特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

住友ゴムがタイヤ生産をスマート化、日立「Lumada」とPTC「ThingWorx」を採用スマートファクトリー(1/2 ページ)

住友ゴム工業、日立製作所、PTCジャパン、AIやIoTを活用したプラットフォームにより、高品質かつ高効率なタイヤ生産を実現するシステムをグローバルに構築するための本格的な協業を開始する。今後は、2025年までに同システムを住友ゴムの国内外12拠点のタイヤ製造工場に導入する計画である。

» 2019年10月04日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 住友ゴム工業、日立製作所、PTCジャパンの3社は2019年10月3日、東京都内で会見を開き、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用したプラットフォームにより、高品質かつ高効率なタイヤ生産を実現するシステムをグローバルに構築するための本格的な協業を開始すると発表した。3社は、名古屋工場(愛知県豊田市)をモデル工場してベースシステムを構築しており、今後は2025年までに同システムを住友ゴムの国内外12拠点のタイヤ製造工場に導入する計画である。

会見の登壇者 会見の登壇者。左から、日立の榎掘武氏、住友ゴムの山田清樹氏、PTCジャパンの成田裕次氏(クリックで拡大)

 開発中のシステムは、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」のうち、4M(Man、Machine、Material、Method)データを統合して解析する4MデータAI解析サービスと、PTCの産業用IoTプラットフォーム「ThingWorx」を採用。具体的には、ThingWorxを用いてタイヤ工場の生産設備の稼働データ収集と、それらのリアルタイムなモニタリングや製造現場の可視化を行う。そして、4MデータAI解析サービスを用いてそれらのデータを網羅的に解析し、品質や生産性、設備の予知保全、省エネルギー化などに影響を与える要因を高速、高精度に探索、抽出する。

開発中のタイヤ生産システムの導入イメージ図 開発中のタイヤ生産システムの導入イメージ図 出典:住友ゴム工業

 住友ゴム タイヤ生産本部 設備技術部長 製造IoT推進室長の山田清樹氏は「2017年4月に立ち上げた製造IoT推進室では、ビッグデータを活用できる仕組みの構築と生産工程の効率向上をミッションとしている。これまでの生産性向上の取り組みは、どうしても熟練技術者の経験やノウハウに頼ることが多かった。これを、データに基づいて意思決定する“データドリブン”に変えていく必要がある」と語る。

住友ゴムの製造IoT推進室のミッション 住友ゴムの製造IoT推進室のミッション(クリックで拡大) 出典:住友ゴム工業

年率3%の生産性向上目標にも貢献

 住友ゴムは、AIやIoTを活用した新たなタイヤ生産システムの導入によって、生産性、品質、予知保全、省エネルギーの4つのテーマでムダの排除進めて、高品質、高効率なタイヤ作りを実現していく。期待する効果としては、状況のリアルタイム把握による対策の迅速化、4MデータのAI解析による現行の生産手法では得られなかった新たな知見の獲得、そしてタイヤ製造基盤の統一によるグローバル横展開などがある。

製造IoTの目指すところ集中コントロールセンターの構想イメージ 製造IoTの目指すところ(左)と集中コントロールセンターの構想イメージ(右)(クリックで拡大) 出典:住友ゴム工業

 2025年までに進める12工場へのシステム導入と併せて、これらを1つにまとめ上げる集中コントロールセンターを設ける計画もある。同センターは、住友ゴムの神戸本社内に置くことが想定されている。

 ThingWorxのリアルタイム性を活用したダッシュボードを用いれば、早期に異変を把握し、現場のアクションへつなげることでロスタイムの低減につなげられる。「例えば、タイヤの生産工程のうち、成形工程で発生した異常による待ちが加硫工程に大きな影響を与える。この異常を早期に把握して適切に対処すれば、ロスタイムを低減できる」(山田氏)。

生産進捗ダッシュボード品質AIアプリ 生産進捗ダッシュボード(左)と品質AIアプリ(右)の画面イメージ(クリックで拡大) 出典:住友ゴム工業

 品質に関わるAI分析では、最終製品の品質にどのような要因が影響を与えているかを簡単に把握できるアプリケーションなども開発している。経験の浅い作業者であっても、熟練者に近いレベルで適切な対応が可能になるという。

 モデル工場の名古屋工場では、生産性と品質に関わる機能の開発にめどを付けており、今後は予知保全、省エネルギーの機能開発を進める。併せて、国内の残り3工場、海外の8工場にも順次導入していく計画だ。山田氏は「当社のタイヤ工場は、自社で立ち上げた工場の他に、旧大津タイヤの泉大津工場と宮崎工場、他企業から買収した米国工場と南アフリカ工場などから構成されている。今回開発したシステムは、設備や生産手法などが異なる各工場にもシームレスに導入でき、タイヤ製造の基盤を統一できることも大きな効果になる」と説明する。

国内外12のタイヤ製造工場に2025年までに展開する計画 国内外12のタイヤ製造工場に2025年までに展開する計画(クリックで拡大) 出典:住友ゴム工業

 また、住友ゴムは工場での生産性を年率3%向上する目標を掲げており、今回開発したシステムはその達成に貢献するものとなる。

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