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» 2019年11月11日 10時00分 公開

スマートファクトリー:工場の生産を担う人手作業、どうすれば品質を確保できるのか

工場の多くの工程が人手による作業に依存しており、熟練技術者のリタイアや熟練技能の継承が進まないことも相まって、製品の品質や歩留まりに影響を与えている。こうした課題に対して、AIなどの技術を用いることなく、市販のVGAカメラで解決できるソリューションがある。

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 近年、FAや産業用ロボットなどの導入拡大により工場の自動化が進んでいる。とはいえ、工場内においては、人手による作業に依存している工程がいまだに多いのも事実だ。

 そんな工場で今、大きな問題が顕在化してきている。これまで人手作業を担ってきた熟練技術者が高齢化し、次々にリタイアしているのだ。次の世代に熟練技能を継承できれば問題はないのだが、スムーズには進んでいない。リーマンショック時に人材採用を抑制せざるをえなかった影響で、中堅どころの作業者は極めて層が薄いからだ。その穴を埋める若手を採用したくても、今やあらゆる業界に広がる深刻な人手不足により、難しい状況にあるのは周知の通りである。

 結果として、工場内の作業者は、期間労働者やアルバイト、外国人労働者などが混在し、多様化が進んでいる。当然のことながら、作業品質にバラツキが大きく、製品の歩留まりにも大きく影響する。やっと作業に慣れて品質が安定してきたところで作業者が辞めてしまうなど、人材の定着率の低さも悩みのタネだ。

 では、打ち手がないのかといえばそうでもない。作業者が標準作業から逸脱した場合にアラートを出したり、熟練技術者の作業内容をお手本として技能伝承に役立てたりすれば、課題解決に大きく前進する。これを、AI(人工知能)などの技術を用いずに、市販のVGAカメラで実現するソリューションがある。以下に具体的に紹介していこう。

標準手順から逸脱した作業の検出・確認が困難

 近年、工場内で働く作業者の多様化に伴い、製造業が直面している人手作業の課題をあらためて整理しておきたい。

 製造現場では、あらかじめ定められた標準手順はあるものの、実際には、作業者によって作業手順にバラツキがあり、これが歩留まりを低下させる原因となっている。しかし、どの作業工程で標準手順からの逸脱が起きているのかを、具体的かつ正確に検出・確認するのは難しい。

 日立製作所 産業・流通ビジネスユニット TSCMソリューションセンタ 主任技師の鈴木秀哉氏は、「注意を要する作業工程を経験的に特定できていたとしても、実際に作業者がそこで決められた手順を正しく行っているのかどうか、管理者が付き切りで監視しているわけにはいきません。また、仮に監視したとしても見落とすことがありますし、遠目からでは判断できない細かい作業もあります」と指摘する。

 そもそも、標準手順が不完全なレベルでしかできていないという問題もある。一通りの作業マニュアルは用意されているものの、詳細な手順までは定義されておらず、そこに書かれていない“行間”をどう判断し、どのように動くのかは個々の作業者に委ねられており、結果として作業品質にバラツキが生じてしまうのだ。「かつては熟練技術者が若手に寄り添い、手取り足取りやり方を教えるという形でそのギャップを埋めてきましたが、それに代わる技能伝承の仕組みがありません」と鈴木氏は語る。

日立独自の画像処理技術で作業者の動線を可視化する

 上記の課題を解決すべく日立が提供しているのが、デジタルイノベーションを加速するLumadaソリューションの「日立品質制御支援システム(DSC/QC:Hitachi Digital Supply Chain / Quality Control)」である。工場における品質維持対策として、一般的に設備やセンサーによるエラー監視が行われているが、DSC/QCは作業者の動線に注目することで作業の異常検知を行うことが最大の特長となっている。作業現場における「標準作業からの逸脱」「危険作業」「潜在的ミス」といった、これまで検知が難しかった問題点を見える化することにより、品質向上を図ることが可能となる。鈴木氏は「作業者の動きをモニタリングし、標準手順と異なる動きを検知することで、誰がその作業工程に入ったとしても、正しい手順で作業ができるようになります」と強調する。

 日立製作所の中でDSC/QCのベースとなる技術が開発されたのは2016年頃のことだ。同社 産業・流通ビジネスユニット TSCMソリューションセンタ 技師の野村寛通氏は、「DSC/QCでは作業者の動線を可視化する仕組みとして、日立の研究所が独自開発した画像処理技術を採用しています。カメラで撮影した画像の中で対象物がどこにいるのかを遅延なく特定し、常に追い続けることができます」と説明する。

 これによりDSC/QCは、作業者の標準手順からの逸脱などをリアルタイムに検知し、パトランプを点灯させたり、責任者にメールを発信したりといった、製造現場にあわせたアラートを即時に出すことを可能としている。例えば「取り付けるべき部品を落とした」「本来3回締めなければならないネジを2回しか締めなかった」など、不良品の発生につながる作業異常を検知すると同時に、対処を促すことができる。DSC/QCではこの技術を「作業異常検知サービス(QC-AD)」として提供している。

「DSC/QC」の「作業異常検知サービス(QC-AD)」の概要 「DSC/QC」の「作業異常検知サービス(QC-AD)」の概要

 ちなみに、DSC/QCで使用するカメラは決して特殊なものである必要はない。「家電量販店などで市販されているVGAクラスのUSBカメラでも問題なく性能を発揮する」(鈴木氏)とのことだ。通常の作業工程であれば、DSC/QCの標準スピードである10fpsで1フレームごとに高速処理し、対象となる作業者の動線を検出できる。素早く細かな作業を行う工程であれば最大30fpsのスピードまで対応可能だ。

