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» 2019年12月20日 10時00分 公開

Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYOレポート:メーカーとユーザーをつなげるメンテナンス、デジタル化で設備価値を最大化

日立製作所のプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」のメンテナンスコーナーでは、「メーカーとユーザーをつなげるメンテナンス」をテーマにさまざまな展示を行った。昭和電工やニチレイロジグループ本社との共同実証に関連した顧客事例が来場者の注目を集めた。

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 日立製作所は2019年10月17〜18日、東京国際フォーラムにおいてプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」を開催した。同イベントでは多数の講演が行われた他、展示会場では進化を続ける社会イノベーション事業の最新成果や今後の展望などが7つのカテゴリーに分けて披露された。

 製造・流通業との関わりが深いインダストリーカテゴリーは、「ロジスティクス&リテール」「マニュファクチャリング」「ロボティクス」「メンテナンス」の4つのコーナーを展開。これらのうちメンテナンスコーナーでは、「メーカーとユーザーをつなげるメンテナンス」をテーマに、デジタル化による設備価値の最大化を図るべく、設備ユーザー向けには稼働率、生産性、品質などの利用価値の最大化を、メーカー向けには自社製品やサービスの提供価値最大化をコンセプトとして、さまざまなソリューションをアフターサービスの成熟度ごとに対応した「現場からの情報取得」「ライフサイクル情報管理」「データを活用した稼働率向上」「データを活用した新事業創出」という4つのサブグループに分けて紹介した。

「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」展示会場のメンテナンスコーナー 「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」展示会場のメンテナンスコーナー

進化する予兆診断「ARTiMo」でプラントの計画外停止を回避

 メンテンナスコーナーの展示で最も注目を集めていたのは、やはり顧客との事例紹介になるだろう。「データを活用した稼働率向上」で披露された石油化学プラント向け予兆診断サービス「ARTiMo」と「IoTを活用した冷凍設備の故障予兆診断」の2つである。

 ARTiMoは、日立の「Lumada」のAI技術を活用した予兆診断サービスで、プラント全体の生産安定と保守最適化をサポートする。石油精製や石油化学といった大規模プラントは、常に安全で安定的に運転を継続させることが求められている。このようなプラントの運転監視は、熟練オペレーターが、監視制御システムからの情報や現場巡回による目視確認を行い、個々の機器や設備の運転状態を把握するのが一般的だ。

「ARTiMo」の概要 「ARTiMo」の概要

 しかし、プラントを構成する個々の機器や設備が正常に動いていても、流量や圧力、温度などの複合的な要因が重なることでプラントが停止してしまうため、プラントの運転監視は熟練オペレーターの経験とノウハウに基づいた判断に依存している。一方で、労働人口の減少により熟練オペレーターの確保は年々難しくなっていることから、人的作業の負担を軽減するために運用・保守の効率化を図る必要があり、デジタル技術を活用してこの課題を解決することが求められていた。

 ARTiMoの特徴は予兆診断の精度を進化させるところにある。「一般的な予兆診断技術では、従来と異なるデータが出た時に異常発生と判断してしまう。しかしARTiMoでは、そのデータの内容を人がチェックすることで、プラントの運転継続に影響があるのかないのかを教え込みながら使用する」(日立の説明員)。まさに、長期間稼働するプラントに適したサービスといえよう。

 具体的には、LumadaのAI技術の一つであるART(適応共鳴理論)を用いた解析エンジンを実装しており、過去の正常なプラントの機器・設備の運転データ(温度や圧力、水位、流量など)を事前学習させることで、予兆診断の基準となるデータの相関関係を分類し、正常データのカテゴリーを自動生成する。その上で、実際のプラント運転時に取得した新規データを自動分類し、正常カテゴリーと比較することにより、運転状態が正常かどうかの診断を行う。新たなデータのカテゴリーが発生した場合には、オペレーターにアラートを発信して判断を促す。オペレーターは、プラントの運転状況や正常カテゴリーと異なる要因(温度や圧力の高低など)を基に正常か異常かを判断し、学習させることで、次回以降の診断精度を高められるというわけだ。

