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» 2019年12月19日 06時00分 公開

車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2019:学生フォーミュラの「デザイン審査」で何が問われるか、知っていますか (3/4)

[関伸一/関ものづくり研究所,MONOist]

モチベーション維持の難しさ

K 京都工芸繊維大学は今回エンデュランスでリタイア、順位が相当落ちます。そこでモチベーションが下がらなければいいなと思うんですが、こればかりはわれわれにはどうしようもない。

S 私は芝浦工業大学出身なんですが、一時チームは廃部寸前まで行きました。しかしこのところ部員も増えてぐっと順位を上げてきた。一昨年(2017年)にサブリーダーがこう語ってくれたんです。「明るくやればいいんです。そうすれば自ずとチーム力は上がります」って。私の仕事に対する考え方のベースである「明るく楽しい現場からしか良い製品・サービスは生まれない!」と同じことを言ってくれてとてもうれしかった。でも今回リタイアしてしまったので少し心配です。

K そうなんです。学生さんにチームの雰囲気を変える才覚のある人は少ない。しかも主要メンバーが卒業していってしまうのですから。そこはFA(技術顧問)の先生の出番ではないでしょうか。あと、40〜50位くらいで何年もとどまっているチームのモチベーションキープは本当に難しい。「結局私たちの実力はここまでか」と感じるのか、もう出場しなくなってしまった大学もあるのが現実です。

S 私、鳥取大学のスポンサーをしているのですが、支援を始めてから2年は走行すらできなかった。しかし昨年(2018年)にようやく動的審査に進み、今年(2019年)は全審査をクリア。総合順位は40位だったものの、ピットはとても元気でした。

K そうやって進歩が続いているうちはいいんです。初めはクルマが作れるだけで楽しい。しかし当然それだけでは満足がいかずに上位入賞を狙い始める。でも、幾つもの壁を越えなければ上位入賞には行きつかないのです。しかもメンバーが入れ替わっていくわけですよ。モチベーションの維持は本当に難しい。

アジア諸国のレベルは

S 先ほど同済大学の話も出ましたが、中国も含むアジア諸国のレベルは上がっているのでしょうか?

K 設計ツールは日本だろうが中国だろうが同じです。しかも中国の大学は資金が潤沢にあるのでCAD、CAMで素晴らしい精度の部品を使ってくる。日本の大学ではなかなかそうはいかないので、設計は3Dだけど、汎用のフライス盤などでモノづくりをしている場合が多いです。ですからマシンの出来としてはアジア諸国の方が良い部分もあります。日本でも京都大学のように強力なスポンサー企業に加工をお願いしているチームもあります。それを捉えて、時に「プロが加工している、自分たちで作っていないのでは?」という声もあるようですが、設計プロセスは全部学生がやっていることは認めてあげて欲しいです。

S 京都大学のスポイラーのDMG MORIのロゴなんて格好良いですものね! 金銭的な支援だけでなく、加工そのものや、加工法のアドバイスも強力な支援になります。京都には素晴らしいものづくり企業が多いですし、浜松も負けてられないな。

K 日本大学はリアの足回りのアップライトでトポロジー解析をやってきました。そして金属3Dプリンタで造形しているはずです。芝浦工業大学も一部チタンを使っています。かなり費用はかかったと思いますが、そんな一点豪華主義も楽しいですよね。

S 私、静岡大学で客員教授をしていまして、生徒は社会人学生か留学生なんです。いろいろな議論の中で「やはり日本には生産技術では勝てない、これからは設計開発に力を入れるべきだ」とベトナムの留学生が話してくれたんです。私としては「やばい、気付かれちゃったか」と危機感を持っています。モノづくりの利益の根源はやはり「何を作るか」の製品企画・設計・開発なので、日本もその部分をしっかり意識していかなければなりません。

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