特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年12月10日 11時00分 公開

いまさら聞けないEUROMAP入門(2):「K 2019」で見た、EUROMAPで「つながる」射出成形機の進化 (1/3)

射出成形機などプラスチックやゴム用加工機などでスマート化に向けて注目されている通信規格が「EUROMAP 77」である。本連載では「EUROMAP」および「EUROMAP 77」「EUROMAP 83」とはどういう規格なのかについて紹介している。第2回では、これらの規格によって射出成形機がつながるメリットについて、国際プラスチック・ゴム産業展である「K Trade Fair 2019」の出展内容から紹介する。

[仲野雄三/ベッコフオートメーション,MONOist]

 ドイツが提唱する「インダストリー4.0」への取り組みは世界に浸透しつつある。これを分かりやすく言い換えるなら「『つながる』モノづくり現場の実現」である。その流れの1つとして、欧州ではインダストリー4.0にて推奨通信プロトコルとされている「OPC UA」の使用が進んでいる(※)

(※)関連記事:「OPC UA」とは何か

 プラスチック・ゴム業界においても、「OPC UA」をベースとし、MES(製造実行システム)と射出成形機を「つなぐ」通信規格である「EUROMAP 77」、さらにそれを補完する「EUROMAP 83」が登場し、影響力を強めているところである。

 これらの流れの中で本連載第1回では、業界で注目されるこれらの新しいEUROMAPの規格について詳しく解説した。第2回となる本稿では、EUROMAPにまつわる「つながる」のさらなる進展状況について、射出成形機メーカーの動向を中心に、2019年10月にドイツのデュッセルドルフで開催された国際プラスチック・ゴム産業展「K Trade Fair 2019」の出展内容から読み解いていく。

≫連載「いまさら聞けないEUROMAP入門」の目次

「K Trade Fair 2019」とは何か

 「K Trade Fair 2019」(以下、K2019)は2019年10月16〜23日に、ドイツのデュッセルドルフで開催されたプラスチックおよびゴム産業の展示会である。日本の「IPF JAPAN(国際プラスチックフェア)」、米国の「NPE」に並ぶ世界3大プラスチック・ゴム産業展の1つだとされ、3年に1度の開催となっている。1952年の開催当初、K展は日常生活で使用するプラスチック製品の紹介が主流の単なるドイツ国内向けの展示会だった。しかし、業界の進化と国際化、多角化に伴って発展し、今では世界最大クラスの規模の展示会となっている。

 展示会場は19棟で構成され総展示面積は約25万m2、世界33カ国から3330社もの会社、団体が出展し、入場者数は主催者発表では22万5000人だった。2017年に開催された日本の「IPF JAPAN 2017」の3倍以上の広さ、4倍以上の出展者数、5倍以上の入場者数であることを考えれば、この規模の大きさが理解できるだろう。

 つまり、K2019を見ればプラスチック関連業界における最新の世界の動向を知ることができるのだ。本稿では筆者がK2019から感じた射出成形機メーカー各社の現状と今後の動きについて、EUROMAPを軸に紹介する。

取り組みの中心地である欧州各社の現状

 まずは最先端を行く欧州企業の状況について紹介する。前回のK2016では、主要メーカー各社が「EUROMAP77 Release Candidate(RC)1.00」を使って各社のデータをダッシュボードに表示するデモを行った。その後の進展はどうなっているのだろうか。欧州を代表する射出成形機メーカーの中から特にENGEL AUSTRIA、ARBURG、WITTMANN BATTENFELD、KraussMaffei Technologiesの4社の出展内容を紹介する。

周辺機器連携を進めるENGEL AUSTRIA

photo ENGEL AUSTRIAのブース(クリックで拡大)出典:筆者撮影

 ENGEL AUSTRIAは、AI(人工知能)を使ってステータスの監視を行う「iQ process observer」、最適な可塑化時間の決定をサポートする「iQ melt control」、製品重量の変動を自動的に補正する「iQ weight control」、理想的な型締圧を自動的に決定する「iQ clamp control」、自動的に効率的な温度制御を提供する「iQ flow control」などを搭載した射出成形機をデモ展示した。これらのデモから、同社は自動化やアシスト機能開発に特に力を入れていることが伺い知れる。中でも「iQ flow control」は、EUROMAP82.1にて接続された金型温調器が使われており、既に1000台以上に搭載されるなど大変好調な販売実績だという。

 またグループ会社「T.I.G」によるMESシステム「TIG authentig」と、自社および他社のブースにある複数の射出成形機をEUROMAP77にて接続してリアルタイムデータの表示を行い、オープン性を強調した。総じて、EUROMAPを活用してインダストリー4.0が目指す「つながる」への取り組みを着実に行っていることがよく分かる展示内容だった。

マシンのスマート化を強化するARBURG

photo ARBURGのブース(クリックで拡大)出典:筆者撮影

 ARBURGは、可塑化能力や 保圧時間などのバラメータを自動化する「Plasticising Assistant」、金型の樹脂充填シミュレーションをコントローラーに統合し、金型の充填プロセスの最適化に貢献する「Filling Assistant」など自動化やアシスト機能を搭載した射出成形機をデモ展示した。上位システムとの連携については、IoTゲートウェイ「ARBURG IIoT Gateway」によって接続する自社製の「ARBURG Host Computer System」(ALS)をデモ展示していたが、EUROMAP77などの表現は展示内容には見られなかった。

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