「ARTiMo」における異常検知方法 「ARTiMo」における異常検知方法

 ARTiMoでは、得られたデータを基に特定した異常発生箇所を、プラントを構成する機器・設備ごとに監視画面上で表示できるだけでなく、その異常状態のプラント内における他の機器・設備への波及状況も見える化することで、運転状態の迅速な回復を支援する。これらの機能により、計画外停止を回避し、生産ロスの低減に貢献する。また、同サービスの導入により、運転監視を行うオペレーターの負担軽減だけでなく、プラント経年変化の状況を可視化し、故障発生率の低下による運用と保守の効率化を実現する。

 なお、ARTiMoは、日立が昭和電工と共同で、同社の大分コンビナート内のエチレンプラントで行ってきた実証を通じて開発・実用化した。2018年10月からは、同プラントにおいて実業務での運用を開始している。日立は現在、ARTiMoを、Lumadaを活用したソリューションとして国内外に広く提供しており、最近では他の化学メーカーなどをはじめ引き合いや問い合わせ件数も増えてきている。

冷凍設備の運用・メンテナンスコスト低減に貢献

 一方、食品分野のコールドチェーンサービス大手のニチレイロジグループと共同実証を行ってきた「IoTを活用した冷凍設備の故障予兆診断」においては、設備コンディションに応じた保全業務の最適化、運転効率化を支援し、熟練技術者不足や環境負荷低減などの課題を解決するソリューションだ。

 冷凍食品や生鮮食品を保管する冷凍倉庫では、保管品の品質を維持するために冷凍設備の安定稼働が不可欠だが、現状は熟練技術者が巡回し、倉庫内環境や設備の計器などを目視で確認しながら冷凍設備の運転管理と設定操作を行っている。また、設備点検やオーバーホールは定期的に実施するのが一般的だ。そのため、IoTを用いることで熟練技術者のノウハウの伝承や設備の突発障害回避、消費エネルギーやメンテナンスコストの低減といった課題の解決への取り組みが進められている。

 こうした中、日立ではLumadaのソリューションである統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia(エミリア)」をベースに、冷凍設備の各種センサーから収集・分析(OTセンシング技術)したビッグデータをクラウド環境に蓄積する仕組みを構築。蓄積データを基に、ビッグデータ解析技術、音解析技術、さらに予兆診断技術を組み合わせることで、高精度で早期に故障の予兆を検出するシステムを開発した。エネルギー消費の見える化と運用改善分析も行えるため、冷凍設備の高効率運転支援を可能とし、CO2削減による環境負荷低減にも貢献する。

「IoTを活用した冷凍設備の故障予兆診断」の概要 「IoTを活用した冷凍設備の故障予兆診断」の概要

 さらに、日常の目視点検や事後・定期メンテナンスではなく、故障予兆に基づいた適正なタイミングでの予兆保全が可能となるため、メンテナンスも効率化でき、運用やメンテナンスの両業務で、熟練技術者不足の課題解決に貢献する。また「次のフェーズになるが、取得したデータを基に設備の運転ロジックをクラウド環境で作成し、インテリジェントコントロールサービスとして最適な自動制御を行えるようにするなど、さらなる進化も検討している」(日立の説明員)という。

 なお、同ソリューションは、シミュレーション環境で従来に比べて冷凍設備の運用・メンテナンスに関わるコストを約25%低減できる見通しが得られたため、2018年9月からニチレイロジグループの船橋物流センター、品川物流センターにシステムを導入して共同実証を実施しており、効果を検証中だ。ニチレイは、共同実証で得た成果を基に、2020年度から国内拠点の114カ所、約870の冷凍設備に同システムの導入を広げていく計画。また、日立も「保全の効率化と運用の効率化の両面で貢献できるサービス」として、国内の低温物流事業者やコールドチェーンの維持・運営・管理など向けの外販を検討している。

過去の故障・修理履歴から修理ノウハウを分析モデル化

 「データを活用した稼働率向上」では、過去の故障・修理履歴から修理ノウハウを分析モデル化し、最適な修理箇所提案で一次解決率、完治率向上に貢献する「修理リコメンデーションサービス」を披露した。

