インタビュー
» 2019年11月21日 06時00分 公開

オートモーティブ インタビュー:材料頼みの軽量化は「限界」、重量半減の飛び道具とは (2/2)

[齊藤由希,MONOist]
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MONOist ジェネレーティブデザインで生まれるのはとても複雑な形状ですが、どのように製造するのですか。

リース氏 3Dプリンタが最適なソリューションだ。ただ、高価で出力が遅いという課題がある。金属3Dプリンタの出力が今の100倍速くなれば、自動車業界でジェネレーティブデザインへの投資が加速するだろう。

 Airbus(エアバス)とのプロジェクトでは、3Dプリンタではなく砂型鋳造を採用した。エアバスは、フライトアテンダントが座る折りたたみ椅子付きのパーテーションをジェネレーティブデザインで設計し、重量半減に成功した。ただ、ジオメトリとしては大きかったため、3Dプリンタでは成形できなかった。鋳造ではパーツに一定の間隔を設ける必要があるので、ジェネレーティブデザインの結果を鋳造向けに調整するためのレファレンスデザインを提供した。

 こうしたサポートがあれば、現実の製品に使うデザインとして有用だと考えている。ジェネレーティブデザインがどのように機能するかエンジニアに理解してもらえれば、将来は全ての人が使うようになるだろう。ジェネレーティブデザインを使わないエンジニアは、計算機を使わない会計士のようになる。

ジェネレーティブデザインを採用したエアバスのパーテーション(クリックして拡大) 出典:エアバス

MONOist トポロジー最適化も自動車業界で使われ始めていますが、ジェネレーティブデザインとは何が違うのでしょうか。

リース氏 両方とも重要な手法だが、全く違うものだ。トポロジー最適化は既にある設計から材料を省くが、ジェネレーティブデザインは何百という選択肢を提供する。

 ジェネレーティブデザインは、ジオメトリではなく問題設定からスタートする。最初の時点ではジオメトリはなく、問題を設定してどのように解を出すのかを人間が設定する。すると、アルゴリズムは問題を解決できる全てのジオメトリを探索する。このとき、生産上の制約も設定することが可能で、無制限にすれば最も課題解決に適した有機的な形状が解として出てくるが、三軸の切削加工機しかなければその条件に合わせてジオメトリを提案する。トポロジー最適化は、既に存在しているジオメトリに、形状を最適化するアルゴリズムを適用する。最初に答えがあり、それを部分的に厚くしたり破損するまで薄くしたりするというものだ。

 ジェネレーティブデザインで設定する問題というのは、椅子を例にすると、人が座る平面を特定すること、どれだけの体重がかかるか、座ることでどれだけの力が加わるか、人の体の幅はどうか、どこまで背もたれが必要か、といった項目だ。こうした要件を満たす選択肢を探索する。時には100万通りの選択肢が出てくる。デンソーやVW、GMの事例も問題設定からスタートするのは同じで、自動車では重量をどのように減らすかだけでなく、安全性や性能を犠牲にしないことを追求する。シートベルトのブラケットの事例では、軽量化できただけでなく従来と同等の耐久性も確保した。衝突試験では、車両のフロアを引き裂くほどの強度があった。自動車業界では耐久性も重視される。

 エンジニアはマインドセットを変えなければならない。エンジニアはエンジニアリングを学んでいる。ジェネレーティブデザインでも、エンジニアリングの知識は使うことができる。

MONOist トポロジー最適化を採用しているあるサプライヤーは、トポロジー最適化で結果が出た形状は他の部品との干渉などの理由でそのまま自動車に使うことができず、人力で修正が必要だと言っていました。ジェネレーティブデザインではどうでしょうか。

リース氏 ジェネレーティブデザインでは「キープアウトゾーン」を定義し、他のジオメトリに干渉しないよう設定することができる。ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いはそこにある。また、ジオメトリは後から編集したり、修正したりすることが可能だ。

MONOist ジェネレーティブデザインを使う人を増やすための戦略はありますか。

リース氏 ジェンレーティブデザインはクラウドベースのCAD/CAM/CAEシステム「Fusion 360」の機能の1つだが、学生や売り上げが10万ドル以下のスタートアップ企業には無償でツールを提供している。また、ツールで生み出した造形を使ったビジネスが、10万ドル以下の収益であれば無償で使うことができる。ジェネレーティブデザインは計算集約的なプロセスなので、従量課金制を採用している。オートデスクはここ3〜4年でサブスクリプション化を進めた。以前は5万ドル以上かかるツールを全てそろえる必要があったが、今は年間500ドルでFusion 360の全ての機能にアクセスできるビジネスモデルにしている。こうしたビジネス体系が、ジェネレーティブデザインの人口増加につながるとみている。

MONOist 2019年9月にANSYSとの協業を発表しました。

リース氏 まずは3Dビジュアライゼーションソフトウェア「VRED」で協業を始めている。ジェネレーティブデザインで問題を設定するときには、エンジニアはパフォーマンスに関わる全ての要素を理解しなければならない。また、ANSYSが注力する分野の1つが自動運転開発だが、自動運転開発とビジュアライゼーションが連携することは重要になっていく。ANSYSとは長い間コラボレーションしており、共通のお客さまもいる。共通のお客さまが多いところから、パートナーシップを結ぶ。自動車業界に対しては、すぐにこの協業のメリットを提供していけるだろう。



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