の重要性――レジリエンスを高める (1/3)

万が一、品質リスクが顕在化した場合に備えて危機管理の仕組みを整備しておくことが重要です。危機では複数のタスクが同時多発的に発生する中で、どのような準備ができ、実際の対応にあたる際にはどのようなことに留意すべきなのかを、「レジリエンス」という危機管理のキーワードを用いて解説します。

[土谷豪(KPMGコンサルティング),MONOist]

⇒連載「事例で学ぶ品質不正の課題と処方箋」バックナンバー

はじめに――危機管理におけるキーワード「レジリエンス」

 不正の未然防止、早期発見が重要であることは言うまでもありません。しかし海外を含めた事業の拡大、製品差別化のための技術高度化が進行するに伴って対応が難しくなっていることも確かであり、品質に関するリスクが顕在化してしまう可能性も否定できません。

 そのため、品質リスクが顕在化した場合に備えて危機管理の仕組みを整備しておくことが重要です。危機発生時の調査から、従業員や取引先、当局等を含む社内外関係者とのコミュニケーション、マスメディア対応や事業継続の確保等、複数のタスクが同時多発的に発生する中で、どのような準備ができ、実際の対応にあたる際にはどのようなことに留意すべきなのかを、「レジリエンス」という危機管理のキーワードを用いて解説します。

危機管理における基本的な考え方――レジリエンス

レジリエンスとは?

 レジリエンスとは「負荷がかかってゆがんだものを跳ね返す力」という意味です。そこから転じて、危機が発生した場合の復旧力のような意味合いで使われるようになり、現在は危機管理の分野で一般的な用語となっています。

 本稿では、レジリエンスを「危機や環境変化に打ち克ち、それを糧に成長できる組織の力」と定義します。言い換えると、危機をチャンスと捉えて、危機の発生前よりも強い企業になることと捉えていただくとよいと思います。

レジリエンスが不足する組織の特徴

 仮に品質問題等の不祥事が発生した場合、レピュテーション(企業のステークホルダーの中に形成される認知のこと)の毀損(きそん)、売り上げの大幅減少、株価暴落、そして最悪の場合は倒産にまで追い込まれるケースが考えられます。過去に不祥事が発生した企業、不祥事が原因で倒産した企業など約数十社について、第三者委員会報告書や報道内容など公開されている情報を分析した結果、そのような組織では図1のような特徴があることが判明しました。図表1に示すような特徴があるケースにはレジリエンスが低い組織である可能性があります。

図1:不祥事等が発生した企業の特徴(クリックで拡大) 出典:公開されている情報を元にKPMGコンサルティングで作成

 皆さまの組織ではいくつ当てはまるでしょうか? 筆者が研修、セミナー等で行った参加者アンケートでは、ほとんどの会社で最低1つは当てはまるという回答を得ています。つまり、どんな企業にでも危機が発生する可能性があると捉えることもできます。

危機発生時と平時の違い

 仮に危機が発生した場合、平時と比較してどのような違いが存在するでしょうか。基本的に危機への対応は、ほとんどの方にとって「初めての経験」になります。類似事象の経験はあっても全く同様の対応をすれば良いとは限りません。また、平時と同じ動きをしていては対応ができないことも多々発生するため、これらの違いを認識して危機対応にあたることが重要となります。表1は平時と危機発生時を比較した特徴です。

表1:危機発生時の特徴(平時との違い)(クリックで拡大) 出典:KPMGコンサルティング
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.