 設備ユーザーは、「機器や設備のダウンタイムを低減し、稼働率の向上を図りたい」「保守の技能伝承を容易にし、業務効率を高めたい」など多くの課題を抱えている。修理リコメンデーションサービスは、これらの課題に対して、ユーザーの所有する対象機器の故障・修理履歴データを提供するだけで、日立の保守に関する知見を活用した分析・IT、AI技術(機械学習)および複数のアルゴリズムを組み合わせた独自の分析モデルにより、最適な修理箇所を自動提案し、一次解決率や完治率を向上できる。

「修理リコメンデーションサービス」の概要 「修理リコメンデーションサービス」の概要

 また、修理ノウハウのモデル化により技能継承に貢献し、目標KPI(重要業績評価指標)を明確化することにより効果の定量的な検証も行える。適用業務は、機器・設備のメーカーやユーザー、メンテナンサーなどとなる。サービス利用までの流れとしては、まず、データ調査や初期分析などの「立ち上げ」で10日間(営業日)が目安となる。次に、約3〜6カ月かけてPoC(概念実証)で実用性検証やKPI影響評価を行い、顧客環境の構築を経てサービス利用の開始となる。現在は、PoCを一部ユーザーと実施しており、導入に向けた検討を進めているところだ。

協創により保険の新商品を開発

 「データを活用した新事業創出」で展示していたのが「故障確率予測保険システムRisk Simulator for Insurance」である。日立が、保険会社との協創により機器のリスクの見える化を実現し、新しい保険商品の開発に取り組んでいる成果であり、今回は、そのリスクの見える化を行うアプリケーションを、製造業向けに提案した。

 同システムはIoTデータで機器にかかる負荷を定量化しリスクを可視化する。顧客からの「機器の寿命を把握した上で、適切な保全を実施したい」「機器の保全状況を評価する新しい保険でリスクマネジメントしたい」などの要望に対して、故障と関連の強いデータを抽出し、故障要因の究明や部品の延命を支援する。

「故障確率予測保険システムRisk Simulator for Insurance」の概要 「故障確率予測保険システムRisk Simulator for Insurance」の概要。保険会社との協創事例となる

 また、IoTデータを利用し、現在までの故障発生確率の推移を見える化する他、将来の故障確率の推移をシミュレーションし、適切な保全計画をサポート。さらに、寿命診断技術導入前後のコスト比較で寿命診断の見える化を実現する。風車、モーター、ロボットアームなど設備の機器・リスクマネジメント業務などへの採用が期待される。

無線異音センサーで設備点検を自動化

 「現場からの情報取得」では、設備の状態や予兆を簡単に把握できる「点検自動化サービス」を披露した。無線センサーを置くだけで、設備の異音を自動で検知し、点検作業を効率化できることが大きな特徴。モーターなどの回転体を用いる設備を所有する顧客の設備点検業務の負担軽減をサポートする。

 異音点検が熟練技術者の経験に依存し、また、その人材の確保にも苦慮することに加え、急な故障により設備が停止し、生産活動や業務へ甚大な被害が及ぶケースも予想される。同サービスは、工場やプラントの設備に後付けした無線異音センサーから得たデータを収集する。その異音データを数値化して異常度として見える化することで、点検品質を均一にすることができる。また、故障の予兆となる異常度の上昇を捉えれば事前対策としても有効利用できる。無線異音センサーは電池駆動かつ防水で、屋外にも設置可能だ。今回は参考展示としての出展であり、2020年度の製品化を目指している。

無線異音センサーを用いた「点検自動化サービス」のデモ 無線異音センサーを用いた「点検自動化サービス」のデモ。回転中のモーターにクリップを押し当てることで発生する異音が自動で検知されている

 なお、日立では、カメラでアナログメーターを自動で読み取り、そのデータを収集、見える化する「メーター自動読み取りサービス」も開始しており、巡回点検を大幅に効率化し、設備状態の連続的な監視を実現することに貢献している。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年2月10日