特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年09月30日 07時30分 公開

製造業がサービス業となる日:1台で月額1万円のAIカメラを96台導入するには (2/2)

[齊藤由希,MONOist]
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96台のカメラは何を見ているか

入り口のカメラにはズームレンズが取り付けられている。この他にも、温度センサーなどをカメラに追加することができるという(クリックして拡大)

 札幌市豊平区にあるサツドラ月寒西1条店には96台のVieurekaカメラがある。天井からぶら下がっているもの、棚の上に立てられているもの、目の高さ近くにあるものなど、来店客の行動を死角なくカウントできる場所に設置されている。店舗入り口のVieurekaカメラにはズームレンズが取り付けられており、来店客の年齢層や性別の推定、来店客数のカウントに使われている。

 入り口以降のカメラでは、商品の棚の前を通った人数や滞在時間などを見ている。現時点では来店客の行動追跡は行っていないが、機能を開発中だ。また、将来的にはPOSデータと店内での行動履歴もひもづけたい考えだ。これにより、顧客単価や、棚の前の滞在時間と売り上げの相関などを算出することを目指す。

 サツドラ月寒西1条店はサツドラの標準フォーマット店と位置付けられており、ここで蓄積した知見やノウハウが他の店舗の運営や出店計画に生かされる。サツドラでは手頃な価格の食品や飲料の品ぞろえを厚くし、集客に使っている。同店舗も食品が売り上げの4割、販売点数の6割を占める。標準フォーマット店では、食品売り場を入り口から最も離れた場所に配置し、店内を1周しながら食品売り場に向かう途中でさまざまな日用品を手に取ってもらい、購入点数、購入金額を増やすことを狙っている。

店舗に入ってすぐの棚のレイアウトを変更した。その効果をVieurekaカメラで検証(クリックして拡大) 出典:サツドラホールディングス

 ただ、他の日用品の棚の前を通らず、食品売り場に直行されてしまうと、サツドラの思惑は外れてしまう。これまで、店舗入り口から1周するルートで歩く客は半数以下、食品売り場に向けて最短ルートを進む客が6割強だった。

 Vieurekaカメラは、店内を1周する客を増やすためのレイアウト変更の効果検証で活用した。レイアウト変更は店員の経験や勘、定説に基づいていたため、本当に効果があるか可視化することが必要だった。残念ながらレイアウトの変更前後で来店客の変更に大きな変化はなかったが、「現状を見える化し、把握できることに意味がある」(サツドラホールディングス インキュベーションチーム リーダーの杉山英実氏)としている。

 96台のVieurekaカメラのうち、サツドラで設置したのはもともと54台だった。追加の42台は、「サツドラAIラボ」に参加している食品、飲料メーカーや卸業者15社が設置した。例えば飲料メーカーは、飲料売り場に重点的にカメラを取り付け、販促物の効果や売り場での買い物客の行動、手に取ってもらいやすい陳列、欠品の影響などを分析する。サツドラはVieurekaカメラのデータを有償で提供することにより、Vieurekaプラットフォームの利用コストをまかなっている。サツドラAIラボのメンバーが見られるのはサツドラと自社が設置したカメラのデータに限られるが、メーカーや卸業者にとって棚の前で客がどう行動するかは有益な情報であり、得た知見を全国の小売店に展開することもできる。

サツドラAIラボの仕組み(クリックして拡大) 出典:サツドラホールディングス

「女性客が多い」は間違い

 Vieurekaカメラは、POSデータと会員向けポイントカードの組み合わせ(ID-POS)だけでは分からなかった来店客の傾向も明らかにした。

 例えば、ID-POSでは女性客が7割を占めるというデータが出ていたが、Vieurekaカメラの分析結果では男女比はほぼ半々だった。年齢層ごとのシェアを見ると、ID-POSでは40代男性は7%だったが、Vieurekaカメラでは40代と50代の男性がそれぞれ1割程度を占めることが分かった。「女性向けに過度に偏った施策になっていなかったか、男性にも女性にも使いやすい店舗かどうか、見直すきっかけになった」(杉山氏)。

 サツドラは、北海道ではシェア3割で業界2位のドラッグストアだが、全国的に見ると規模は小さい。また、北海道でも人口減少と人手不足が進む。そんな中、サツドラホールディングスは労働集約型のモノを売る分野でITを活用して自動化し、サービスを売る分野に人手を割くことを目指している。Vieurekaプラットフォームの利用はIT活用の一環だ。AIソリューションやリアルタイムクラウドPOSを自社開発するだけでなく、オープンイノベーションや共同マーケティングなど他社と積極的に協力していく。

人手不足の中でよりクリエイティブな業務を行うためにIT活用が不可欠(クリックして拡大) 出典:サツドラホールディングス
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