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» 2020年01月06日 10時00分 公開

身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(3):ディスクとトレーの干渉を防ぐ、光学ドライブの「溝カム」の仕組み (1/2)

身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は、前回の続きとして、光学ドライブの「溝カム」の仕組みを取り上げ、その用途や動き方の理解を深める。

[久保田昌希/プロノハーツ,MONOist]

 皆さん、こんにちは! プロノハーツの久保田です。明けましておめでとうございます。あっという間に年が明けてしまいました。おかげさまで、「身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門」も第3回を迎えることができました。この連載企画が始まってからというもの、何か分解できるものはないかと、会社や自宅にあるものを物色する日々が続いてます。

 さて、今回は前回やり残した“光学ドライブの溝カムの機構”について解説しながら、その用途や動き方を見ていきたいと思います。

 そもそも「カム」とは、運動の方向を変える役割をもった、任意の形状の機械要素です。一口にカムといってもその形状は実に多種多様で、単純なものから複雑な運動まで、さまざまな動きを実現してくれます。

 カムと聞いてまず思い浮かぶのは、図1のような卵型の「板カム」ではないでしょうか。カムが回転することで下の部品を上下運動させています。自動車のエンジンに使われているカムシャフトなどが代表例です。その他にも、円筒に溝が切られた「円筒カム」などは、一眼レフカメラのレンズシステムにも使われており、用途や形状はさまざまです。

「カム」の代表例 図1 「カム」の代表例。(左)板カム/(右)円筒カム[クリックで拡大]

光学ドライブにおける「溝カム」の役割

 では早速、前回分解した光学ドライブ(図2)を使って、この製品における「溝カム」の役割を見ていきましょう。

前回紹介した光学ドライブ 図2 前回紹介した光学ドライブ[クリックで拡大]

 前回も少し触れましたが、あらためて溝カムがどのような役割で使われているのかを説明します。この製品では、平面的な2つの溝カムを使って、タイミングよくディスクの固定と開放を行っています。言葉では分かりにくいので、図を用いながら1つずつ確認していきましょう。

 まずは、図3に示した光学ドライブのディスク読み込みユニットを持ち上げるための溝カム付きラック部品です。ディスクを置くトレーを外すと確認できます。

溝カム付きラック部品 図3a 溝カム付きラック部品[クリックで拡大]
溝カム付きラック部品 図3a 溝カム付きラック部品(トレーを外した状態)[クリックで拡大]

 少し分かりづらいので、簡易的な3Dモデルを使って説明します。

 図4のようなイメージで、溝カムとラックが切られた板部品を左右に動かし、斜面の部分をピンが通ることで、ディスク読み込みユニットを上下に動かしています。溝カム付きラック部品は前回説明した通り、「ラック&ピニオン機構」が使われており、トレーを開閉するためのモーターの動力を用いて左右に動かします。要するに、溝カムを利用して左右に動く力を、上下に動く力に変えているイメージです。

光学ドライブの溝カムの機構を3Dモデルで表現 図4 光学ドライブの溝カムの機構を3Dモデルで表現[クリックで拡大]

 ここで問題になるのが、トレーの開閉と溝カム付きラックの動きです。それぞれのピニオンギアは同じモーターで動いているので、このままだとおのおの独立した動きができません。また、溝カム付きラックが動くと同時にトレーが開いてしまうと、ディスクが完全に開放される前にトレーが開き始めしまうため、ディスクが引っ掛かって開きません。つまり、ディスク読み込みユニットはトレーが開く直前で下がり、トレーが完全に納まってから持ち上がってディスクを固定しなければなりません。

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