ユニクロのサプライチェーン改革、デジタル技術で“トヨタ生産方式の理想”実現へサプライチェーン改革(3/4 ページ)

» 2019年11月15日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

「お客さまがほしいものがいつもある」のためにモノづくりを全て変革

photo ファーストリテイリンググループ上席執行役員でサプライチェーン改革プロジェクトをけん引する神保拓也氏

 さて、これらの提携によって倉庫全自動化を目指す中で、ファーストリテイリングが達成したいものは何なのだろうか。ファーストリテイリンググループ上席執行役員でサプライチェーン改革プロジェクトをけん引する神保拓也氏は「商売の原理原則ではあるが『お客さまがほしいものがいつもある』ということが目指す点だ。これを企業の取り組みに当てはめると『無駄なモノを作らない』『無駄なモノを運ばない』『無駄なモノを売らない』ということになると思うが、従来のファーストリテイリングは急速に事業を拡大する中で、目指すべき姿に対して程遠い状況だった」と語る。

photo ファーストリテイリングが目指すもの 出典:ファーストリテイリング

 ファーストリテイリングは11カ国に点在する240以上の工場で服を作っている。製造する服の数は年間で13億を超え、26カ国3500店以上の店舗で販売しているという。膨大な量で複雑に絡み合うサプライチェーンを持つ中で「『リードタイムが長い』や「販売計画の精度が低い』『物流費の高騰』など数多くの問題が顕在化してきた。当然サプライチェーンの改善にも以前から取り組んできたが、制度疲労などもある中で大きな改革につながるような取り組みは行えなかった状況がある」と神保氏は当時の状況を説明する。

 ただ、ここ数年でデジタル技術が大幅に進歩したことで「やりたいと考えていたことが現実的にできるようになってきた。ファーストリテイリングでは情報製造小売業を目指しているが、企業活動のあらゆる情報をリアルタイムでデータとして集め、それを活用していくことで、目指す姿の実現が見えてきた」と神保氏は語る。

 具体的には、店舗などから得た世界中の顧客情報、物流や工場などの情報をリアルタイムでグローバルヘッドクォーターに集積し、このデータを基に可視化する。また一元化したデータを基にAIなどにより分析を行うことで、最適な知見を導き出し、リードタイムの削減と在庫の最適化などを実現する。これにより店舗やECサイトで「欲しいものがいつもある」を実現するという。

photo ファーストリテイリングが取り組むサプライチェーン改革の全体像(クリックで拡大)出典:ファーストリテイリング

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