連載
» 2019年09月25日 10時00分 公開

日本におけるファブラボのこれまでとこれから(5):ファブラボとの掛け算で広がる可能性、他者と協業しながら作り上げるという精神 (1/3)

日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。最終回となる今回は、ファブラボとの掛け算で広がる可能性、そしてファブラボが描く未来像について取り上げる。

[梅澤陽明/ファブラボ神田錦町,MONOist]

 これまで、「ファブラボ(FabLab)」という活動を振り返りながら、その役割について紹介してきました。いよいよ最終回。今回は少し未来を眺めながら、書き進めていきたいと思います。

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地域の実験室「ファブラボ」

 この数年、ファブラボやメイカースペースの拡大によって、モノを作る行為がグッと身近になりました。「レーザーカッター」や「3Dプリンタ」といった機材名称も、耳なじみのある言葉になっているのではないでしょうか。

 例えば、「SNSで話題!」といった見出しの記事を読んでみると、3Dプリンタで精巧に作られた模型が取り上げられていたり、街中のショップにはレーザーカッターを駆使したハンドメイドのアクセサリーが並んでいたり、さらには夕方のニュース番組で3Dプリンタを用いた製法で作られた不思議なチョコレートが紹介されたりと、デジタルファブリケーションツールが当たり前のように私たちの日常へ浸透しつつあります。

 こうしたツールは限られた人だけのモノではありません。「作りたい!」と思う誰もが、利用できる機会が用意されています。それが、ファブラボです。

 ファブラボは週に1度、無料で地域に開放されています。これを「オープンラボ」と呼んでおり、これまでに紹介してきたデジタルファブリケーションツールを使ったモノづくりや、ユーザーコミュニティーに参加できます。利用方法は、ラボごとに定められていますので、利用前に必ず確認してください。

オープンラボの様子(1) オープンラボの様子(1) [クリックで拡大]

 なお、ファブラボ神田錦町のオープンラボは「アプライ制」を取り入れています。事前にラボ利用の提案書を提出いただき、簡単な内容審査を行っています。少々堅苦しく聞こえますが、これは「フリーライダー()」を防ぐための対策であり、ファブラボ思想への理解を深めていただくためのものです。

※フリーライダーとは:ソフトウェアの領域で時々耳にする言葉ですが、オープンソースソフトウェア(無償公開)の使用はするものの、そのコミュニティーには何も還元しない使用者のことを指します。ファブラボでは、無償開放日(オープンラボ)を設けてオープンアクセスの体制を整えるよう定められており、オープンラボを利用するユーザーには、ファブラボコミュニティーへの還元が求められています。

「ファブマスター」という仕事

 ファブラボには「ファブマスター」がいます。連載第2回でも触れましたが、このマスターたちは普段何をしているのでしょう。筆者が所属するファブラボ神田錦町を例に紹介します。

 神田錦町のマスターは、美大出身のクリエーターと機械設計エンジニアを中心に構成されています。週に1度のオープンラボでは、アートとエンジニアリングの視点でユーザーをサポートしながら、共に製作に取り組んでいます。

 そして、オープンラボ以外の時間を使って、私たちはファブラボの機能や思想を、既存の仕組みへプラグインすることに日々取り組んでいます(詳細は後述)。このような事業によって得られた利益により、週に1度のオープンラボを実施しています。

オープンラボの様子(2)オープンラボの様子(3) オープンラボの様子(2)(3) [クリックで拡大]
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