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» 2019年11月01日 10時00分 公開

製造業のデジタルトランスフォーメーション:第4次産業革命を理解していない日本の製造業、データ活用で現場力を強化せよ

IoTやAIなどのデジタル技術の急速な進展は、製造業におけるものづくりの在り方に劇的な変化をもたらしている。だが一方で、そうしたデジタル技術のみに注目しているだけでは真の変革は実現できない。スマートなものづくりを経営課題として捉え、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)にアプローチすることでこそ、日本の製造業は新たな時代の優位性を確保し、持続的成長を成し遂げることができる。

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次のステップとして目指すべき製造業DXの真の狙い

野村総合研究所 主席研究員の藤野直明氏 野村総合研究所 主席研究員の藤野直明氏

 昨今、多くの製造業がIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのPoC(概念実証)に取り組み、要素技術に対する理解はかなり進んでいるように思える。ただし、ここで立ち止まったのでは意味がない。野村総合研究所(NRI) 主席研究員の藤野直明氏は、「次のステップとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)の真の狙いを組織レベルで明確にし、経営としての意思決定を加速する必要があります」と説く。

 実は、このあたりの認識に海外と日本の間には大きなギャップがあるようだ。藤野氏によると、例えば世界経済フォーラムのメンバーからも「日本は第4次産業革命を理解していないのではないか。第4次産業革命は技術ではなくシステムの革命だ」といった辛辣な意見が寄せられたという。また、スウェーデンの政府関係者からも、「第4次産業革命の主役は中小製造業だ。ここをデジタルシフトさせることが最大の課題である」と、大手のみに偏りがちな日本の製造業の取り組みの問題点を指摘されたそうだ。

 これらを踏まえつつ藤野氏は、製造業が狙いとすべきDXへの取り組みを、短期的および長期的の2つの観点から次にように示す。

 まず短期的なDXの狙いとして重要となるのが「技術継承と事業の継続性の確保」「スマートなマザー工場によるスケールアウトできる企業能力の構築」「海外展開の際の円滑な技術移転の仕組みの構築」「M&A時の円滑なPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の4つである。これらのことからもいえるように、製造業のDXにおいて主目的となるのは「原価削減」などではない。藤野氏は「海外の製造業は、どれだけマーケットをスケールできるかに主眼を置いた戦略を強化しています」と強調する。

新興国と先進国の双方の製造業が共生する時代へ

 一方、長期的なDXの狙いとなるのは、製造業のサービタイゼーションによる産業構造の革新である。先進国の製造業による事業スケールアウトを可能とするシステム能力を、サービス事業として新興国の製造業へ応用していくという戦略に基づくものだ。「具体的には、製品設計、生産技術設計、製造管理、設備の運用・保守、エネルギー管理、各種製造管理技術など製造に関するあらゆる技術を、クラウド技術を活用してブラックボックス化し、製造ソリューションのサービス事業として展開していきます」(藤野氏)。そして、「製造ソリューションのサービス事業こそが、新興国と先進国、双方の製造業の成長と共生を可能とします」と説く。

 新興国では、先進国のノウハウを活用しつつ安価なコストで製品市場に進出する製造業がどんどん登場してくる。一方で先進国の製造業は、クラウドを使った成長力のあるサービス事業で安定した収益を上げて株式時価総額を高め、ひいてはグローバルのM&Aを主導していくというのが、藤野氏による今後の予測だ。

 そこで懸念されるのが日本の製造業のポジションだ。藤野氏は「製品市場と資本市場の両面から熾烈な競争を強いられる中で、このまま受動的な姿勢を続けていたのでは、日本の製造業は“板挟み”に陥る危険性があります」と警鐘を鳴らす。

 ただ、裏を返せば、先進国の製造業としての変革を遂げることができれば、日本の製造業にも大きなチャンスが広がる。「日本の製造業は、世界でも卓越した改善能力を持っています。現場から次々に生まれてくる新しいアイデアをソフトウェアやサービスに結実させることができれば、競争優位は十分に維持できると確信しています」(藤野氏)。

 その意味でもますます重要となるのが、製品設計からアフターサービスまで一貫したオペレーションを組織横断で実践していくマネジメントの徹底だ。あらためて周囲を眺めてみれば、かつては数千万円の投資を必要としたAIシステムをクラウドから月額料金で調達し、なおかつノンプログラミングで活用できる時代である。藤野氏は「必要なITをモジュール単位で導入し、組み合わせるというほんの少しの発想の転換を行うことで、高いパフォーマンスをもった基盤を活用できます。中小規模の製造業も新しいアイデアを思うままに実装することが可能となります」とエールを送る。

製造業に特化したCPSのサービス基盤

富士通 エンタープライズビジネスグループ 産業ソリューション事業本部 本部長代理の瀧澤健氏 富士通 エンタープライズビジネスグループ 産業ソリューション事業本部 本部長代理の瀧澤健氏

