「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
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» 2019年10月18日 06時00分 公開

モビリティサービス:パナソニックが46万m2の本社敷地で自動運転シャトル、目指すは人中心の街づくり

パナソニックは2019年10月17日、東京都内で説明会を開き、社長直轄の組織「モビリティソリューションズ」の取り組みを発表した。自動車部品を手がける「オートモーティブ社」とは別の部門で、低速で短距離の生活圏の移動にフォーカスしたモビリティサービスを開発する。車両の自社開発にはこだわらない。

[齊藤由希,MONOist]
パナソニック本社の敷地内で2019年10月からパナソニック社員向けに自動運転ライドシェアサービスを始めた(クリックして拡大)

 パナソニックは2019年10月17日、東京都内で説明会を開き、社長直轄の組織「モビリティソリューションズ」の取り組みを発表した。自動車部品を手掛ける「オートモーティブ社」とは別の部門で、低速で短距離の生活圏の移動にフォーカスしたモビリティサービスを開発する。車両の自社開発にはこだわらない。

 ロボティクス技術やデータ活用プラットフォーム、電動モビリティ向けサービスなど社内の実績やノウハウの他、神奈川県横浜市や藤沢市でのスマートシティプロジェクト「サスティナブル・スマートタウン(SST)」での街づくりの経験を生かして、クルマではなく人が中心となった街の実現を目指す。

街に「緑道」をつくる

 モビリティソリューションズが目指すのは「ラスト10マイル」の移動によって、人やコミュニティーを活性化させることだ。現在はクルマのための車道と、歩行者や自転車のための歩道に分けられているが、長距離を高速で移動する従来の自動車のための車道と、地域内を低速で移動するための「緑道」に分けられた街を理想とする。緑道では、小型電動モビリティやパーソナルモビリティ、自転車などで移動できる。従来の車道は緑道を囲むように配置され、目的地や自宅へは途中で従来の自動車を降りて緑道から向かう。ラスト10マイルのモビリティサービスは、緑道での移動に向けたものとなる。

パナソニックの村瀬恭通氏(クリックして拡大)

 モビリティソリューションズの責任者であるパナソニック モビリティソリューションズ担当参与の村瀬恭通氏は、緑道は新たに開発した街だけでなく、いまある街にも取り入れられると考えている。「地域住民の合意は当然必要だが、スペインのバルセロナでは公道にパイロンを置き、クルマが中心部に入ってこないようにして緑道を作っている。街を新しくつくるのも緑道を実現する1つの手だが、2020年代にも実現できるとみている」(村瀬氏)。

 大阪府吹田市で開発を進めている新しいSSTや、2025年に開催される大阪万博なども、モビリティソリューションズで開発するモビリティサービスを実装するチャンスとして狙っているという。国内だけでなく、海外でのサービス実装が先行する可能性もあるとしている。

車両を売って収益を上げるのではない

敷地内での走行ルート(クリックして拡大)

 こうしたラスト10マイルの移動サービスの実現への一歩として、パナソニック本社の敷地内で2019年10月からパナソニック社員向けに自動運転ライドシェアサービスを始めた。本社エリアと隣接する西門真エリアは、敷地面積が46万8400m2で、1万4200人が働く。敷地内の行き来も頻繁で、時間的、身体的に社員の負担が大きいことが課題となっていた。私有地ではあるが、横断歩道や交差点、トンネル、ラウンドアバウトなど公道に近い環境があり、社外の業者の車両や、自転車なども走っている。自社の敷地内で、ラスト10マイルの移動サービスを実践する。

 使用する車両は市販の電動カートを改造したものだ。カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)で歩行者などを認識する。サービス運用前に2000kmの走行実績があるという。モビリティソリューションズとしては、車両のハードウェアを開発することにはこだわっていない。

 「コミュニティーごとに、ラスト10マイルに必要な車体の形は違う。今回の車両でよければわれわれが作るかもしれないが、他社から調達することも考えている。収益も、ハードウェアを売って回収するのではない。ある地域で採用が決まったら、その地域に適したサービスや車両、保険、センシングを決めていく。地域に合わせた設計トータルでマネタイズする。1km当たりいくら、1カ月当たりいくら、というような収益が続くビジネスにしていきたい」(村瀬氏)

 現在は導入初期のため、パナソニック本社建屋から西門真まで往復2.4kmの決まったルートを走っており、社員は専用のスマートフォンアプリやWebサイトから予約して、敷地内4カ所の乗降ステーションから乗車する。今後は、ルートや乗降ステーションに関係なく、完全にオンデマンドで乗降できるようにしていく。

 現在は需要に応じて最大4台を走らせ、最短10分間隔で1日最大40往復で運行している。車両には保安員が乗車するが、基本的に運転操作は行わない。車両は事前に作製された高精度地図と、GPSによる位置情報を基に決められたルートを自動走行する。全ての車両は敷地内にある管制センターで監視されており、車両がイレギュラーな障害物などで動けない場合は管制センターから遠隔制御する。

管制センターでの遠隔監視画面(クリックして拡大)

 管制センターで監視や遠隔制御の対応に当たるのは、開発者やエンジニアではなく総務部門の担当者だ。ある程度の研修やマニュアルがあれば誰にでも運用できるようにする必要があるという判断だ。管制センターのモニターには、車両の位置情報や運行の遅れの有無、車両の状態、車載カメラやLiDARのリアルタイムのデータなどが表示されている。

 車両が運行中に一定以上の時間停止している場合には、アラートを出して管制センターのスタッフに対応を促す。また、急制動などトラブルがあった場所に近づくと画面のポップアップ表示で警告し、必要な対処なども併せて表示するという。「どこでなにがあったかというイベント情報を蓄積するだけでは管制モニターとして親切ではない。集めたデータを、スタッフが対応しやすくなるように整理することが重要だった」(開発者)。

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