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» 2019年12月24日 10時00分 公開

ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(3):ゴムやフィルム、電子部品の加工に最適な「抜き型」とその加工技術 (1/3)

設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第3回は、非金属の周辺部品の加工に欠かせない「抜き型」について取り上げる。

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]

 皆さんこんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。

 前回は、金属を切断して、折り曲げや絞りを加えて成形する「精密板金」と「プレス加工」について触れました。最終的に作る形状が同じであっても、条件によっては、加工方法を使い分ける必要があるということを学びました。

 精密板金加工は、少量多品種の部品や試作品の製作に適していますが、肝心の作業は人の手によるため、量産には不向きであるということがお分かりいただけたかと思います。一方、量産に向くプレス加工については、用いる金型には「単発型」と「順送型」の2種類があり、プレス方式も「トランスファー」や「タンデム」といった異なる生産方式が存在するため、部品形状や数量によって、これらを使い分けなければなりません。

 今回は、プレス金型とは異なる立ち位置で工業製品の生産を陰で支える「抜き型」を取り上げます。抜き型は、機械部品の加工手段としてはポピュラーではないかもしれませんが、非金属の周辺部品の加工では欠かせないもので、筆者はかなりお世話になっています。

抜き型の代表格「トムソン型」とは

 まず、図1をご覧ください。これは「トムソン型」あるいは「ビク型」と呼ばれる代表的な抜き型の1つです。

図1 トムソン型/ビク型 図1 トムソン型(ビク型)のサンプル[クリックで拡大]

 この名称の違いですが、筆者がプラスチック製品の製造販売の仕事に就いていた頃、トムソン型は「トムソンプレス機」で加工するもの、ビク型は「ビクトリア打抜機」で加工するもの、という程度に区別していました。トムソンプレス機はプレス機の仲間ですが、ビクトリア打抜機はプレス機というよりも、活版印刷機のような機械です。ただし、どちらの機械を使ってもやることは同じなので、皆さんの現場でもいずれかの名称で呼ばれているのではないでしょうか。なお、本連載では「トムソン型」で統一して解説を進めます。

 トムソン型は、合板のベースに加工したい形状通りにレーザーで切り込みを入れ、そこに「トムソン刃」を埋め込んだシンプルな構造となります。緑色のスポンジは「跳ね出し」と呼ばれるもので、密度が高く、ゴムのような性質があります。その弾性によって刃が通った材料を跳ね返して抜き切るのです。各辺の近くにある4つのオレンジ色のスポンジは材料を支えるためのものです。

 跳ね出しのスポンジを外した状態がこちらです。大小の角丸四角形の部分にトムソン刃が埋められています(図2)。少し拡大すると、よりはっきりと刃の形状が分かりますが、この型の場合、刃先角42度の両刃を用いています。これがトムソン刃のスタンダートです(図3)。

図2 跳ね出しのスポンジを外した状態 図2 跳ね出しのスポンジを外した状態[クリックで拡大]
図3 トムソン刃が埋められているのが分かる 図3 トムソン刃が埋められているのが分かる[クリックで拡大]

 トムソン刃には厚さ0.45〜1.5mm、高さ12.0〜40.0mmまでのバリエーションがあり、片刃、両刃、2段刃があります。さらに、刃先の形状と刃先角度のバリエーションも豊富で、離型紙を抜かないハーフカット(シール刃)、材料は切らずに筋のみを入れる筋刃など、用途に応じてさまざまなタイプが用意されています。

 いずれの刃も元はコイル状になっていて、これを引き出しながら専用の曲げ機で形を作り、職人さんが木づちを使って合板のベースにはめ込んでいきます。さらに角部の刃の合わせや細かいピッチ調整など、人の手による最終調整を行って、1つの抜き型が完成します。

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