 それでは、製造業はいかなる方法でDXにアプローチすべきなのか。「データ活用による現場力強化が、DX時代の成功のカギとなります」と語る富士通 エンタープライズビジネスグループ 産業ソリューション事業本部 本部長代理の瀧澤健氏が紹介するのが、製造業に特化したCPS(サイバーフィジカルシステム)のサービス基盤「COLMINA(コルミナ)」である。

 製造現場のヒト、モノ、設備、システムのデータをつなげる「デジタルものづくり」、企業がつながる「サプライチェーン高度化」、ものがつながる「新しいサービスの創造」の3階層での“つながり”を実現することで、単なる生産効率向上にとどまらず、新たなビジネスモデルやエコシステムといった製造業の価値を生み出すことを目的とするものだ。

ものづくりデジタルプレイス「COLMINA」の概要 ものづくりデジタルプレイス「COLMINA」の概要

 具体的にCOLMINAはどんなサービスを提供するのだろうか。

 瀧澤氏は「富士通には自らが製造業として培ってきた知見と、多くの製造業のお客さまのシステム構築を担ってきた業種SEの知見があり、IT(情報技術)とOT(製造技術)を融合した豊富なサービスのシナリオをCOLMINAに搭載しています。設計開発から生産準備、製造、検査、出荷、保守保全にまたがるデータ活用方法を標準メニューとして体系化しており、設備やヒトの稼働率、仕掛品、工程進捗、納期、品質などを見える化、分析・予測することで、効率的な改善サイクルを実現します」と説明する。

COLMINAが提供するサービスのイメージ COLMINAが提供するサービスのイメージ

 もっとも、仮に同じ会社であっても工場が違えば、基準とするKPI(重要業績評価指標)やものづくりに対する考え方、現場で使う言葉からして違っているケースが少なくない。COLMINAはそうした工場ごとの個性や独自性にも柔軟に対応。データの見える化を自在にカスタマイズできる「Intelligent Dashboard」の仕組みも提供しているという。

見える化を自在にカスタマイズできる「Intelligent Dashboard」の例 見える化を自在にカスタマイズできる「Intelligent Dashboard」の例

 さらに、他社の同種のプラットフォームにはないCOLMINAならではの“隠し味”として瀧澤氏が訴求するのが「DXをやりやすくするための仕組み」だ。「富士通は、製造業のデータ標準化団体の活動に参画し、それに加えて、富士通が実践で得たノウハウを活かしオブジェクト、データ項目を追加したデータモデルをCOLMINAに搭載しています。多様なデータを相互に関連付けた状態で管理することが可能となっているのです。新たな目的や別の部門でデータを活用する際に、この仕組みが絶大な効果を発揮します」と強調する。

 また、エッジレイヤーからのスモールスタートを可能とするほか、「COLMINA Ready Program」ではCOLMINAとの連携実績がある生産現場の多種多様な機器やアプリケーションをパートナー製品として認定。それらの機器やアプリケーションから目的に沿ったデータをAPI経由で抽出する仕組みも提供しているという。

COLMINAの「DXをやりやすくするための仕組み」 COLMINAの「DXをやりやすくするための仕組み」

COLMINAの先行事例と今後の展開

 COLMINAは既に幾つかの製造業に先行導入され、実績を上げ始めている。

 三菱重工は、民間航空機部門における生産設備の稼働状況、進捗、不具合を可視化するシステムをCOLMINAで構築した。発生した異常への対応指示や、対処開始までの時間を大幅短縮するスマートファクトリー化を加速させている。

三菱重工の民間航空機部門における工場の見える化に採用された事例 三菱重工の民間航空機部門における工場の見える化に採用された事例

 また、電光板の部品製造から組み立てまで一貫して手掛けている中国の上海儀電(INESA)は、中国の国家戦略である「中国製造2025」に準拠したスマート工場評価基準を策定するとともに、それに基づく「モデル工場」を建設。COLMINAをベースとした製造ラインのリアルタイム監視により設備故障の予兆監視を実現し、ダウンタイムを10分からほぼゼロに短縮することに成功した。

 瀧澤氏は「COLMINAは工場内の改善を図ることをスタート地点としていますが、そこから得られたデータや知見を設計領域にフィードバックすることで、生産の自動化や自律化へと導いていきます。そして、今後の主戦場になると考えているのが、サプライチェーン全体をまたいだ生産、調達、在庫の最適化、出荷後の物流や販売系の在庫量、売れ行き、品質問題のリアルタイム監視などです。富士通はお客さまとともに新たなサービスを考えつつ、COLMINAを進化させ、革新的な事例を次々に作っていきます」と述べている。

野村総合研究所の藤野直明氏と富士通の瀧澤健氏 野村総合研究所の藤野直明氏(左)と富士通の瀧澤健氏(右)。日本の製造業が直面する課題の解決に向けてさまざまな提案を行っている

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年11月16日