連載
» 2019年12月05日 10時00分 公開

よくわかる「標準時間」のはなし(12):作業分析で想定以上の成果を導き出す「VTR分析」活用のススメ (1/4)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第12回は、デジタルカメラなどで録画した映像を使って作業者の行動や動作を分析する「VTR分析」について説明する。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]

⇒連載『「よくわかる「標準時間」のはなし』バックナンバー

 従来の磁気テープへの録画がデジタル化されたことで、格安でさらに取扱いが容易になったこともあり、VTR(Videotape Recorder)による動作分析が以前にも増して利用される頻度が高まってきました。このVTR分析は、作業者の行動や動作をある程度細かく分析して、作業方法や動作の改善をした後に、さらに徹底して詳細に分析して、動作そのものの改善や動作時間の見積もりなどを行う手法として脚光を浴びています。

 また、VTR分析は、後で何回でも作業を再現して、分析研究ができるために非常に便利で有効な手法でもあります。あまりにも手軽なために興味本位に使用しないよう注意すれば、現場の管理監督者にとっては、IE(Industrial Engineering)推進の大きなツールとなります。VTR分析は、動作分析の種類の一手法ですが、その位置付けとしては図1の通りとなっています。

図1 図1 動作分析手法の分類

1.VTR分析

 VTR分析と他の手法との大きな違いは、手軽に録画や再現ができて機動性に優れている点にあります。また、現状を直接撮影するわけですから、正確な記録となることはもちろん、記録した画像を録画時と同じ速度(必要に応じてスロー再生も可能)で、何回でも連続して正確に再生できる機能を持っています。

 また、タイマー機能を利用して画面へ経過時間を写し込めば、正確に所要時間を把握することもできます。このため、録画した記録を分析する段階では、他の手法の分析と異なり非常に簡単で、さらに再現の際、大勢の人が参集して客観的に検討でき、その納得性にも絶大なものがあります。このような点からVTR分析は、今後のIE推進の分野で、非常に重要な手法の一つとなってきています。

1.1 VTR分析の特徴

  1. 現状の情報が正確にかつ、多量に把握することができる
    • (a)周りを取りまく目に見えるものは全て、音声も含めて記録される。また、録画(記録)中の撮影者の失敗、作業の異常動作や現象などは容易に除外や編集をすることができる
    • (b)事前には予測不能(想定外)の事象も、発生時点に観測することができる
    • (c)紙、鉛筆、時計(ストップウォッチ)を用いる方法のように、結果に測定者の主観が入ったり、また、観測漏れも発生したりしない
    • (d)自動録画が可能なために、作業者に与える心理的影響も少なく作業者の自然な状態を記録することができる。ただし、この際は、事前に職場の管理監督者と作業者に事前に録画目的などを説明しておく必要がある
    • (e)記録した画像を録画時と同じ速度で正確に再生できるので、タイマー機能を利用できるがそのままストップウォッチでの測定もできる
    • (f)VTRの機能から、おおむね60分の1秒の正確さで事柄を記録、分析できる
  2. すぐに録画画像の再生が容易である
    • (a)録画後すぐに再現できるので、短時間で改善案などを作成できる。また、以前のフィルム分析のようにフィルムの現像などの待ち時間が不要なため、撮影と再現の時間的タイムラグによる改善意欲の減少が生じない
    • (b)何回でも手軽に再現できる。
    • (c)事前に作業手順や作業内容などを聞き取り、撮影時にナレーションとして音声を録画しておくことで、撮影後に作業者をわずらわすことなく作業の各ステップを詳細に研究できる
    • (d)組作業の全体を同時に撮影することで、組作業の特徴でもある不規測なサイクルの分析が容易にできる
    • (e)データの解析中、任意に動画を停止することができ、静止画像が得られるために、より詳細な検討ができる
    • (f)現実にその作業を見るよりもはるかに詳しい分析、検討ができることや見逃しも防げる。現場で作業を撮影しているよりも、該当作業を虫眼鏡でみているような効果を生み出すことができるので、より細部にわたって分析することができる
    • (g)日常の作業を妨げることなく、必要なときに何度でも繰返して観測分析ができる
    • (h)ストップウォッチで測定できないような、より細かな時間分析が可能となる
    • (i)再生画面を見ながら有効作業・無効作業を判定しながら測定ができる
    • (j)どこでも、例えば現場の倉庫、事務所、会議室などでも、周りを暗くすることなく再生することができる。このことにより、ストップウォッチで計測したり、ペンで記述したりすることが容易にできる
  3. 客観的な検討ができる
    • (a)一度に大勢の人が集まって同じ作業を研究することができるので、参集した全員の納得性を向上でき、いろいろな面において理解を得やすくなる
    • (b)現場側からの苦情がある場合、録画による確実な記録があるから、ほかの手法と比べても客観的な事実を中心に討議することができる
  4. 費用がかからない
    • (a)録画したデータを保存する場合を除いて、何度でも消去・録画が可能であるから、以前のフィルムやビデオテープによる録画に比べてコストが極めて少なくてすむ
    • (b)分析に必要な情報を短時間に1人で収集でき、また自動で録画ができるから人が撮影に費やす観察工数が少なくてすむ
  5. 取扱いが容易である
    • (a)小型、軽量であるからどこでも持ち運べるし、録画のためのセットも簡単である
    • (b)録画、再生に特殊技術を必要としない

1.2 VTR分析の欠点

  1. 特に暗い場所の録画は困難である場合が多い
  2. 極端に明るい被写体には使用できない
  3. 肉眼に比較して視界がせまい
  4. 作業者の動く範囲などから、録画する領域をあらかじめよく検討しておかなければ、後で追加の撮影などを余儀なくされてしまう
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.