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» 2019年10月09日 10時00分 公開

モデルベース開発:コマツが次期製品の開発でMBSEを実践、「プロダクトライン開発」との両輪で (1/4)

オージス総研主催のイベント「現場の悩みを解決するためのシステムモデリングの活かし方」に、小松製作所(コマツ) 開発本部 システム開発センタ メカトロ制御第3Gr.の北村顕一氏が登壇し、同社の次期製品の開発に取り入れているMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)と「プロダクトライン開発」について紹介した。

[朴尚洙,MONOist]

 製造業がIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータといったデジタル技術の活用を目指すのと同時に進行しているのがソフトウェア規模の拡大である。例えば自動車は、かつては一切のソフトウェアを用いずに走行していたが、電子化や電動化が進展し、自動運転技術が導入されることによって、1億行を超える規模のソフトウェアが用いられるようになっている。【訂正あり】

 この複雑かつ大規模なソフトウェアの開発に有効な手法として注目を集めているのがMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)である。自動車と同様に搭載するソフトウェアの規模が爆発的に増大している建設機械大手の小松製作所(コマツ)もMBSEに取り組んでいる企業の1つだ。オージス総研が2019年9月6日に東京都内で開催したイベント「現場の悩みを解決するためのシステムモデリングの活かし方」では、コマツ 開発本部 システム開発センタ メカトロ制御第3Gr.の北村顕一氏が登壇し、同社の次期製品の開発に取り入れているMBSEと「プロダクトライン開発」について紹介した。

【訂正:講演者からの申し入れにより図版を削除しました】

コマツのソフト開発は良くも悪くも「自前主義」

コマツの北村顕一氏 コマツの北村顕一氏

 コマツと言えばIoTの成功事例ともいえる機械稼働管理システム「KOMTRAX」で知られており、建設現場ICTソリューション「スマートコンストラクション」にも取り組むなど、製造業のデジタル化で先行する企業のイメージが強い。実際に、同社の重点活動となっているのが「コマツのIoT」だ。顧客、代理店、生産現場の全体をつないで、全ての現場の安全と生産性の向上を図るもので、現場の見える化から、現場の自動化、自律化までをも目指している。

 そんなコマツが、建機に電子制御を初めて導入したのが1983年になる。北村氏は「ほぼ同時期からエンジンの電子制御を始めた自動車メーカーとは異なり、建機は生産台数の規模が小さい。このため、サプライヤーに開発を任せることが難しく、自社で開発するしかなかった」と語る。1990年代は、独自開発の自社製制御用コントローラーを1個搭載する程度ですんだこともあり、そのソフトウェア設計は“職人”と呼ばれる専任技術者が担当していた。

 2000〜2010年代は建設機のシステム拡大期に当たり、ハイブリッドショベルやICT建機などの開発に向け、複数の制御用コントローラーを搭載するようになった。KOMTRAXを導入したのもこの時期である。ソフトウェア開発も“職人”によるものから、オブジェクト指向やV字プロセスなどの導入によるチーム開発に移行した。ただし「基本的には自社開発で行っていた」(北村氏)という。

 今後は、現場の見える化から、現場の自動化、自律化といった形で施工のデジタルトランスフォーメーションを進めて行く必要があり、ソフトウェア開発規模も拡大していくことになる。これまでの自社開発だけでは対応しきれないため、サプライヤーへの外注も活用しなければならない。そこで、自社開発と外注を連携した開発プロセスを最適化するために現在取り組んでいるのが、MBSEとプロダクトライン開発なのだ。

 北村氏は、コマツの技術開発の特徴について「良くも悪くも自前主義」と指摘する。同社がフルラインアップする建機を生産するためには、地域特性や用途に合わせた商品開発が可能なさまざまなニーズへの対応力が必要であり、「自前主義」でこれを満たしてきた。その一方で、制御技術やソフトウェアの開発については、スピード感がないという課題がある。「知識やノウハウの承継ができていない若手社員などは、設計の本質が分かっていないため、その場しのぎの手直しが多くなる。これが、ソフトウェアを標準化することができない理由にもなっている」(同氏)。

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