 作業者の手順の逸脱を検出するためには、作業工程によっては作業者の動線だけでなく手の動きなども検出する必要が出てくる。そこで役立つのが、カラーフィルターを用いて特定の“色”を追尾する機能である。例えば、作業者に特定の色の付いた手袋を装着させることで手先の動きを正確に追いかけたり、製造装置の着色された一部のパーツの動きだけを追いかけたりすることが可能となるのだ。

 また、大量の画像を学習させるといった下準備に手間や時間をかける必要がないことも、製造現場にとって大きなメリットとなる。先述した通りカメラも市販品を利用できるので、PoC(Proof Of Concept /概念実証)における製造現場への導入が容易であり、その後の本格導入の立ち上げも素早く行えるのである。

熟練技術者の動きと自分の動きを目で見て比較

 DSC/QCの特長はこれだけではない。野村氏は「DSC/QCは、分析データを蓄積して活用できることも大きな強みです。例えば、作業の異常を検知した場合でも、後の作業工程に大きな影響を与えないレベルであれば、工程を止めることなく、作業監督者が蓄積したデータを後からまとめて確認し作業改善に役立てることもできます」と語る。

 確かに、それほど重大な不良を引き起こす作業異常ではない場合、その都度ラインを止めるなどの即時対処を行っていたのでは、かえって生産性を低下させてしまうことがある。作られた製品と作業異常がしっかりひも付けられ、トレースできる状態にあれば、最終検査工程でのスクリーニングによって対処できるので、不良品を出荷してしまう心配はない。そして、その日の作業の問題点をまとめて作業者にフィードバックすれば、次の日から改善すべきポイントを監督者から作業者に、より的確に指示することも可能となる。

「DSC/QC」の機能を活用した異常検知によるリコール防止、次工程への伝達 「DSC/QC」の機能を活用した異常検知によるリコール防止、次工程への伝達

 なお、こうした「作業者を育成する」という観点に立ち、日立はDSC/QCの機能の一つとして「作業者習熟支援サービス(QC-PS)」も提供している。「ベテラン作業者の作業動線をお手本とし、作業者が自分自身の作業動線を動画で比較しながら確認し、正しい手順を学んで習熟度を向上するものです。動画の横に、作業手順書や参考資料などのドキュメントの該当箇所を開いて表示することも可能で、『熟練技術者の技能を伝承する仕組みがない』というこれまでの課題をQC-PSによって解決できます」(野村氏)という。

 言葉では伝えづらい作業手順の説明を、よりイメージしやすい動画によって行うため、外国人労働者や海外工場で現地採用した作業者へのトレーニングにも非常に役に立ち、短時間での作業習熟が期待できる。

「DSC/QC」の「作業者習熟支援(QC-PS)サービス」の概要 「DSC/QC」の「作業者習熟支援(QC-PS)サービス」の概要

PoCを重視した着実な導入ステップを進める

 現在、DSC/QCはどのような形で企業への導入が進んでいるのだろうか。

 日立はDSC/QCをソフトウェアパッケージ化した売り切り型のビジネスによる拡販をめざすのではなく、地道なSI(システムインテグレーション)の一環として展開している。これがDSC/QC導入の基本パターンとなるわけだ。鈴木氏は「既存の生産ラインや設備に手を加えることなく、カメラを設置するだけで導入可能な手軽なシステムではありますが、実際の製造工程に適用し、成果を上げるまでには、さまざまなカスタマイズやチューニングなどを繰り返し行わなくてはなりません。その意味で私たちが最も重視しているのはPoCのプロセスです。お客さまとともに課題をしっかり共有し、課題解決のための戦略を立て、システムの導入効果を実証することで、着実に実用化のステップを進めていきます」と述べる。

「DSC/QC」の全体の枠組み 「DSC/QC」の全体の枠組み

 こうした背景もあり、DSC/QCの本格的な立ち上がりまでには慎重なステップを踏んだ。日立がDSC/QCの提供を開始したのは2017年のことだが、早期に導入した企業においても、これまでの多くの時間をPoCに費やしてきたという。

 だが、そうした中にも徐々に実用フェーズに踏みだす企業が現れ始めている。傾向として目立っているのは、自動車業界を中心とする組立製造業である。細分化された作業手順の標準化が求められる他、製造拠点のグローバル展開も進んでいるだけに、もともとDSC/QCのようなシステムに対する高い潜在ニーズをもっていた企業群だ。

 また、日立グループ内でもDSC/QCのPoCが進められており、今後順次実用フェーズに移行するという。

 一方、新規の引き合いで増えているのが食品メーカーで、「展示会などでも質問を寄せられることが多いです」(鈴木氏)。実際、食品の製造においても原材料の加工、調理、盛り付け、包装など、機械による自動化が困難で人手作業に頼っている工程は非常に多い。なおかつ十分な数の働き手が確保できない中で、作業者ごとの品質のバラツキの解消や作業スピードの向上は喫緊の課題となっているのである。

 鈴木氏は、今後のDSC/QCの定着に向けて、「こうした多くのお客さまのご意見を聞きながらDSC/QCのさらなる機能強化を進めるとともに、既に実用フェーズに移行したお客さまについても、他の製造工程への横展開を後押ししていきます」と語る。日本の製造業が抱える構造的な課題を根本から解決するソリューションとして、DSC/QCはますます注目されることになりそうだ。

※本稿は、TechFactoryからの転載記事です。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年12月10日