PFNがChainerの開発を終了しPyTorchへ移行、西川社長「非常に大きな決断」人工知能ニュース

Preferred Networks(PFN)は2019年12月5日、同社が開発する深層学習フレームワーク「Chainer」のメジャーアップデートを終了すると発表した。

» 2019年12月06日 06時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 Preferred Networks(PFN)は2019年12月5日、同社が開発する深層学習フレームワーク「Chainer」のメジャーアップデートを終了すると発表した。バグフィックスおよびメンテナンスは継続する。同社の研究開発基盤は、Chainerから米Facebookが主導する深層学習フレームワーク「PyTorch」へ順次移行する。

 同日に公開された「Chainer v7」が最後のメジャーリリースになる予定だ。ChainerファミリーのライブラリであるChainerCVやChainer Chemistry、ChainerUI、ChainerRLも同様にメジャーアップデートを終了する。一方で、GPU向け汎用配列計算ライブラリ「CuPy」や機械学習におけるハイパーパラメータ自動最適化フレームワーク「Optuna」はこれまで通り開発を継続する。

 PyTorchへ移行する背景として、PFNは「深層学習フレームワークが成熟したことで、深層学習フレームワークそのものが開発の競争力となっていた時代は終わりを迎えつつある」と指摘。「細かい差異による差別化競争を継続するよりも、深層学習技術のさらなる進化に向け、ユーザーが選ぶ深層学習フレームワークにおいてコミュニティを継続的に発展させ、健全なエコシステムを築いていくことが重要」としている。

 PyTorchをChainerの後続として選択した理由については、「Chainerの開発思想に最も近い」ためだという。Chainerは計算グラフの構築と順伝播処理の実行を同時に行う“Define-by-run”方式を提唱した先駆け的存在で、PyTorchも同じくDefine-by-runを志向している。PyTorchは近年、深層学習の学術論文に最も頻繁に用いられており、「PyTorchに移行することで、PFNは既存のChainer資産を活用しつつ、最新の研究成果を効率的に取りこむなどして、自らの研究開発を加速することが可能」とする。

 PyTorchへの移行に関して、同社はドキュメントおよびライブラリを公開した。自社開発を行う深層学習プロセッサ「MN-Core」は、PyTorchのサポートなどを推進する。

 PFN社長の西川徹氏は「ChainerからPyTorchへ移行することは、PFNにとって非常に大きな決断」とコメント。「より競争力の源泉となる分野に開発リソースを集中投下する」としている。

 また、PFNとAI(人工知能)技術を共同研究するToyota Research Institute(TRI)最高経営責任者のGill Pratt氏は「TRIとTRI-ADはPFNのPyTorchへの移行を歓迎する。TRIとTRI-ADはPyTorchも使用してきたため、PFNの今回のPyTorch採用により、PFNの持つ深層学習技術をわれわれが円滑かつ速やかに応用できるようになると信じている」とコメントしている。

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