苦節8年、ラベル印刷市場で勝負をかけるOKIデータのカラーLEDラベルプリンタPro1050/Pro1040開発秘話(2/3 ページ)

» 2020年01月20日 10時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

転写方式を急きょ変更、フィルム系媒体の印刷品質の追求

 こうした機構面での技術課題に取り組むとともに、印刷品質も追求。当初、実績のあるビジネスプリンタにならい、感光体ドラムと転写ベルトの間に紙を通して、ダイレクトにトナーを紙に転写する直接転写方式で開発を進めていたが、紙系媒体では問題なかった色の再現性が、ラベル業界で必須のフィルム系媒体だと、媒体上に順番に像を重ねていく直接転写方式では、色の再現性が低くなってしまうという課題に直面した。

 そこで、紙にトナーを転写する前に、転写ベルトに全ての像を重ねてから一気に紙に転写する中間転写方式に切り替えることを決断し、大幅な設計変更に踏み切った。「実は、ちょうどこの時期、直接転写から中間転写にシフトしたビジネスプリンタが上市されたタイミングで、中間転写ならもしかするとフィルム系媒体でもいけるのではないかと検証したところ、問題ないことが分かった。そこで、2次試作機まで直接転写でやってきたが、以降、中間転写で開発を進めることになった」と村上氏は振り返る。

OKIデータのカラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」の動作デモの様子

 さらに、ここで肝になってくるのが、像を正しく中間転写ベルトに落とし込み、媒体に精度良く転写する技術と、媒体自体の搬送制御だ。「とにかく送り込まれてきた連続紙にタイミングよく、正しい位置に転写させることが求められる。カットされた普通紙とは異なり、連続した媒体となるので搬送制御も関わってきてタイミングを合わせることに苦労した。ここの位置精度をきちんと出すために、当社製品として初めてセンサーを搭載した。その結果、顧客要求として挙がっていた誤差±0.5mmの許容範囲を何とかクリアできた」と福島氏は述べる。

センサー(1)センサー(2) 媒体搬送時の位置精度をきちんと出すために搭載されたセンサー[クリックで拡大]

デザインの幅を広げるホワイト対応

 Pro1050/Pro1040の開発では、こうした大幅な設計変更を行うとともに、さらに付加価値としてホワイトの対応も決定(Pro1050のみ)。透明フィルムや色付き媒体に対して、白色で下地をプリントできるようになれば、デザイン性に富んだ高品位なラベル印刷が可能になるからだ。

 実は、ホワイトの対応もPro1050の競争優位性につながっている。一般的に、トナーを手掛けるメーカーにとってホワイトは非常に難しいとされているが、OKIデータでは過去、Tシャツ用転写市場向けにホワイトのトナーを開発したことがあり、それをベースに、ビジネスプリンタ市場でもホワイト対応を展開。この経験、開発ノウハウを基に、ラベルプリンタ向けの高品位なホワイトを開発することに成功し、厳しい目を持つ印刷業者からも高評価を得るまでになったという。

 「ビジネスプリンタの場合は、ホワイトを除いた4色対応の機種の方が売れていたが、ラベルプリンタはホワイトに対応したPro1050の方が人気を集めている。この価格帯で満足できるレベルのホワイトをプリントできる機種は他にないだろう。ラベル市場ではやはりホワイトが使えると、デザイン性が広がり、非常にウケがいい」(福島氏)

Pro1050/Pro1040によるラベルサンプル Pro1050/Pro1040によるラベルサンプル[クリックで拡大]

 こうしたさまざまなチャレンジ、そして途中発生した大きな設計変更を経たため、従来の製品開発では2回ほどの試作で済むところが、Pro1050/Pro1040の開発では6回も試作を行うことになり、完成まで約8年の歳月を要した。

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