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» 2019年10月03日 10時00分 公開

寡占市場での勝ち残り術:エポック社のカプセルトイが攻め過ぎている理由【前編】 (1/3)

エポック社のカプセルトイ「カプセルトイができるまで」をご存じでしょうか。成形金型、塗装用のマスク型とスプレーガン、そして梱包用の段ボールと、実際のカプセルトイができるまでの各工程をミニチュア化した製品。そんな斜め上を行く「カプセルトイができるまで」の誕生秘話やカプセルトイづくりの難しさについて、担当者に話を聞いてきました。

[八木沢篤,MONOist]

 最近のカプセルトイ売り場、ものすごくないですか? 大型商業施設や家電量販店などではカプセルトイの専用スペースが設けられており、無数のカプセルトイ自販機が並んでいます。場合によっては、4段重ねでフロアいっぱいにカプセルトイ自販機が並ぶ店舗もあるほどです。

 品ぞろえも男児・女児向けだけではなく、大人向け、いわゆるハイターゲット向け商品もたくさんあり、子供はもちろんのこと、大人も楽しめる一種のアミューズメントパーク的な感じになっており、休日はたくさんの家族連れなどでにぎわっています。

 そんな筆者も小学校低学年の子供を連れて、よくカプセルトイ売り場に行くわけですが、ある日、とんでもない商品を見つけてしまいました。それがこちらです。

カプセルトイづくりで用いられる成形金型、塗装用マスク型、スプレーガン、梱包用段ボールをミニチュア化した「カプセルトイができるまで」 カプセルトイづくりで用いられる成形金型、塗装用マスク型、スプレーガン、梱包用段ボールをミニチュア化した「カプセルトイができるまで」(クリックで拡大)

 成形金型、塗装用のマスク型とスプレーガン、そして梱包(こんぽう)用の段ボール箱――。実はこれ、カプセルトイができるまでの成形、塗装、梱包の各工程をミニチュアで再現したもの。商品名もそのままズバリ、「カプセルトイができるまで」です。日ごろからモノづくり関連の取材をしているMONOist編集部の1人として、どうしても買わないわけにはいきませんでした。

 この斜め上に突き抜けた商品、作っているのは「野球盤」や「シルバニアファミリー」といった国民的大ヒット玩具を世に送り出す、エポック社。同社が2019年8月に販売開始したカプセルトイだったのです。

ディスプレイポップ(1)ディスプレイポップ(2) ディスプレイポップの画像(クリックで拡大) ※画像提供:エポック社

 「もうこれは直接話を聞きに行くしかない!」と、休み明けすぐにエポック社に取材を申し込み、話を聞く機会を得たというわけです。前置きが少し長くなりましたが、「カプセルトイができるまで」の開発秘話、カプセルトイ市場の現状、カプセルトイづくりの難しさ、そしてカプセルトイ(玩具)開発における3Dツールおよびデジタル技術の活用について、【前編】【後編】に分けて詳しくご紹介したいと思います。

⇒【後編】をチェックする

毎月300もの新タイトルが販売されるカプセルトイ市場

「カプセルトイができるまで」のカプセル 「カプセルトイができるまで」のカプセル(クリックで拡大)

 本題に入る前に、まずはカプセルトイ市場の現状について少し触れておきましょう。カプセルトイというと、一昔前までは子供向けのおもちゃという印象でしたが、近年、ハイターゲット向け商品やインバウンド需要の増加も後押しし、年々売り場スペースを拡大。子供から大人まで幅広い年齢層をターゲットにさまざまな商品が展開されています。その市場規模は300億円以上ともいわれ、毎月およそ300タイトルもの新商品が世に送り出されているそうです。

 また現在、カプセルトイ市場の参入企業は30社以上あるといわれていますが、市場的には、バンダイ、タカラトミーアーツ、エポック社の寡占状態にあるそうで、その他大勢による激しい4番手、5番手争いが繰り広げられているとか。今回お話を伺ったエポック社は、2000年ごろにカプセルトイ市場に参入しているので、約20年の歴史を誇る“古参”に分類されるかと思います。ただ、当時と違うのは参入時点で10社前後だった競合が、今ではその3倍に膨れ上がっていることです。上位集団の好位置をキープしつつ、新興企業から追われるというのは、なかなか難しい立場ではないでしょうか。

 そうした状況の中、生まれた企画の1つが今回紹介する「カプセルトイができるまで」です。なぜ、このようなニッチな商品を出してきたのでしょうか。

 一般的なカプセルトイの商品ラインアップというと、TVアニメなどのキャラクターを用いたフィギュアや関連グッズが王道でしょう。ですが、キャラクターの版権には高額なロイヤルティーが発生しますし、人気キャラクターの版権が既に他社に取られている可能性も十分あります。もちろん、エポック社でもキャラクターの版権をいくつか持っているそうですが、それとは別の方向でも厳しいカプセルトイ市場の中で、存在感を高めようとしています。

エポック社 ラクーン事業部 企画室 マネージャーの佐藤隆さん エポック社 ラクーン事業部 企画室 マネージャーの佐藤隆さん

 エポック社 ラクーン事業部 企画室 マネージャーの佐藤隆さんは「非常に強い、人気のあるキャラクターの版権を持つ相手と、同じ土俵で真っ向からキャラクター合戦をするのではなく、企画力勝負の商品を世に送り出すことで、『エポック社がまた面白いものを出してきたなぁ〜』と、消費者の方々にその存在を認知してもらいたいと考えています」と、キャラクターの力だけに頼らず、企画力を武器にどんどん面白いものを仕掛けていきたいという思いを語ります。

 ちなみに、エポック社のラクーン事業部は、もともとファミリーレストランのレジ横にある販売スペースなどで売られている1000円以下の低価格商品、いわゆるフックトイを企画する部署だったそうです。2000年ごろからカプセルトイ事業にも参入するようになり、時代とともにフックトイの売り場スペースが縮小していったことを受け、2013年を契機にカプセルトイ事業に一本化したという経緯があります。

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