実装ラインの段取り替え計画立案が数秒で完了、NECがアニーリングマシンで実現製造ITニュース(1/2 ページ)

NECはが量子コンピューティング事業に本格参入する。2020年1月に「量子コンピューティング推進室」を新設し、同年4〜6月期からベクトル型スーパーコンピュータを用いた「シミュレーテッド・アニーリングマシン」の共創サービスを提供する。NEDOプロジェクトで開発を進めている量子コンピュータは2023年の実用化を目指すという。

» 2019年12月23日 07時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 NECは2019年12月20日、東京都内で会見を開き、量子コンピューティング事業に本格参入すると発表した。2020年1月に、量子コンピューティングに関する顧客との共同実証を通じた用途開発や技術開発を推進し、人材育成を行う「量子コンピューティング推進室」を新設し、同年4〜6月期から、同社のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を用いた「シミュレーテッド・アニーリング(SA)マシン」による顧客との共創を前提としたサービス提供を始める。一方で、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトの下で開発を進めている量子コンピュータについては、2023年の実用化を目指すという。

NECの西原基夫氏 NECの西原基夫氏

 また、2019年12月10日に発表された量子コンピューティングベンダーのD-Wave Systemsとの協業についても、ユーザーニーズの把握、サービス提供の加速、ソフトウェア/アプリケーションの開発加速を中心に積極的に進めていく。

 NEC 取締役執行役員常務 兼 CTOの西原基夫氏は「“量子”という新しい世界では、ハードウェア、システム/ソフトウェア、アプリケーション、それぞれの分野でパートナーとしっかり協力していく必要がある。その上で、早期にサービス提供が可能なSAマシンで顧客との共創サービスを始めつつ、リアルタイム性が求められる用途で必要になる量子コンピュータの開発も進めて行きたい」と語る。

パートナーとの協業で量子コンピューティング事業を進める各パートナーとの協業体制 NECはパートナーとの協業で量子コンピューティング事業を進めていく(左)。各パートナーとの協業体制(右)(クリックで拡大) 出典:NEC

膨大な組み合わせの中から最適解を瞬時に求められる

 量子コンピューティングは、巡回セールスマン問題やナップサック問題などに代表される組み合わせ最適化問題を効率よく解くことができるコンピューティング技術だ。製造業でも、工場生産計画や人員シフト計画などで膨大な組み合わせの中から最適解を求められることがあるが、量子コンピューティングを活用すればその計算を瞬時に終わらせることができる。

組み合わせ最適化問題量子コンピューティング技術が最適 組み合わせ最適化問題(左)の計算に最適なのが量子コンピューティング技術だ(右)(クリックで拡大) 出典:NEC

 NECは量子コンピューティング技術の開発に長年取り組んでおり、1999年には固体素子(超電導)量子ビットの動作を世界で初めて実証するなどさまざまな研究成果を積み重ねてきた。

NECの量子コンピューティング技術開発の歴史 NECの量子コンピューティング技術開発の歴史(クリックで拡大) 出典:NEC

 現在は、2014年に発表した量子ビットの高精度、拘束、非破壊な単一試行読み出しを可能にする超電導パラメトロン回路をベースに、NEDOのプロジェクト「高効率・高速処理を可能とするAI チップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」の下、革新的な量子コンピュータの開発を進めている。「従来よりも2〜3桁長く量子状態を保持できるとともに、変動要素が多数絡む実問題への適用に必要なスケール化が容易だ」(西原氏)という。基本量子セルとなる4量子ビットの動作検証などが順調に進んでおり、先述した通り2023年の実用化が期待されている。

NEDOプロジェクトで開発を進めている量子コンピュータの概要動作検証中の4量子ビットのモックアップ NEDOプロジェクトで開発を進めている量子コンピュータの概要(左)。会見の会場内には、動作検証中の4量子ビットのモックアップも展示した(右)(クリックで拡大) 出典:NEC
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