8速ATでPHEVやマイルドHEVまでカバーする方法エコカー技術

自動車の環境対応を巡る状況が急速に変化している。エコカー技術のトレンドは多岐にわたってきたが、現在は各社とも電動化が不可欠だという方針は共通だ。複数の電動パワートレインを用意し、各市場に最適なモデルを投入していくフレキシブルさをどのように実現すべきか。

» 2019年10月28日 10時00分 公開
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 自動車の環境対応を巡る状況が急速に変化している。厳格化するCO2排出規制の達成に加えて、地域ごとのさまざまなニーズや優遇政策に柔軟に応えなければならない。これまでにも、ダウンサイジングエンジンやクリーンディーゼルエンジンなどエコカー技術のトレンドは多岐にわたってきたが、現在は各社とも電動化が不可欠だという方針が共通している。

 ただ、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、マイルドHEVといったさまざまな電動車がある中で、特定の車種について一定以上の販売比率を満たすよう求める規制や、エンジンのみで走行する車両に対して都市部への進入規制や販売禁止を計画する国もある。また、こうした政策が方向転換することも珍しくない。

ZFの第4世代の8速AT「8HP Gen 4」

 当面は、複数の電動パワートレインを用意し、各市場に最適なモデルを投入していくフレキシブルさが重要になる。トランスミッションを手掛けるドイツのメガサプライヤーZF Friedrichshafen AG(以下ZF)もこうした自動車メーカーの方針に合わせた戦略をとる。その筆頭が、2019年7月に発表した第4世代の8速AT「8HP Gen 4」だ。2022年に開発完了予定で、すでにBMWやFCAが採用を表明している。ドイツで生産するが、ニーズに応じて中国や北米でも供給体制を整える計画だ。

 ZFは2018年末に8速ATの第3世代の量産をスタートしたばかりだ。短期間で第4世代を発表した背景には、ここ数年の電動化に関する大きな動きがある。そのため、第4世代はエンジン車だけでなく、PHEVやマイルドHEVに搭載することを想定した製品となる。

第4世代はエンジン車だけでなく、PHEVやマイルドHEVに搭載することを想定している 出典:ZF

 第3世代の8HPを計画していた時は、自動車メーカーのCO2削減の戦略が電動化やダウンサイジングで流動的だった時期だ。そのため、どの方向にも対応することと、電動化を含めた多岐にわたるニーズに対応できること、トランスミッションの各部品の効率を究極に高めることを目指したが、ここにきて電動化シフトが鮮明になった。これを受けて、ZFとしても電動化を軸に開発した点が第3世代までとは異なっている。

 また、第3世代までの8HPでもCO2削減を追求してきたが、さらなるCO2削減にはモーターと組み合わせることが不可欠だったという理由もある。第3世代でもモーターとの組み合わせに対応していたが、第4世代の大きな特徴は、トランスミッションとしての搭載性を維持しながらモーターの容量を拡大し、EV走行性能を向上させた点だ。

 第4世代の8HPに搭載しているモーターの出力は第3世代の90kWから150kWまで高めた。これまではトルクコンバーターを収めていたハウジングにモーターをレイアウトしていたが、第4世代はPHEV向けにモーターが最適になることを前提に設計することでモーターをパワーアップした。また、電子制御ユニット(ECU)を一体化することでトランスミッションによる占有スペースが最小化した。

PHEV向け第4世代8HPの構造 出典:ZF

 こうした進化を支えるのは、さまざまな技術を1つにまとめたフルインテグレーテッドテクノロジーだ。「ハイドロリックコントロールユニットの大幅な小型化、新電動ポンプの採用による多岐にわたる技術をつぎ込んで初めて実現しています」(ゼット・エフ・ジャパン ドライブライン・エレクトロニックインターフェイスの石﨑秀平氏)。もちろん、ギアセットやメカトロニクスも技術ノウハウがそのまま生かされている。

 第4世代8HPのもう1つの特徴はフレキシビリティだ。PHEVやマイルドHEV、エンジン車のいずれにも1パッケージで対応可能で、車両への搭載性を大幅に変更せずにトランスミッションを置き換えることでクルマとして仕上げられる。これは、共通化や標準化を進めながらさまざまなバリエーションのパワートレインをそろえたいという自動車メーカーの要望に応えるためのコンセプトだ。

 パッケージの共通化を進めることは、自動車メーカーとZFの双方にメリットがある。1つの形で3種類のパワートレインを用意できることは生産のフレキシビリティでもあり、規制に左右されやすい環境技術の領域だからこそ重要になる。「各国の規制は今後も強化されるでしょう。欧州はある程度段階的に規制が進みますが、アジア圏では突然発表されることもあります。ZFのフレキシビリティは、3つのうちいずれかのパワートレインの需要が大きく変動してもカバーします」(ゼット・エフ・ジャパン ドライブライン・エレクトロニックインターフェイス 課長の柴田敏克氏)。

 第4世代の8HPがカバーするのはトルクが600〜1000Nmのパワートレインを搭載するクルマだ。さまざまなパワートレインをカバーするのが特徴ではあるが、特に重視するのはPHEVだ。

8HPがカバーするパワートレインとは 出典:ZF

 「PHEVは例えば市街地はモーターのみで走行し、郊外ではエンジンで走るなど、場所に合わせて燃費に最適なソリューションを選択できるのが強みです。欧州ではCO2排出量の多い自動車に対し、都市部への進入規制が始まっています。今後さらに厳しくなり、電動車以外は進入禁止ということになるかもしれません。第4世代の8HPであれば、バッテリー容量にもよりますが都市部をモーター走行でカバーできると考えています。郊外に出ても、エンジンと組み合わせていることでPHEVは十分な走行距離を確保できます。これがPHEVにメリットが多く重要な役割を担うと考える理由です。ただ、PHEVだけにシフトできるわけではなく、マイルドHEVに対する要望や、今までのようなエンジン車のニーズもあります。ZFはどれにも対応する準備をしています」(柴田氏)

ゼット・エフ・ジャパン ドライブライン・エレクトロニックインターフェイスの石﨑秀平氏と、ドライブライン・エレクトロニックインターフェイス 課長の柴田敏克氏

 第4世代の8HPは、2030年までを見越して、変化に対応できる商品力を持たせるべく技術がつぎ込まれている。

 「市場のニーズ変化が激しいですが、2030年までの変化に対応できるだけの柔軟さを持っている自信があります。また、われわれの8HPは製品性や運転性能に対してのベンチマークであるという自負もあります。新世代の8HPでも基本的な方針は変わっていません」(柴田氏)

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年11月27日