ユニクロのサプライチェーン改革、デジタル技術で“トヨタ生産方式の理想”実現へサプライチェーン改革(4/4 ページ)

» 2019年11月15日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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企業活動の全てをデジタル化

 「サプライチェーン情報の可視化・一元化」については、社内の部門を超えた情報基盤を用意する。顧客情報、企画、生産、物流、販売というサプライチェーンにかかわる情報を全て統合情報基盤に収納し、全員が同じ情報を同時に見ることで、意思決定の精度を上げることを目指す。

photo サプライチェーン情報の可視化・一元化に向けた取り組みのイメージ図(クリックで拡大)出典:ファーストリテイリング

 サプライチェーンにおける「リードタイムの削減」に向けては、モノづくりにおける全工程にデジタル技術を導入し自動化や効率化を進めていく方針である。例えば、「従来は製品企画を行うのに実物サンプルを海外工場に作らせて検討するが、このやりとりに1カ月以上かかることが多く場合によっては数カ月かかるなど多くのロスを生んでいた。これらを3D CADを全社的に導入することで、データのやりとりである程度の領域は解決できるようにする」(神保氏)。これらにように各工程に先進技術を取り入れていくことで、大幅にリードタイムを削減していく方針だ。

photo リードタイム削減への取り組み(クリックで拡大)出典:ファーストリテイリング

 「過剰在庫や欠品の削減」については、販売計画と物流計画、生産計画の不一致が大きな問題となっているため、リアルタイムの情報共有に加えて、予測精度の向上や実際の物流や製造のリードタイム短縮がポイントになる。「AIなどを活用した高精度な計画を作る一方で、フレキシブルな生産体制や物流体制が必要だ。例えば、従来は物流面ではピッキングが大きな負担となっていたために一定量の製品を店舗に配送することが多かったが場合によっては店舗側が必要としていない製品を送ってしまい、無駄を生じていた面があった。自動倉庫でピッキングの負担を軽減することで店舗に必要な商品を必要な分だけ送ることができるようになる」と神保氏はデジタル技術と自動化技術それぞれの価値を強調している。

photo 過剰在庫、欠品削減への取り組み(クリックで拡大)出典:ファーストリテイリング

 神保氏は「これらの取り組みはファーストリテイリング1社で行えるものではない。今回の2社に加えてさらにパートナー強化に取り組んでいく他、人材採用の強化にも取り組んでいく」と述べている。


 さて、ファーストリテイリングが取り組むこれらのサプライチェーン改革や目指す点は、「7つの無駄の削減」や「ジャストインタイム(JIT)」など、製造業になじみが深いトヨタ生産方式とも多くの共通点がある取り組みだといえる。ただ、重視すべきポイントはファーストリテイリングの取り組みがデジタル技術をベースとしてリアルタイムデータを基にグローバルで行われているという点だ。「従来やりたかったができなかったことが、先進技術を使えばできる環境が生まれてきている」(神保氏)とする通り、デジタル技術をベースにしたサプライチェーンの新たなステージが広がってきたといえるだろう。

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