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自然対流による冷却を考える初心者のための流体解析入門(10)(2/2 ページ)

» 2020年01月14日 10時00分 公開
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手計算と流体解析ソフトの結果の比較

 では、これらの結果を用いて実際に温度を計算し、同じモデル解析ソフトを使って結果を求めてみようと思います。

 仮に、表面温度が250℃の物体を想定してみようと思います。その際の対流熱伝達の熱伝達率は約19.5W/m2K、輻射熱伝達の熱伝達率は約16.5W/m2K程度と読み取ると、その合計は36W/m2Kとなります。この熱伝達率を使って、非定常の伝熱計算をしてみようと思います。

 ちなみに、今回は結論だけを示す形になりますが、温度が一様なある物体が部屋の中に置かれている場合の表面温度の変化を、非定常の伝熱計算で求める際は、以下の式で表現できます。

式

 Tが周囲の温度、T0が物体表面の初期温度、αが熱伝達率、Sが表面積、cがその物体の比熱、ρがその物体の質量密度、Vが体積、tが経過時間になります。

 今回扱う物体はスチール合金で、大きさは一辺が10mmの立方体とします。この材料の比熱cは、465J/(kg・K)、また質量密度ρは、7850kg/m3となるので、これらの数値を代入すると以下のようになります。

式

 あるいは、

式

です。この式を使って、時間0から10分後(600秒後)のこの物体の表面温度の変化をプロットすると以下のようになります。

図3

 同じモデルに対して、CFDソフトで解析した結果を示します。

図4

 少々ずれが生じているのは確かですが、ほぼ傾向としては一致していることが分かると思います。また、手計算では表現しづらい時系列でのモデルの温度変化や、空気の流れを以下の動画で示しています。

温度の履歴
空気の流れ

 なお、流体の温度差による浮力を考慮していますが、流体の設定としては非圧縮性流体を用いていますので、本来、密度変化は考えられません。しかし、ブシネスク近似を用いることで、非圧縮性流体においても、密度変化によって生じる浮力を与えることができます。この近似による浮力は、以下の式で表現されます。

式

 ρ0は初期の基準温度での密度、gは重力加速度、βが体膨張率、TとT0はそれぞれその時点の温度と基準温度になります。



 次回は、強制対流について触れてみたいと思います。お楽しみに! (次回に続く

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。


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