特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

「K 2019」で見た、EUROMAPで「つながる」射出成形機の進化いまさら聞けないEUROMAP入門(2)(3/3 ページ)

» 2019年12月10日 11時00分 公開
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スマートファクトリーの実現へ、加速する取り組み

 前回のK2016では、キャッチコピーとして「インダストリー4.0」という言葉を数多く見かけたが、今回は「インダストリー4.0」のキャッチコピーそのものを展示会場で見かける回数は減った。既にその概念は常識となり、より具体的な取り組みへと進展しているといえるだろう。

 今、業界で注力されるのは、工場内の装置や設備がEUROMAP77などで「つながる」ことで、それぞれの品質、状態が見えるようになり、設備同士や人と装置が協調して効率化をめざすスマートファクトリーの実現である。

 そのために自社装置をどのように進化させるべきか。K2019では、射出成形機メーカー各社が手探りながらも着実に進めてきた開発の歩みが確かに映されていた。装置が自律的に設定や人間のアシストを行う「スマートマシン」の機能は、十分ではないながらも欧州企業を中心とし、次々と発表されている状況だ。今後この「つながる」流れは、ENGEL AUSTRIAの例にある「iQ Flow control」のように周辺機器を巻き込みながら、ますます加速していくだろう。

EUROMAPからOPC規格へ

 普及するEUROMAPの一方で2019年11月1日には大きなニュースが舞い込んできた。EUROMAPに代わる以下のOPC規格のRelease Candidateが発表されたのである。

  • OPC40083(元のEUROMAP83) RC1.02
  • OPC40077(元のEUROMAP77) RC1.01
  • OPC40082-1(元のEUROMAP82.1) RC1.01

 これはEUROMAPが国際規格化することを意味している。これらの新規格は3カ月のコメント期間を得て、2020年1月に正式発行されることになっている。もともとドイツの組織であるドイツ機械工業連盟(VDMA)のEUROMAP部会がOPC協議会と共同部会を作り、そのままOPC協議会の部会となった。ここで策定された、OPC UAをベースとしたEUROMAPが、そのままの形で国際規格化され、名称もOPC400xxと定められたというのが今回の背景のようだ。

 VDMAのEUROMAPの担当者であるハラルド・ウェーバー(Harald Weber)氏は今回の発表について「各地域(国家)での類似規格の乱立を防ぐことが主な目的である」とコメントしている。今後、各地域で射出成形機の通信規格として「異なる名称」の規格が策定されていく可能性が高いが、名称は異なっていても定義ファイルにOPC UAの標準規格と同一のものが使われていれば、相互接続性は確保できるため、基準となる定義ファイル(正確には定義ファイルのNameSpaceURLとXMLファイル)をOPC UAの標準規格として発表したということになる。

 では、EUROMAPの名称は今後どうなるのだろうか。その答えはEUROMAPという名称は今後使用せず「OPC400xx」またはその地域の名称を使うようになるということだ。VDMAでのEUROMAP77を例にとると「OPC 40077 (Edition 1.1) and VDMA 40077:2019-11」というOPC規格とVDMAのそれぞれの規格名になる。

 また、仕組みとしての新しい点は、RCの発表から3カ月のコメント期間を設けたことだ。OPC協議会の会員はその間、そのRCに対して意見を言うことができる。それが今後どのように影響するかは不明だが、少なくとも他国や他の機関、企業から意見を集約できるようになった意義は大きいだろう。


 第2回はK2019における「EUROMAP」の動向と、新たな規格の動きについて紹介した。第3回では「EUROMAP」の動きを含めたPCベースでの射出成形機の最新技術動向について紹介する。

≫連載「いまさら聞けないEUROMAP入門」の目次


著者紹介:

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仲野雄三(なかの ゆうぞう) 
ベッコフオートメーション ソリューション・アプリケーションエンジニア

 信州大学繊維学部繊維システム工学科卒業 ドイツ系薬品メーカーの日本法人にて基板製造用装置の制御系及びプロジェクトマネジメントを担当する。

 その後2015年にPC制御に特化したドイツの制御装置メーカーであるベッコフオートメーションに入社。プラスチック関係の産業を主に担当し、EtherCATを軸としたPC制御の普及に務めている。



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